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黒の章

黒の子8

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「呼んだ~?」
「誰!?」
緊張感のない女性の声にハンスは驚き、叫んだ。今まで彼女が立っている場所には今まで誰もいなかったのに。
「おっ!やった!助かった!ハンス!もう大丈夫だ!」
クロードがニカッと笑って黒髪の女性を見て言った。
……狼に腕を噛まれたまま何を言っているんだ!?言葉と状況が合ってないよクロード!………と、言いたいハンスに、クロードが言葉を続ける。
「彼女は俺の知り合いだ!後は任せて、ハンスはホアンを呼んで来てくれ!」
「え、え、ええ~!?」
「いいから、早く!」
「このまま…俺だけ…行くの?」
「ああ。急いで呼んで来てくれ。ベルタの怪我も心配だし……あ、彼女の事は内緒にしておいてくれ。バレるとまずい。」
う、うん。と頷いて、ハンスは走り出した。
  後は任せて…と言っていたけれど、誰なんだよ、ベルタもクロードも怪我していた…大人とはいえ、華奢な女の人が一人増えたところで助けにならないよ。狼に叶うわけ無いじゃないか……
ハンスは走りながら、ぐるぐると悪い考えばかりが頭の中を巡って、どうか、無事で!と願うばかりだった。

「クロード、あんた、何狼と遊んでるのよ。」
黒髪の女性は腰に手を当てて、ため息混じりに呟いた。
「あ、遊んでる訳じゃ……」
「ちゃっちゃと、片付けなさいよ。あんたならできるでしょ。私は暇潰しに見物しに来ただけ。手伝わないからね。」

「え?助けに来てくれたんじゃないの?」
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