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第一章
気になる子には意地悪をしてしまうのはよくあることです
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「だって、おまえの髪!目!家族の誰にも似てないじゃんか。」
「もらいっ子なんかじゃない!」
一回り大きな子どもに、小さな男の子が掴みかかった。だが、体格の差はあきらかで、あっさり振り払われ、涙をぼろぼろこぼしながら抗議する。
「ちがうもん!」
肩まであるストレートの白髪に褐色の肌の子どもは座り込み、顔を覆って声を上げて泣いていた。
近所の年上の男子達に髪と目の色を度々からかわれた。少年の両親も兄弟も姉も、きれいなハニーブラウンの髪に緑色の瞳で、彼の白髪、朱色の目が異質に見えるのだろう。
からかわれて、泣いているといつも少年の兄がかばってくれた。すぐ上の兄のジグは強く、騎士養成学校の教育学部に在籍していて、憧れの、自慢の兄だ。 少年も騎士養成学校に入りたいと言って両親に申請してもらうと、驚くことに直ぐに許可された。三歳になる前に許可されたのは、立派な一番上の兄、サツのおかげだろうか。騎士の教育学部は幾つからでも入団ができるのだが、一般的には五歳からだ。
騎士の国と広く知られるアスターネスの現在の騎士は、帯剣はするものの、威力のある火器が存在するため、他国との戦争には高性能の武器を有する軍部があたる。対星間になると規模が大きくなり、宇宙戦艦が登場する。昔の騎士のように実際に剣で戦う訳ではない。
王立騎士団は騎士の国の伝統を絶やさぬよう、王族を守り、国の誇りの象徴で存在し続ける。 養成教育部は一般の学校と同じように基礎教育を学び、騎士になるために作法や心得を身に付け、体術や剣術を鍛練する。教育生から始まり、騎士見習いに、そして騎士になるまでには長い研鑽が必要だが、少年の兄のサツは十五歳になって、正式な王立騎士に任命された。
「おい、お前ら、マックをいじめるな!許さんぞ!」
「また来たな騎士様が、兄の尻に隠れる弱虫~~」
「泣くな、マック!」
「だって……ジグ兄…」
「はは、いこうぜ。」
兄にはかなわないと解っているのか、すぐに解散となった。
「気にするな。お前が生まれた時の事を俺はよく覚えている。間違いない。俺の弟だよ。」
マックは自分と家族との間に何か違和感を感じていた。容姿もその理由の一つだが、何かしら不安と、普段の生活の中にふと感じる視線。近所の人や両親、祖父と長兄の見つめる目の奥に、言いたげな何か感じる。
他の兄弟や姉と違った扱いをされたことはないし、たっぷりの愛情を受けていることは間違いない。なのに、何か…………
ジグからマックと近所の悪童との一件を聞いたサツの行動は早かった。居間のソファーにマックを座らせて、肩を引き寄せ、家系図を紐解いた。
「マック、これをごらん。」
「サツ兄さん?」
「これは、父さんや母さんのさらに父さん母さん。」
「うん、じいじとばあばだね。」
「もっとさかのぼって、ばあばのばあば。この人が赤い目だった。」
「ばあばのばあば?」
「そう。そして、じいじのじいじのお母さんが白い髪なんだ。」
「僕とおんなじ?」
「そうだ。実はね、父さんや母さんにも俺や弟、妹にも、マックと同じ色の種はあるんだよ。」
「種?」
「うん。ただ、種から芽が出たのが、たまたまマックの産まれる時だったんだ。でもね、俺の時だったかも知れないし、ジグの時だったかも知れない。マックのきれいな白い髪は一族に流れる血によるものだよ。」
「わかった。ありがとう。兄さん。」
マックは兄の言葉に頷いた。完全に納得はできず、正体不明の不安は胸の奥深くに残るが、もう大丈夫と、笑顔で答えた。家族の困った顔をもう見たくはなかったから。
「もらいっ子なんかじゃない!」
一回り大きな子どもに、小さな男の子が掴みかかった。だが、体格の差はあきらかで、あっさり振り払われ、涙をぼろぼろこぼしながら抗議する。
「ちがうもん!」
肩まであるストレートの白髪に褐色の肌の子どもは座り込み、顔を覆って声を上げて泣いていた。
近所の年上の男子達に髪と目の色を度々からかわれた。少年の両親も兄弟も姉も、きれいなハニーブラウンの髪に緑色の瞳で、彼の白髪、朱色の目が異質に見えるのだろう。
からかわれて、泣いているといつも少年の兄がかばってくれた。すぐ上の兄のジグは強く、騎士養成学校の教育学部に在籍していて、憧れの、自慢の兄だ。 少年も騎士養成学校に入りたいと言って両親に申請してもらうと、驚くことに直ぐに許可された。三歳になる前に許可されたのは、立派な一番上の兄、サツのおかげだろうか。騎士の教育学部は幾つからでも入団ができるのだが、一般的には五歳からだ。
騎士の国と広く知られるアスターネスの現在の騎士は、帯剣はするものの、威力のある火器が存在するため、他国との戦争には高性能の武器を有する軍部があたる。対星間になると規模が大きくなり、宇宙戦艦が登場する。昔の騎士のように実際に剣で戦う訳ではない。
王立騎士団は騎士の国の伝統を絶やさぬよう、王族を守り、国の誇りの象徴で存在し続ける。 養成教育部は一般の学校と同じように基礎教育を学び、騎士になるために作法や心得を身に付け、体術や剣術を鍛練する。教育生から始まり、騎士見習いに、そして騎士になるまでには長い研鑽が必要だが、少年の兄のサツは十五歳になって、正式な王立騎士に任命された。
「おい、お前ら、マックをいじめるな!許さんぞ!」
「また来たな騎士様が、兄の尻に隠れる弱虫~~」
「泣くな、マック!」
「だって……ジグ兄…」
「はは、いこうぜ。」
兄にはかなわないと解っているのか、すぐに解散となった。
「気にするな。お前が生まれた時の事を俺はよく覚えている。間違いない。俺の弟だよ。」
マックは自分と家族との間に何か違和感を感じていた。容姿もその理由の一つだが、何かしら不安と、普段の生活の中にふと感じる視線。近所の人や両親、祖父と長兄の見つめる目の奥に、言いたげな何か感じる。
他の兄弟や姉と違った扱いをされたことはないし、たっぷりの愛情を受けていることは間違いない。なのに、何か…………
ジグからマックと近所の悪童との一件を聞いたサツの行動は早かった。居間のソファーにマックを座らせて、肩を引き寄せ、家系図を紐解いた。
「マック、これをごらん。」
「サツ兄さん?」
「これは、父さんや母さんのさらに父さん母さん。」
「うん、じいじとばあばだね。」
「もっとさかのぼって、ばあばのばあば。この人が赤い目だった。」
「ばあばのばあば?」
「そう。そして、じいじのじいじのお母さんが白い髪なんだ。」
「僕とおんなじ?」
「そうだ。実はね、父さんや母さんにも俺や弟、妹にも、マックと同じ色の種はあるんだよ。」
「種?」
「うん。ただ、種から芽が出たのが、たまたまマックの産まれる時だったんだ。でもね、俺の時だったかも知れないし、ジグの時だったかも知れない。マックのきれいな白い髪は一族に流れる血によるものだよ。」
「わかった。ありがとう。兄さん。」
マックは兄の言葉に頷いた。完全に納得はできず、正体不明の不安は胸の奥深くに残るが、もう大丈夫と、笑顔で答えた。家族の困った顔をもう見たくはなかったから。
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