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第四章 君と一緒に生きていきたい
偶然 2
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今日は語学と教養教室の日。ベルドンナ共通語での会話なら少しは出来るようになったが、まだ翻訳機が手放せない。二人が持っている翻訳機は恩人に作ってもらった特別製で、一般には出回っていない物だ。シェフのモートが身に付けていた翻訳機で彼らの言葉が翻訳出来なかった訳は、彼らの話す言語が、一般に知られているものではなかったから。でも、その事を知らないモートは、機械の故障だと思ったのだ。
その異国語を話す二人は、自分達が何処からやって来たのか、理解できないし、説明できない。だが、それを明らかにしようとすると、彼らと彼らを助けてくれた者達に不都合が生じるので秘密のままにしておかなければならない。だが、知られていない故に、誰に聞かれても、彼らの言語の秘密が漏れる心配はないので、慣れないベルドンナ共通語を使わずに二人っきりの時は今までと同じに故郷の言葉を自由に話している。
語学の授業が終わって、来月の受講希望を事務局に出すため二人はエレベーターへ向かった。
[この、箱は便利よね。初めて使ったときは、驚いたけど。]
[うん、スファナも初めて見るものばかりで、驚いたけど、ここは人が多くて…あ、エレベーターが来たよ。]
彼らの他に白い服の金髪の男性がエレベーターに乗った。視線を感じて男性の顔を見た。整った顔が少しも動かず、ジロジロと遠慮なく見つめる。
[何か見られているけど、俺の顔変?]
[いいえ。変わったところはないわよ。]
視線は気になるが、エレベーターは目的の階に止まり、扉が開いたので、歩きだした。
少し歩くと、急に肩を掴まれた。振り返ると、エレベーターで一緒だった男だ。
「君の名前は?今度会って話がしたい。連絡先を教えてくれないか。」
「?ナマエ?ハナシ?」
翻訳機のおかげで、聞き取れるものの、話す方は十分じゃない。
「ああ、言葉が……俺はモート。これは俺の店。名前教えてくれないか?君の、名前。教えて。話したい。」
伝わるよう、ゆっくり話すモート。名前を聞きたがっているのは理解した。
「名前、俺、マラジャ、彼女、ジュジュ。」
自分と、一緒の獣人族の少女の名前を指差しながら、答えた。
その異国語を話す二人は、自分達が何処からやって来たのか、理解できないし、説明できない。だが、それを明らかにしようとすると、彼らと彼らを助けてくれた者達に不都合が生じるので秘密のままにしておかなければならない。だが、知られていない故に、誰に聞かれても、彼らの言語の秘密が漏れる心配はないので、慣れないベルドンナ共通語を使わずに二人っきりの時は今までと同じに故郷の言葉を自由に話している。
語学の授業が終わって、来月の受講希望を事務局に出すため二人はエレベーターへ向かった。
[この、箱は便利よね。初めて使ったときは、驚いたけど。]
[うん、スファナも初めて見るものばかりで、驚いたけど、ここは人が多くて…あ、エレベーターが来たよ。]
彼らの他に白い服の金髪の男性がエレベーターに乗った。視線を感じて男性の顔を見た。整った顔が少しも動かず、ジロジロと遠慮なく見つめる。
[何か見られているけど、俺の顔変?]
[いいえ。変わったところはないわよ。]
視線は気になるが、エレベーターは目的の階に止まり、扉が開いたので、歩きだした。
少し歩くと、急に肩を掴まれた。振り返ると、エレベーターで一緒だった男だ。
「君の名前は?今度会って話がしたい。連絡先を教えてくれないか。」
「?ナマエ?ハナシ?」
翻訳機のおかげで、聞き取れるものの、話す方は十分じゃない。
「ああ、言葉が……俺はモート。これは俺の店。名前教えてくれないか?君の、名前。教えて。話したい。」
伝わるよう、ゆっくり話すモート。名前を聞きたがっているのは理解した。
「名前、俺、マラジャ、彼女、ジュジュ。」
自分と、一緒の獣人族の少女の名前を指差しながら、答えた。
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