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第八章 王妃
2 アカリ
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いつものように、王妃とレーデン侯爵は二人っきりで夜を過ごしていた。
朝になり、メイド達が朝食を隣接する部屋に用意し、顔を会わせることなく退室する。
イグナートは、レーデン侯爵から頼まれた件で、亡くなった王の側付きを呼び出した。
小柄で華奢な少年に見えるアカリは、その外見からは想像できないが、五十歳を超えていた。彼の一族は、小柄で、華奢な体型、幼い外見のまま年齢を重ねるという。その特殊な遺伝とその外見から迫害を受け、拐われて性奴隷として売られ、被害にあってきた。彼も幼い頃に拐われて売られた娼館で育った。
未成年が性に関わる仕事に就くことを禁じる法律が施行され、奴隷商の摘発、娼館指導時、彼は保護され、キース殿下と出会う。
性に関する犯罪は重刑化し、法制度の周知によって抑制され、性犯罪や一族に対する迫害は軽減されたものの、無くなったわけではない。
人材派遣や斡旋、紹介と名を変えた奴隷商、年齢を偽る娼婦、娼館、貧困や借金により取引される子ども達、置き去りにされた子どもを救済するはずの施設が裏で取引する組織と繋がり、里親は引き取った子らに労働を強いる。
レーデン侯爵の側使えのフレアもまた、救われなかった一人である。他と比べても、ごく普通に働いて給金をもらい、不足のない生活に見える。大手職業案内所から合法的に彼は紹介された。しかし、実際は裏で貴族相手に高額で高級奴隷を取引する奴隷商。フレアは侯爵に買われた、見た目も美しく、仕事もできて、柔順な性奴隷であった。
同じ一族であるアカリとフレアは同じ側使えということもあり、王宮で顔を合わせることも多く、顔見知りであった。
「アカリ、レーデン侯爵を知っているよな。」
「はい。彼の側付きは私と同じ一族の出で、友人です。」
「そうが。侯爵が君を欲しがっている。気が進まないようなら、理由をつけて断るが、どうだ?」
「友人の気持ちを考えると、私は……」
「そうだろうな。わかった、この件は断ろう。この前話した君の仕事だが……本当にいいのか?」
「給仕でも、文書運びでも、お望みなら、この身を……イグナート様、私をお使い下さい。私はグレイに沢山のものをいただき、感謝いたしております。最後までお仕えしたいのです。」
「グレイ付きだった、君にそんな辛い仕事をさせるのは…私は気が進まないが…」
「お願いいたします。イグナート様のもとで。」
深く頭を下げる
「わかった。アカリ、よろしく頼む。」
「意のままに。」
グレイの側付きであったアカリは片膝をついて胸に手を当てた。
朝になり、メイド達が朝食を隣接する部屋に用意し、顔を会わせることなく退室する。
イグナートは、レーデン侯爵から頼まれた件で、亡くなった王の側付きを呼び出した。
小柄で華奢な少年に見えるアカリは、その外見からは想像できないが、五十歳を超えていた。彼の一族は、小柄で、華奢な体型、幼い外見のまま年齢を重ねるという。その特殊な遺伝とその外見から迫害を受け、拐われて性奴隷として売られ、被害にあってきた。彼も幼い頃に拐われて売られた娼館で育った。
未成年が性に関わる仕事に就くことを禁じる法律が施行され、奴隷商の摘発、娼館指導時、彼は保護され、キース殿下と出会う。
性に関する犯罪は重刑化し、法制度の周知によって抑制され、性犯罪や一族に対する迫害は軽減されたものの、無くなったわけではない。
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「アカリ、レーデン侯爵を知っているよな。」
「はい。彼の側付きは私と同じ一族の出で、友人です。」
「そうが。侯爵が君を欲しがっている。気が進まないようなら、理由をつけて断るが、どうだ?」
「友人の気持ちを考えると、私は……」
「そうだろうな。わかった、この件は断ろう。この前話した君の仕事だが……本当にいいのか?」
「給仕でも、文書運びでも、お望みなら、この身を……イグナート様、私をお使い下さい。私はグレイに沢山のものをいただき、感謝いたしております。最後までお仕えしたいのです。」
「グレイ付きだった、君にそんな辛い仕事をさせるのは…私は気が進まないが…」
「お願いいたします。イグナート様のもとで。」
深く頭を下げる
「わかった。アカリ、よろしく頼む。」
「意のままに。」
グレイの側付きであったアカリは片膝をついて胸に手を当てた。
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