52 / 81
第三章 新たな道
光る星
しおりを挟む
助け出した獣人の女性はシンシと名乗った。毒消しを飲ませた翌日には、体も動くようになって、休み休み移動も出来るようになった。
「じゃあ、シンシは五の神殿守りなのね。」
シンシは頷いた。神殿に向かう道で、ガゲロブラスに襲われたという。
「ガゲロブラスの繁殖期だから気を付けていたんだけど……」
「助かってよかった。」
幸い彼女は助かったが、エサ玉の中には同じ村の者もいただろう。
彼女の村までは陽のある内にたどり着けそうになかったので、もう一泊野宿することにした。いつものようにマラジャが先に休み、夜中にジュジュが声をかけ起こす。
「マラジャ、マラジャ、起きて。」
「ん、交代……」
「違うの、ちょっと起きて、来て。」
寝ぼけた顔で体を起こし、マラジャはそのまま手を引かれ森を歩く。こんな事は初めてだ。
「火の側…はなれちゃ……だめ……じゃ……」
辺りは暗く、手を引かれるまま歩いた。眠ってからそれほどたっていなかったのか、中途半端に取った眠りが瞼が重くする。
急に立ち止まり、ジュジュに上を見るようにうながされた。ちょうど木々が疎らになった場所で、マラジャは顔を上げ…………そこには満点星空…………そう思って、重い瞼を開くと、予想外の空がそこにあり、眠気が吹き飛んだ。
「な、何あれ……」
空高く光る星がゆっくり移動している。強い光に凝視出来ずに目を細めた。マラジャはジュジュを見下ろす。空の眩い光が辺りを照らし、夜の暗闇の中にも関わらず、くっきりと彼女の姿が浮かび上がって見える。明るい満月の夜よりも更に明るい光が降り注ぎ、この世のものとは思えない。
「あっち……」
再び二人は光の進行方向に歩きだした。
小高い丘から、光る星の行き先を見つめる。地上に近付くにつれ、光が弱まり、ほとんど見えなくなった。
「消えた?」
「……いえ、多分あそこに……」
マラジャの問に、ジュジュは確信を持って指差した。だが、光源の無くなった夜の森は暗く静かで、指した指先さえよく見えなかった。
「明日、あそこに行こう。」
彼女に何が見えているのか、何が彼女を突き動かしているのか。二人は引き返し、火の側で寄り添うように夜明けを待った。マラジャが、眠らないの?と聞いても、眠れない、とジュジュはマラジャの横を離れなかった。
「じゃあ、シンシは五の神殿守りなのね。」
シンシは頷いた。神殿に向かう道で、ガゲロブラスに襲われたという。
「ガゲロブラスの繁殖期だから気を付けていたんだけど……」
「助かってよかった。」
幸い彼女は助かったが、エサ玉の中には同じ村の者もいただろう。
彼女の村までは陽のある内にたどり着けそうになかったので、もう一泊野宿することにした。いつものようにマラジャが先に休み、夜中にジュジュが声をかけ起こす。
「マラジャ、マラジャ、起きて。」
「ん、交代……」
「違うの、ちょっと起きて、来て。」
寝ぼけた顔で体を起こし、マラジャはそのまま手を引かれ森を歩く。こんな事は初めてだ。
「火の側…はなれちゃ……だめ……じゃ……」
辺りは暗く、手を引かれるまま歩いた。眠ってからそれほどたっていなかったのか、中途半端に取った眠りが瞼が重くする。
急に立ち止まり、ジュジュに上を見るようにうながされた。ちょうど木々が疎らになった場所で、マラジャは顔を上げ…………そこには満点星空…………そう思って、重い瞼を開くと、予想外の空がそこにあり、眠気が吹き飛んだ。
「な、何あれ……」
空高く光る星がゆっくり移動している。強い光に凝視出来ずに目を細めた。マラジャはジュジュを見下ろす。空の眩い光が辺りを照らし、夜の暗闇の中にも関わらず、くっきりと彼女の姿が浮かび上がって見える。明るい満月の夜よりも更に明るい光が降り注ぎ、この世のものとは思えない。
「あっち……」
再び二人は光の進行方向に歩きだした。
小高い丘から、光る星の行き先を見つめる。地上に近付くにつれ、光が弱まり、ほとんど見えなくなった。
「消えた?」
「……いえ、多分あそこに……」
マラジャの問に、ジュジュは確信を持って指差した。だが、光源の無くなった夜の森は暗く静かで、指した指先さえよく見えなかった。
「明日、あそこに行こう。」
彼女に何が見えているのか、何が彼女を突き動かしているのか。二人は引き返し、火の側で寄り添うように夜明けを待った。マラジャが、眠らないの?と聞いても、眠れない、とジュジュはマラジャの横を離れなかった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

異世界無知な私が転生~目指すはスローライフ~
丹葉 菟ニ
ファンタジー
倉山美穂 39歳10ヶ月
働けるうちにあったか猫をタップリ着込んで、働いて稼いで老後は ゆっくりスローライフだと夢見るおばさん。
いつもと変わらない日常、隣のブリっ子後輩を適当にあしらいながらも仕事しろと注意してたら突然地震!
悲鳴と逃げ惑う人達の中で咄嗟に 机の下で丸くなる。
対処としては間違って無かった筈なのにぜか飛ばされる感覚に襲われたら静かになってた。
・・・顔は綺麗だけど。なんかやだ、面倒臭い奴 出てきた。
もう少しマシな奴いませんかね?
あっ、出てきた。
男前ですね・・・落ち着いてください。
あっ、やっぱり神様なのね。
転生に当たって便利能力くれるならそれでお願いします。
ノベラを知らないおばさんが 異世界に行くお話です。
不定期更新
誤字脱字
理解不能
読みにくい 等あるかと思いますが、お付き合いして下さる方大歓迎です。

銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~
雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。
左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。
この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。
しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。
彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。
その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。
遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。
様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜
言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。
しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。
それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。
「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」
破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。
気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。
「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。
「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」
学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス!
"悪役令嬢"、ここに爆誕!

勇者がアレなので小悪党なおじさんが女に転生されられました
ぽとりひょん
ファンタジー
熱中症で死んだ俺は、勇者が召喚される16年前へ転生させられる。16年で宮廷魔法士になって、アレな勇者を導かなくてはならない。俺はチートスキルを隠して魔法士に成り上がって行く。勇者が召喚されたら、魔法士としてパーティーに入り彼を導き魔王を倒すのだ。
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる