結婚ー彼女と再会するまでの男の長い話ー

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イグナートの報告書

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  いや、待てよ、あの時マックはなんて言った?
両親の形見と言ったよな。

  マック・レディの言葉を思い出しながら、イグナートから受けとった彼に関する報告書をペラペラとめくっていた俺は、頭の中を整理しようと、分厚い文書の最初から文字を追った。

  最初の頃はハルバートの記述。
  俺が死んだ後、ファータの様子を綴った辺りは胸が痛い。

  当時、第二王女エミリア姫が隣国コノセルギアの第二王子に嫁ぐことになっていた。俺は、結婚式に出席するため、体調不良の王の代わりにエミリアと共に隣国に入る。そこで、あの爆発事件が起きる。
  革命の志を声高らかに謳い、街のあちこちで爆発を起こした彼らの標的の一つに、不運にも俺達は居合わせた……ということになっている。しかし、ハルバートは、同時期に軍内部のクーデターもあったことから、エミリア姫と俺を狙ったものだと推測している。アスターネスとの不和を狙ったものだろうが、エミリアが無事で婚姻も成ったため、思惑は外れたわけだ。ハルバートはエミリアに関しては直接関わっていない。王があらかじめ送っていたエミリアを守るための組織については、ここに記述はない。だが、その秘密の組織は、王が送った帰国の提案を断りコノセルギアに残る決断をした姫の…事件後の助けになったであろう事は間違いない。

  俺の遺体…いや実際はソニーなのだが…がアスターネスに帰国し、国葬され、ファータは体調を崩して、別荘に住まいを移す。王の監視のある中、ハルバートが見舞いに訪れる。
  一度だけの訪問。
  その後見守りは息子のイグナートが引き継いだ。ハルバートは政に専念し、次代グレイとなるアレクを助け宰相となる。

  ファータ・レディの妊娠判明後の報告書のハルバートの文字は力強いものであった。忠誠を誓った主が死んだ事で、奴も心を痛めていたのだろう。

  マックが生まれ、レディファータが亡くなるまで約四年の間、レディファータは息子の成長を見ることができたんだな。
  一緒に写真も入っていた。産まれてすぐの赤ん坊、眠る姿、ハイハイ姿、ファータと本を読む小さな息子…どうしたのかな?泣きじゃくる顔とあやす姉夫婦。マックと兄姉弟達。
  幸せそうだ……幸せなんだな。

  だが、レディ?つける名前をさぁ……もうちょっと考えようよ。俺の愛称マックもだけど 、姉の子として育てるのに、ファータ・レディのレディをつけるかぃ?マック・レディだなんて、勘の良い奴にはバレバレだぞ?誰にもばれなかったのか?

  ファータの死後、マック達は父フルの仕事先のシーラ星に引越す。イグナートも拠点を移して、彼の指揮のもと、シーラでの護衛が続けられる。幼年学校に妹のミユルまで転校させてやがる。たしか、一つ年上じゃなかったか?同級生として、転校させている。どんだけ仕事熱心なんだい?イグナートよ。


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