白の衣の神の子孫

キュー

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第四章 君と一緒に生きていきたい

無人の星 8

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  二人がスファナで見るものは初めての物ばかりのようで、俺が連れてまわり、一つ一つ説明すると驚きっぱなしだった。
  歪みのない透明なガラスのコップ一つを取っても、ジュジュとマラジャは目を見開き、手の中で感触を確かめ、上下左右から眺めたりしていた。
  日々の日用品から、家具、衣服にまで、これは何だと、次々と質問を浴びせてきた。
  調査船が行くような未開発の星にいたから、それは当然か……と思うが、彼らの世界に存在しないものを言葉で説明するのは苦労した。

  特に理解が出来ないのが彼らが宇宙船で星を渡ってここへ来たという事。空を飛ぶ鳥しか知らない彼らが、人の作った乗り物が宙に浮くことや、自分達が立つ地が、夜空に見える星と同じものであると理解するのは難しい。こればかりは実際旅立つ時に経験してもらうしかない。

  マラジャの曲がって自由に動かない足を治療するための医療器具が残っていたのは幸運だった。最後の船に全て積み込む予定だったので、手術をすれば杖なしで歩けると説明し、幾つかプランを提案した。
  まず時間のかかる、細胞を育てる方法。これは自分の足を作りあげるためスファナを出てから何年もかかる。俺が責任もって最後まで付き合ってやれないが、引っ越し先で治療を続けてもらえば、可能だろう。
  次に、義肢を付ける方法。新しい足に慣れるまでは少し時間はかかるだろうが、他の方法より短時間で治療が完了する。脳から神経末端へ送られる信号は筋肉内に埋められたのセンサーにより義足内の受信機が受け取る。人の動作により近い仕組みを使った義足の動きは本来の人の足と変わらないし、力の加減も出来るし、傷もつかない、痛みも怪我もない。定期的に整備すれば、不便はないはず。だが、高度な医療とか、科学とか、彼にとって未知の機械や技術は抵抗があるようだ。
  同じく彼にとって、未知の治療法ではあるが、破損した骨を人工骨と取り替える方法。リハビリに時間はかかるが、見た目も一番馴染むだろう。
  彼と話し合い、気持ち的に一番抵抗の少ない人工骨を使う事にした。俺は義足をおすすめしたんだが、どうやら、良さが伝わらなかったようで残念だ。
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