白の衣の神の子孫

第四章 君と一緒に生きていきたい

小さな洋食店 3

  もうすぐ到着時間。待ちきれない思いで時計を見上げ、まだ予定の時間になっていないと、何度もテーブルのセッティングを確かめる。
  容姿が二代目に似ているだけだというのに、どうしようもなく期待に胸が高鳴る。まるで恋をしている娘のようだ。

  二代目のシェフはここを三代目に任せて、自分の故郷に戻ってレストランのシェフとなった。『王宮レストラン』なんて、冗談みたいな名前だと聞いている。
  二百年も生きる長寿種の夫婦はともに忙しい身ゆえ、休暇だといって、二人の予定を合わせ、旅行がてら妻の里帰りや店の面々に会いに訪れていたそうだ。

  店内にはもう一枚特別な写真がある。額に入った全身の写真で、白いコックスーツに瞳と同じ色のスカーフ、堂々とした立ち姿の彼の胸には金のメダルが誇らしげに輝いている。それは、彼が若い頃にコンクールで優勝した時のもの。二代目が故郷にもどってから、三代目が手配し、店内に飾った物である。二代目は来るたびに、恥ずかしいから外してくれと言ったが、絶対外さないと、三代目、四代目、五代目も譲らなかった。

「おかしい……」 

  時間を過ぎても彼等は来なかった。商会に連絡すると、今日は来ていないという。

「モート！マラジャとジュジュがいなくなった！」

  飛び込んで来たのは、彼らがいなくなったとの知らせだった。