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おまけの話
マック33歳、騎士の誓いをする
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マックとレヴィの二人旅ももう何年目か、そろそろキュー・キューイの待つスファナへ戻ろうと考えていた。その前に、レヴィは立ち寄りたい所があると言う。
レヴィは知り合いの花屋がこの辺にあると言った。土地勘のないマックは黙ってついていく。
「ああ、あったあった。変わっちゃったな~」
マックがヴィーから聞いて想像していたのは、古い小さな花屋。だが、そこにあるのは、ビルの一階全てが店舗の大きな店。
「ホントにここなの~?」
「うん。あ、マックはここで待ってる?中にカフェがあるみたいだ。」
見ると、カウンターに十席くらいの飲食スペースがあり、二人ほど先客がいるようだ。
他にもアレンジ教室、寄せ植え教室なども開催可能で、広いスペースに椅子とテーブルが設置されていた。
奥には花瓶や上木鉢といった器、ガーデニング用品から、小物、ラッピング用品といった、関連用品の売場が見えた。
「そうねぇ。随分と手広くやってるのねぇ~ここのご主人が知り合いなんでしょ?」
「うん……そうなんだけど……見当たらないなあ。俺、花買って……行くから。マックはここで時間つぶしてて……」
キョロキョロと知り合いを探していたが見つからず、レヴィは花を買いに切り花のコーナーに歩いて行った。マックは…アタシはコーヒーでも飲んで待ってましょ…と、カフェスペースに向かう。
ベルドンナ星にレヴィ・オーカーとマック・レディがやってきたのは、レヴィの両親の墓参りのためだ。子どもの頃ここを離れてから、長く帰ってないので、街の風景も随分変わっていた。ここから墓地までは歩いてすぐだそうで、花を買ってレヴィは店を出る。久しぶりの墓参りだ。きっと誰にも邪魔されたくはないだろう。彼が戻ってくるまで、マックはこの店で時間を過ごそうと思っていた。
カフェコーナーのカウンターの椅子に座ろうと近づいた時。先客の一人がこちらに気付き振り向いた。
「あっ…」
髪はふわふわの無造作な巻き毛。大きな瞳。頭には獣人特有の三角の耳。
そこには美少女がいた。
マックはふらふらと足が前に進み、彼女のすぐそばまで、やってきた。彼女は驚いた顔でマックを見つめる。マックは吸い寄せられるように彼女の顔から目が離せない。
マックは、彼女の前に片膝をついた。右手を差し出し、口を開いた。
「あたしは、マック。貴方に出会えて幸せよ。これは運命なのかしら。」
ベルドンナ共通語で話かける。
「?」
彼女は椅子に座ったまま、身体を軽く引いて眉をひそめ、不審者を見るような目でマックを見た。彼女からすれば、倍はあろうかという身長の男が現れたと思ったら、いきなり片膝をつき、女言葉で話かけたのだから、驚くのは当然だ。
マックは目を閉じ、一呼吸し、静かに集中する。ゆっくり目を開き彼女を見つめ、深く息を吸う。そして………
「アスターネスの清き湖の輝き、峰に舞う鳳凰の如く優雅に、豊かな大地に実る潤沢に水をたたえる果実のごとく、咲き誇る大輪の華の蜜、貴き君に生涯の愛を誓う。」
マックが今度は一息にタクーンの言葉で誓いの言葉を紡いだ。
そして…彼女のほうへ…手をのばした。
「………あ。」
伸ばされたマックの右手に引き寄せられるように、自然と彼女の手が触れ……………
瞬間。
彼女は微笑む。
そしてゆっくり椅子から降り立ち、マックを見つめる。マックは彼女の右手の甲に軽く唇を触れ両手で包み込む。そして視線を合わせたままどのくらいの時間が過ぎたのだろうか。
「………おいで。」
マックはいつもそうしているかのように、自然な動作で彼女を引き寄せ抱き上げた。まるで子どもを抱っこするように、自分の膝の上に横抱きし、一緒に椅子に座る。マックは時に囁き髪をすき頭にキスを落とした。手を絡ませ、見つめ合い、そして愛を語った。
唖然として、一部始終を見ていた彼女の連れは、ここの女店主で、何度も彼女に呼び掛けたが返事が返ってこず、仕方なく放置を決め込んで店員と話し込んでいた。
「………で?」
「え?何?」
墓参りから帰ったレヴィが店主に聞く。
「これはどういう事だよ。」
甘く愛を語り合う二人を指差し、状況の説明を求める。
「わかんないわ~ずっと、こうなのよ。」
彼女も、自分達の世界に入っている二人を指差して言う。
「彼は誰なのか、わたしにも説明してほしいわね。」
レヴィは無言で二人に近寄って、マックの頭に手刀を叩き込む。
「いったぁぃ~」
ようやく振り返るマック。心配そうに頭を撫でる膝の上の彼女は手を出したレヴィを、キッと睨んだ。
「なにやってるんだよ、お前は。」
「あたしたち夫婦になるから。」
「ちゃんと説明しろ!」
この短時間で、どうして、夫婦?膝の上の娘は誰だよ。とレヴィが詰め寄る。
「再会の感動も半減よね~この二人を見てると。もう、好きにしてって感じよね……ねぇ?レヴィ。生きていたとは……もっと早く連絡するとか…顔出せなかったの?」
「ごめんってば。色々あったんだよ。」
「彼女はキュール。まだ十五歳だけど商人よ。うちの店をここまで大きくしたのはこの娘なの。」
「こいつはマック。一緒に旅してた。……どうしてこうなった?」
「横で見ていたけど、彼がいきなり来て、プロポーズしたの。でも、初対面みたいなのよ?」
「プロポーズ…」
「誰にでもそんな事するのなら……キュール引きはがして、彼、殴っていい?」
「いやいや、腹立つくらいもてる奴だが、詐欺師じゃないよ。プロポーズなんてしたことないし。」
「どうするの?」
「どうしよう。」
レヴィは知り合いの花屋がこの辺にあると言った。土地勘のないマックは黙ってついていく。
「ああ、あったあった。変わっちゃったな~」
マックがヴィーから聞いて想像していたのは、古い小さな花屋。だが、そこにあるのは、ビルの一階全てが店舗の大きな店。
「ホントにここなの~?」
「うん。あ、マックはここで待ってる?中にカフェがあるみたいだ。」
見ると、カウンターに十席くらいの飲食スペースがあり、二人ほど先客がいるようだ。
他にもアレンジ教室、寄せ植え教室なども開催可能で、広いスペースに椅子とテーブルが設置されていた。
奥には花瓶や上木鉢といった器、ガーデニング用品から、小物、ラッピング用品といった、関連用品の売場が見えた。
「そうねぇ。随分と手広くやってるのねぇ~ここのご主人が知り合いなんでしょ?」
「うん……そうなんだけど……見当たらないなあ。俺、花買って……行くから。マックはここで時間つぶしてて……」
キョロキョロと知り合いを探していたが見つからず、レヴィは花を買いに切り花のコーナーに歩いて行った。マックは…アタシはコーヒーでも飲んで待ってましょ…と、カフェスペースに向かう。
ベルドンナ星にレヴィ・オーカーとマック・レディがやってきたのは、レヴィの両親の墓参りのためだ。子どもの頃ここを離れてから、長く帰ってないので、街の風景も随分変わっていた。ここから墓地までは歩いてすぐだそうで、花を買ってレヴィは店を出る。久しぶりの墓参りだ。きっと誰にも邪魔されたくはないだろう。彼が戻ってくるまで、マックはこの店で時間を過ごそうと思っていた。
カフェコーナーのカウンターの椅子に座ろうと近づいた時。先客の一人がこちらに気付き振り向いた。
「あっ…」
髪はふわふわの無造作な巻き毛。大きな瞳。頭には獣人特有の三角の耳。
そこには美少女がいた。
マックはふらふらと足が前に進み、彼女のすぐそばまで、やってきた。彼女は驚いた顔でマックを見つめる。マックは吸い寄せられるように彼女の顔から目が離せない。
マックは、彼女の前に片膝をついた。右手を差し出し、口を開いた。
「あたしは、マック。貴方に出会えて幸せよ。これは運命なのかしら。」
ベルドンナ共通語で話かける。
「?」
彼女は椅子に座ったまま、身体を軽く引いて眉をひそめ、不審者を見るような目でマックを見た。彼女からすれば、倍はあろうかという身長の男が現れたと思ったら、いきなり片膝をつき、女言葉で話かけたのだから、驚くのは当然だ。
マックは目を閉じ、一呼吸し、静かに集中する。ゆっくり目を開き彼女を見つめ、深く息を吸う。そして………
「アスターネスの清き湖の輝き、峰に舞う鳳凰の如く優雅に、豊かな大地に実る潤沢に水をたたえる果実のごとく、咲き誇る大輪の華の蜜、貴き君に生涯の愛を誓う。」
マックが今度は一息にタクーンの言葉で誓いの言葉を紡いだ。
そして…彼女のほうへ…手をのばした。
「………あ。」
伸ばされたマックの右手に引き寄せられるように、自然と彼女の手が触れ……………
瞬間。
彼女は微笑む。
そしてゆっくり椅子から降り立ち、マックを見つめる。マックは彼女の右手の甲に軽く唇を触れ両手で包み込む。そして視線を合わせたままどのくらいの時間が過ぎたのだろうか。
「………おいで。」
マックはいつもそうしているかのように、自然な動作で彼女を引き寄せ抱き上げた。まるで子どもを抱っこするように、自分の膝の上に横抱きし、一緒に椅子に座る。マックは時に囁き髪をすき頭にキスを落とした。手を絡ませ、見つめ合い、そして愛を語った。
唖然として、一部始終を見ていた彼女の連れは、ここの女店主で、何度も彼女に呼び掛けたが返事が返ってこず、仕方なく放置を決め込んで店員と話し込んでいた。
「………で?」
「え?何?」
墓参りから帰ったレヴィが店主に聞く。
「これはどういう事だよ。」
甘く愛を語り合う二人を指差し、状況の説明を求める。
「わかんないわ~ずっと、こうなのよ。」
彼女も、自分達の世界に入っている二人を指差して言う。
「彼は誰なのか、わたしにも説明してほしいわね。」
レヴィは無言で二人に近寄って、マックの頭に手刀を叩き込む。
「いったぁぃ~」
ようやく振り返るマック。心配そうに頭を撫でる膝の上の彼女は手を出したレヴィを、キッと睨んだ。
「なにやってるんだよ、お前は。」
「あたしたち夫婦になるから。」
「ちゃんと説明しろ!」
この短時間で、どうして、夫婦?膝の上の娘は誰だよ。とレヴィが詰め寄る。
「再会の感動も半減よね~この二人を見てると。もう、好きにしてって感じよね……ねぇ?レヴィ。生きていたとは……もっと早く連絡するとか…顔出せなかったの?」
「ごめんってば。色々あったんだよ。」
「彼女はキュール。まだ十五歳だけど商人よ。うちの店をここまで大きくしたのはこの娘なの。」
「こいつはマック。一緒に旅してた。……どうしてこうなった?」
「横で見ていたけど、彼がいきなり来て、プロポーズしたの。でも、初対面みたいなのよ?」
「プロポーズ…」
「誰にでもそんな事するのなら……キュール引きはがして、彼、殴っていい?」
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「どうするの?」
「どうしよう。」
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