結婚ー彼女と再会するまでの男の長い話ー

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幕間 エミリア

エミリアの憂鬱 3

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  それはエミリアが七十二歳の時。
「エミリア様、アスターネスより知らせが届いております。」
「見せて。」
それはアスターネスの宰相からの知らせ。
「今度の食フェス、国際A級が来るわよ。」
「国際…A級…ですか?」
「そう。聞いたことない?」
「申し訳ありません。不勉強でした。」
「仕方ないわ。タクーンには今まで一人もいなかったから。でも、彼はアスターネス生まれですって。」
「どんな方でしょうね。」
「楽しみね。」

  マックはコノセルギアの食フェスに招待され、宿泊するホテルに家族と共に案内された。
  数日滞在するので、いい機会だと、家族旅行もしちゃおう、ということになった。家族旅行で泊まるには豪華すぎるホテルは、元々最上階すべて貸し切りで宿泊用に用意されていた。アスターネスからマックに複数付き添いが来ることを想定していたので、家族が数人増えたところで、問題ないとのこと。
  最近出来た大型複合娯楽施設に子ども達を連れていこう。キュールも子ども達も喜んでくれるといいな、とマックは思った。
「こんなに豪華なホテル……私たちまでいいのかな…」
キュールはマーシャと手を繋ぎ、あまりの豪華さに、足が止まっていた。
「さ、ここで止まっていては、他のお客さんの迷惑。入ろうキュール。」
マックはアルを抱っこして、キュールに大丈夫と先に進むよう促した。
  肩書きのつくマックは今までにも、厚くもてなされた経験がある。しかし、たかが料理人にここまで歓待するものなのか?
  案内人は部屋の前まで先導し、鍵をテーブルの上に置いた。
「マック様、明日朝、お迎えに上がります。ホテルの案内図と、近くの地図をここに置いています。他にご用があれば、いつでも、お呼びください。」
「はい。ありがとうございます。」
  翌日は地元の食材を使った素人料理コンテストの審査員。それが終わったら。インタビューが数件。その後は貴族の誰だったかな……?と親睦の会。忙しい一日になりそうだ。移動で疲れたマックと家族はあっという間に眠りについた。

  翌日、予定をこなし、最後の予定の、親睦の会場に移動する途中に案内人がマックに言った。
「マック様、申し訳ありません。安全上、隠しておりましたが、本日は皇太后様にお会いしていただきます。」
「ええ!?皇太后様?」
「何か預かり物をお持ちじゃございませんか?」
「あ、ああ、あ!」
そういえば、イグナートから受け取った物が あったっけ。
「はい。」
「マックさま、ご案内いたします。」
しばらく、車で街中を走り、ホテルに戻った。
「え?戻っちゃったよ。」
「申し訳ありません。」
「じゃあ、ここに?」
「はい。重ねて謝罪しなくてはなりません。実は、先に御家族様はお会いに……」
「ええ!キュール達が?」
「はい。お部屋に残られていたので、皇太后様が……」
「大丈夫かなぁ……」

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