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幕間 父と子
父と子 1
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「この、バカ息子!もう死んだと諦めていたわよ!生きていたなら、早く連絡しなさいよ、もう!」
母、ミリナは叱りつけ………
「よかった。よかった。生きてた……」
父、フルは号泣した。
長く行方不明だったマックが祖父に連絡したら、すぐにシーラ星から彼の両親と弟が会いに来た。
「ごめんよ、本当にごめん。色々あって。連絡しなきゃって、思っていた…はじめの頃はね。本当に。」
どうしてもっと早く連絡しなかったの!と言われても、マックは困ってしまう。
………知り合いの子と一緒にあちこち旅して、隣の星系にまで…ちょっと連絡出来ないくらい遠くに行ってたから………と言い訳しても、納得しないだろうね。
……タクーンの人はさ、長生きだからねとか、のんびりしているよね、とか、……時間をあんまり気にしなかったから……とか、ぐずぐず言う。
「でも、まあ、二十年はちょっと長かったか…な…?あー、ごめん、ごめん!」
「マック、これから、どうするつもりなの?ここに住むの?」
「うん。結婚するまでここで仕事を探して…」
「お母様、私が成人するまでは、両親もここに住むことは了承しています。それからの事は、その時相談して決めるつもりです。」
「キュールさん。このバカをよろしくね。」
「母さん、バカ、バカってあまり言わないでほしいなぁ……」
「はい。しっかりしっぽ握っておきます。」
「キュール、しっぽ……ないから俺。」
「私達、しっかり者の嫁は、そう言うのよ。」
星が変わると諺も変わる。
「しっぽが無いのを言い訳に、ふらふらさせません。」
「そうそう。」
どこでも女性は強いのだ。
「私もしっかり掴まれてますからなぁ。ははは。」
キュールの父が豪快に笑った。
「商売人の家庭は女が強いと繁盛するって、言われてるからな。良いこと。良いこと。」
「俺はキュールを愛しているから。しっぽないけど、ふらふらしないよ。」
「私もよ。マック。大好き。」
マックはチュッって、キュールにキスする。皆。見慣れているから、気にしないけれど、マックの父は視線が落ち着かず、あたふたしている。
「マックぅぅ~」
長く離れていたから、マックの父は免疫がないようです。
「キュール、マックとあなたが愛しあっているのは、私にもわかるわ。このバカは昔からなぜか、女も男も引寄せるから大変だと思うけれど、頑張ってね。」
「あ、母さんってば……引き寄せるって…」
「はい。寄って来る悪い虫から、私がマックを守らなきゃ!うん。」
「む…虫………って……」
キュールは先日の商会館で早速、ザールという虫がついたのを思い出していた。泣いても、叩いても、お願いしても、離れない虫はどうしたらいいのだろう……
「力では敵わないから、どう対策すればいいのかしら。」
「虫?……寄ってくる?…って?」
うん。父さんも、虫って表現はないと思うよね。
「あら、あなた、言ってなかったかしら、うちの息子は老若男女引寄せるお色気兵器みたいな体質だって。私が知っているだけでも、あれやこれや…ねえ……」
「お色気兵器……」
フルがミリナとマックを交互に何度も見ている間に話は進む。
「ま、まってよ、そんな、兵器って。なに?母さん、もう少し、言いようがあるでしょう…って、もしかしてあれ…も、ばれてた?」
「あー、先生ね、色々と裏工作してたみたいだけど、ばれてましたよ。母の情報網を知らないわね?」
「…………やだ、恥ずかしい………」
顔が真っ赤になっているマックは思わず、両手で顔を隠し、座り込んだ。
「………か…可愛い……」
そこにいた全員が同時につぶやいた。
三十過ぎたニメートルの長身のオッサンが可愛いって……何?……と我に返ったフルは思った。しかし、かわいい十二歳の時に留学のため送り出し、その後全く会っていない息子が成長した姿を想像しなかったわけではない。だが、実際目にすると……かわいらしさの残る少年が美しい青年になって帰ってくるとか……想像を越えていた。逞しい長男と次男、線の細い四男を見ているだけに、その目を引く容姿に…違いに驚いたのだ。
…………もう、これは腹をくくるしかないよな………
密かに決心をする父であった。
母、ミリナは叱りつけ………
「よかった。よかった。生きてた……」
父、フルは号泣した。
長く行方不明だったマックが祖父に連絡したら、すぐにシーラ星から彼の両親と弟が会いに来た。
「ごめんよ、本当にごめん。色々あって。連絡しなきゃって、思っていた…はじめの頃はね。本当に。」
どうしてもっと早く連絡しなかったの!と言われても、マックは困ってしまう。
………知り合いの子と一緒にあちこち旅して、隣の星系にまで…ちょっと連絡出来ないくらい遠くに行ってたから………と言い訳しても、納得しないだろうね。
……タクーンの人はさ、長生きだからねとか、のんびりしているよね、とか、……時間をあんまり気にしなかったから……とか、ぐずぐず言う。
「でも、まあ、二十年はちょっと長かったか…な…?あー、ごめん、ごめん!」
「マック、これから、どうするつもりなの?ここに住むの?」
「うん。結婚するまでここで仕事を探して…」
「お母様、私が成人するまでは、両親もここに住むことは了承しています。それからの事は、その時相談して決めるつもりです。」
「キュールさん。このバカをよろしくね。」
「母さん、バカ、バカってあまり言わないでほしいなぁ……」
「はい。しっかりしっぽ握っておきます。」
「キュール、しっぽ……ないから俺。」
「私達、しっかり者の嫁は、そう言うのよ。」
星が変わると諺も変わる。
「しっぽが無いのを言い訳に、ふらふらさせません。」
「そうそう。」
どこでも女性は強いのだ。
「私もしっかり掴まれてますからなぁ。ははは。」
キュールの父が豪快に笑った。
「商売人の家庭は女が強いと繁盛するって、言われてるからな。良いこと。良いこと。」
「俺はキュールを愛しているから。しっぽないけど、ふらふらしないよ。」
「私もよ。マック。大好き。」
マックはチュッって、キュールにキスする。皆。見慣れているから、気にしないけれど、マックの父は視線が落ち着かず、あたふたしている。
「マックぅぅ~」
長く離れていたから、マックの父は免疫がないようです。
「キュール、マックとあなたが愛しあっているのは、私にもわかるわ。このバカは昔からなぜか、女も男も引寄せるから大変だと思うけれど、頑張ってね。」
「あ、母さんってば……引き寄せるって…」
「はい。寄って来る悪い虫から、私がマックを守らなきゃ!うん。」
「む…虫………って……」
キュールは先日の商会館で早速、ザールという虫がついたのを思い出していた。泣いても、叩いても、お願いしても、離れない虫はどうしたらいいのだろう……
「力では敵わないから、どう対策すればいいのかしら。」
「虫?……寄ってくる?…って?」
うん。父さんも、虫って表現はないと思うよね。
「あら、あなた、言ってなかったかしら、うちの息子は老若男女引寄せるお色気兵器みたいな体質だって。私が知っているだけでも、あれやこれや…ねえ……」
「お色気兵器……」
フルがミリナとマックを交互に何度も見ている間に話は進む。
「ま、まってよ、そんな、兵器って。なに?母さん、もう少し、言いようがあるでしょう…って、もしかしてあれ…も、ばれてた?」
「あー、先生ね、色々と裏工作してたみたいだけど、ばれてましたよ。母の情報網を知らないわね?」
「…………やだ、恥ずかしい………」
顔が真っ赤になっているマックは思わず、両手で顔を隠し、座り込んだ。
「………か…可愛い……」
そこにいた全員が同時につぶやいた。
三十過ぎたニメートルの長身のオッサンが可愛いって……何?……と我に返ったフルは思った。しかし、かわいい十二歳の時に留学のため送り出し、その後全く会っていない息子が成長した姿を想像しなかったわけではない。だが、実際目にすると……かわいらしさの残る少年が美しい青年になって帰ってくるとか……想像を越えていた。逞しい長男と次男、線の細い四男を見ているだけに、その目を引く容姿に…違いに驚いたのだ。
…………もう、これは腹をくくるしかないよな………
密かに決心をする父であった。
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