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第七章 軍事演習
5 最終日はパーティーへ
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「報告します。」
「積み荷は出発。証拠も残してあります。リークのタイミングは指示を待ちます。」
「よし。」
後は時を待つだけ。どう料理してやろうか。
「フォート将校、最終日のパーティーは御出席願います。」
副官に念を押されて頷いた。
ああいった、愛想笑いの時間の無駄なパーティーには出席したくない。演習期間中、その手のパーティーには、代理で副官を送り込んでいた。さすがに、最終日は出るべきだろうとフォート将校は思った。
「了解した。そうだな……同伴者が必要か。副官…いや、…マック・レディを呼べ。」
期間中、一度も顔を合わす事が無かった事に気がついた。
………まあ、兄のコネで遊びに来たようなものだ。呑気に観光でもしていたのだろう。気にすることもない………
「いいですよ、ご一緒します。」
マック・レディは嫌な顔一つせずに言う。どうやら、イベントやら、懇親会やら、一応彼なりに、働いてはいたようだ。
じきに、切り札として手の内に入ると思えば、少しは優しく対応もできる。
「そうか。苦手でな、香水臭い女とパーティーは。」
「私もですよ。」
クスリとマックが笑う。その顔を間近で見た。今まで、こんな近くで彼の顔を見ることはなかった。その年齢を感じさせない美貌に、フォート将校はゾクゾクした。昨夜、頭の中で彼をいたぶり、涙を流す姿を、イグナートの悔しがる顔を、想像したためか、体が熱く反応する。彼の腕をギリギリと捻りあげたい。そのすました顔を歪ませてやりたい。熱くたぎる欲望で征服してやりたい………いや……自分の欲求が信じられなく、首を振る。気を静めろ。フォート将校は自らを制した。
「フォート将校は宰相と同期だと伺ってます。主席を争った仲とか、お二人は優秀なのですね。」
「ふん。勝てた事など無いがな。」
「学校で主席争いなんて凄いですよ!私は、卒業も満足に出来なかったから、羨ましいです。今でも同期で競い合うなんて。」
耳障りの良い声に、心地いい会話、やんわりとした雰囲気が漂い、いつの間にか毒気を抜かれ、マックのペースに取り込まれている。
「それに…私の…幼なじみの親友は先に亡くなってしまって…長寿の種の辛いところですね。」
「アスターネスにいるとあまり感じないが、外へ出ると流れる時間が違うと感じるな。」
「そうそう、私の姉もサーアの人と結婚して、こちらにいるのです。パーティーにも来ますから、紹介しますよ。」
……軍の関係者の血縁なのか?まあ、気にすることはないだろう……
フォート将校は王に謁見する時に着る最上の軍服を着込み、マックを待つ。マックは軍人でも騎士でもないので、身体にピッタリした上質で裾の長いスーツにストール姿。胸にはグレイから戴いたという瞳と同じ色の宝石が入ったストール留めが光っていた。揃いのイヤーカフもつけている。見た目では、年齢を感じさせない。
「お待たせしました。さあ、行きましょう。」
迎賓館のホールには多くの華やかな正装の男女が歓談している。四ヶ国の交流を目的としているためか、無礼講ということになっているようで位の上下を特に気にせずに話せるようだ。
「フォート将校。今夜はおいでくださいましたか。」
たしか、サーアの役人だったな、とフォート将校は思った。
「はい。今夜で、サーアとお別れかと思うと残念ですが。」
「本当に、もっと滞在してほしいですよ。マックさんにも。」
ニッコリ笑って挨拶のキスをマックにすると、飲み物をすすめる。その自然な行動にフォート将校は目を丸くする。
「ありがとうございます。今夜はレイナ姉さんも来ていると思いますが、見かけませんでした?」
「ああ、先ほど、防衛大臣といましたよ。すぐに来ますよ。」
「ありがとう。探してみますね。」
「積み荷は出発。証拠も残してあります。リークのタイミングは指示を待ちます。」
「よし。」
後は時を待つだけ。どう料理してやろうか。
「フォート将校、最終日のパーティーは御出席願います。」
副官に念を押されて頷いた。
ああいった、愛想笑いの時間の無駄なパーティーには出席したくない。演習期間中、その手のパーティーには、代理で副官を送り込んでいた。さすがに、最終日は出るべきだろうとフォート将校は思った。
「了解した。そうだな……同伴者が必要か。副官…いや、…マック・レディを呼べ。」
期間中、一度も顔を合わす事が無かった事に気がついた。
………まあ、兄のコネで遊びに来たようなものだ。呑気に観光でもしていたのだろう。気にすることもない………
「いいですよ、ご一緒します。」
マック・レディは嫌な顔一つせずに言う。どうやら、イベントやら、懇親会やら、一応彼なりに、働いてはいたようだ。
じきに、切り札として手の内に入ると思えば、少しは優しく対応もできる。
「そうか。苦手でな、香水臭い女とパーティーは。」
「私もですよ。」
クスリとマックが笑う。その顔を間近で見た。今まで、こんな近くで彼の顔を見ることはなかった。その年齢を感じさせない美貌に、フォート将校はゾクゾクした。昨夜、頭の中で彼をいたぶり、涙を流す姿を、イグナートの悔しがる顔を、想像したためか、体が熱く反応する。彼の腕をギリギリと捻りあげたい。そのすました顔を歪ませてやりたい。熱くたぎる欲望で征服してやりたい………いや……自分の欲求が信じられなく、首を振る。気を静めろ。フォート将校は自らを制した。
「フォート将校は宰相と同期だと伺ってます。主席を争った仲とか、お二人は優秀なのですね。」
「ふん。勝てた事など無いがな。」
「学校で主席争いなんて凄いですよ!私は、卒業も満足に出来なかったから、羨ましいです。今でも同期で競い合うなんて。」
耳障りの良い声に、心地いい会話、やんわりとした雰囲気が漂い、いつの間にか毒気を抜かれ、マックのペースに取り込まれている。
「それに…私の…幼なじみの親友は先に亡くなってしまって…長寿の種の辛いところですね。」
「アスターネスにいるとあまり感じないが、外へ出ると流れる時間が違うと感じるな。」
「そうそう、私の姉もサーアの人と結婚して、こちらにいるのです。パーティーにも来ますから、紹介しますよ。」
……軍の関係者の血縁なのか?まあ、気にすることはないだろう……
フォート将校は王に謁見する時に着る最上の軍服を着込み、マックを待つ。マックは軍人でも騎士でもないので、身体にピッタリした上質で裾の長いスーツにストール姿。胸にはグレイから戴いたという瞳と同じ色の宝石が入ったストール留めが光っていた。揃いのイヤーカフもつけている。見た目では、年齢を感じさせない。
「お待たせしました。さあ、行きましょう。」
迎賓館のホールには多くの華やかな正装の男女が歓談している。四ヶ国の交流を目的としているためか、無礼講ということになっているようで位の上下を特に気にせずに話せるようだ。
「フォート将校。今夜はおいでくださいましたか。」
たしか、サーアの役人だったな、とフォート将校は思った。
「はい。今夜で、サーアとお別れかと思うと残念ですが。」
「本当に、もっと滞在してほしいですよ。マックさんにも。」
ニッコリ笑って挨拶のキスをマックにすると、飲み物をすすめる。その自然な行動にフォート将校は目を丸くする。
「ありがとうございます。今夜はレイナ姉さんも来ていると思いますが、見かけませんでした?」
「ああ、先ほど、防衛大臣といましたよ。すぐに来ますよ。」
「ありがとう。探してみますね。」
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