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黒の章

黒の子 7

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そして空腹により感じる苛立ちを少し表に出すと高城は「すまんすまん」と言いながら私の頭を撫でて来るではないか。

乙女の頭を撫でるなど、次から一撫で千円取ってやろうかっ!と思うもののむしろ高城が頭を撫でると言えば五千円払ってでも撫でて貰いたいという女性達が何人もいると確信できる上に私の場合は例え無料でも断られる光景しか思い浮かべる事ができず、無駄に乙女ゆえのガラスのハートに傷がついてしまったではないか。

因みに以前眞子に私の繊細な心であるガラスのハートについて「ガラスはガラスでも防弾ガラスじゃん。ついでに毛もふっさふさなんじゃないの?」とほざいた事を、私は忘れていないし、決して忘れない。

「とりあえず腹が減ったからお弁当食べても良いか?」
「もう、しょうがないわね。これ、今日の高城君分ね」
「お、いつもすみませんなぁ。しかし、本当にお弁当箱は洗わなくて良いのか?作って貰っている手前何かしないと何だかミナに悪い気がしてしまうんだが」
「うちは食器洗浄機で一撃だからそこまで考えなくても良いわよ。むしろ申し訳なく思われている方が嫌だから何も考えずに食べ終わったお弁当箱は私に渡しなさい」
「了解」

そしてそんな会話をしながら私たちは互いに手に取っているお弁当箱の蓋を開けるのだが、意識はお弁当なんかよりも高城が私の作ったお弁当の中身を見た時の反応が気になり過ぎてそれどころではないし、お弁当を食べた時の反応もまたどの様な反応をするのか気が気じゃない。

「おぉっ、今日も今日とて美味しそうだな。いっそゲームだけではなく本当に俺の嫁にならないか?」
「……………っ!?、も、もうっ!!冗談言ってないでさっさと食べなさいよっ!」





最近ミーコの付き合いが悪くなった。

お昼は別々に食べる様になり、いつも協力プレイで一日中何らかのゲームをしていた休日も最近ではあまりしなくなった。

その原因は分かっていいるのだが、分かっているからこそ何でその相手がミーコで私じゃ無いのだろうと嫉妬してしまう。

勿論、それが結果的にミーコの幸せと思っていても、その負の面の感情を思ってしまう自分も嫌いである。

私は、すぐに移ろう恋心という不安定な感情よりも親友という揺るがないと確信して言えるものを選ぶしこれからも大切にしたいと思っていた。

気が付くと私は、いつの間にかスカートを握りしめていたのか、少しだけ握りしめていた箇所が皺になっているではないか。

あぁ、アイロンがけが面倒くさいな………。

そして私は少し離れた場所で並んで、まるでカップルの様にいちゃつきながらお昼ご飯を食べる高城君とミーコ達から目線を反らすと、食堂へと逃げる様に去って行くのであった。
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