白の衣の神の子孫

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第四章 君と一緒に生きていきたい

新人 その1

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  商業都市ベルドンナ。物流の拠点で、人も金も集まる食の都。様々な人種がこの街には集まっている。
  街の中心に大きな商業施設があり、隣接する同じく大きな建物が商会会館。商いに関わる全ての者が……とは言い過ぎであろうが、ベルドンナにおいて、商売を始めようと考えれば必ず最初にここを訪れるべし、と言われている。
  会館内には就職斡旋所があり、各種教育も充実している。地方から出稼ぎにきた労働者に語学や特殊技能、各種免許資格取得の学校へ、働きながら通うための宿泊施設が用意されている。誰でも受けられる無料の職業訓練講習もあり、同じように出稼ぎにに来た学の無かった若者がこれをきっかけに学び、実力を付け大手の企業へ就職し登用されたこともあると聞けば、講習中に居眠りするような受講者もいない。子を持つ者にはベビーシッターの紹介もあるので毎回満員なんだとか。

「おはようございます。本日はよろしくお願いします。」
「あ、おはようございます。いつもありがとうございます~早速セッティング始めちゃって………さっちゃ~ん、こちらお願いしていたケータリングの方、案内して~」

  カウンターの奥からばたばたと足音をたてて、たれ耳の兎族の獣人が元気良く飛ぶように走ってきた。
  今日は商工連合の年度初めの親睦会が商会会館で行われる。会館には会議室や宿泊施設もあり、遠方からの有名人や招待客も大勢いるので、ケータリングも何ヵ所かに依頼している。

「はいはいはい~初めまして!サラ・クレーコウです。新人ッスよろしくお願いします!」

  ペコッとお辞儀すると長い耳もびたんと遅れてお辞儀した。その姿が新人らしく初々しく、それを見た男はクスリと笑った。

「はい、よろしく。私はシェフのモート、こちらは助手のトリシュとチュール。」
「はいはい~荷物運びますね、会場はこちらです~」

  サラは手荷物を受け取り、バックヤードまで案内する。新人とはいえ、担当を割り当てられたからには、失敗は出来ないと、気を張っていた。緊張して、相手の顔もよく見られなかった。
  担当決めの時、大手のホテルシェフなんか自分には無理~と震えていたところ先輩は、サラの担当は小さな洋食店のシェフだから怖くないよ安心してね、と言ってくれた。その時はドキドキしてて、その言葉の意味を良くわかっていなかったのだが、各企画の全体説明を聞いて、メインの会場の料理担当がその小さな洋食店のシェフだと聞いて驚いた。

『 どうして?大手のホテルシェフもいるのに、洋食店のシェフが?』

  疑問で頭ぐるぐるしていたが、仕事に失敗しないよう頑張って先輩について回っていたら、当日が来てしまった。

『ん~見たところ凄そうでもないし、失礼のないよう、がんばろうっと。』

  ピョンピョン走り回って、あれはそこ、これは向こうと、指示を出した。

『……助手は猫系と人族のハーフ……シェフはサーア系かな………?』

  作業しながら、シェフと助手の方を見た。あの、助手達も将来一人立ちして店を持ったりするのかな?獣人のシェフなら、自分も通いやすいよな……兎族は体が小さい。椅子もテーブルも大きい人族のシェフのレストランはどうも居心地が悪い。シェフが獣人なら、可愛い店が出来そう……低めのテーブルで、床は毛足の長いマットで……靴も脱いでくつろげる……小さな椅子もいいかな……などと、ちょっと考えてしまった。

『おお、今度企画書出しとこう。うん。』

  人種も様々なベルドンナでは、獣人族も混じりも、珍しくもない。自分だって親類に人族いるし。でも、場所によっては、獣人を差別するようなところもあると聞く。地方に転勤になった友人は接客業務から外され、こうなったら事務を極めてやる、と愚痴っていた。

『……あ、横顔……カッコいい………』

  ふと、テーブルの上に料理の皿をセッティングしているシェフの横顔がみえた。先程は頭のはるか上空にあって見えなかったシェフの顔。正面からは緊張して見ることができなかったが、少し離れた横顔なら、平気だ。少し癖のある金髪をひっつめて一纏めにしている。

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