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第三章 新たな道
虫……ダンゴ……
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大きな虫や、虫の交尾シーン、暴力、他、気分を害するシーンが入ります。ご注意下さい。苦手な方は、読まなくても話は続きますので、タイトル、虫、の間は飛ばして下さい。
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「エサ玉……麻痺毒か……卵が孵るまで生かしておくのか…」
すぐ隣でジュジュがブルッと体を震わせた。
「胸糞悪いな……」
エサ玉から目をそらし、マラジャが奥へと視線を向ける。
森の中で見かける大型虫類ガゲロブラスは、獣人のジュジュと同じくらいの大きさがある。その二匹の黒い塊が重なり上下している姿を見ていると怖気立つ。今まさに交尾中でギチギチと気味の悪い音が響いてくる。覆い被さっている方がオスなのだろうか、薄く細長い羽を時折拡げ興奮しているようだ。行為に夢中で周りを警戒する様子はなく、マラジャ達に気付いてはいない。
「あそこ…横に…見て」
ジュジュが何か見つけて指差した。
先程連れてこられた女であろう、震えながら小さな声で助けを乞うている。既に麻痺毒を打たれたのだろう、懸命に這って逃げようとするが、上手く手足が動かないようで、前に進めずにいる。
「まだ、意識がある。助けなきゃ。」
ちょうどその時、交尾中の上に乗っかっていた虫が、相手の体に噛みついた様に見えた。
体を起こし、羽をばたつかせ、交尾相手から離れると、横に転がった連れてきたばかりの獣人に近付き足を伸ばそうとした。
「うわあああ!」
ジュジュが叫び、走り出した。虫が倒れている獣人を押さえると、下腹部から太い菅が現れた。そのおぞましい管が体に触れる直前に短刀を虫の頭に突き刺した。遅れてマラジャも杖を持ち直し、飛び出した。
頭を刺されても事切れず、長い足をジュジュに伸ばしてくる虫の頭めがけて、マラジャは振り上げた杖の握りの部分を思いっきり振り抜いた。記憶はなくとも、長年訓練した剣を振るう感覚は体が覚えていたようだ。鋭い振りに、頭は転がり、切り離された虫の体はもう一匹の体に当り重なるように倒れた。ビクビクと震えているが、そのまま起き上がる様子はない。もう襲いかかってはこないだろう。噛みつかれた虫の方もどうやら噛み千切られた場所が悪かったのだろう足がわずかに震えているが、すでに虫の息だ。
「危なかった。触れると毒を刺されて動けなくなるところだった。」
「大丈夫?聞こえる?」
ジュジュが助け出した女に呼び掛けるが、女からの返事はない。マラジャが毒消しを女の口に押し込み、ジュジュが水筒を口の中にに流し込む。顎をつかみ閉じさせて飲み込むよう促すと、なんとか飲み下したようだった。
女を介抱していた二人は虫から注意が逸れていた。
「うわっ、あれ、まだ生きてる……」
それに気付いたのはマラジャ。
頭のない虫は大きく張り出した腹の下の太いトゲを痙攣していた虫に突き刺した。
「ウッ……」
その光景にマラジャは背筋が寒くなり吐き気を堪えた。どうやら、頭を飛ばされた方がメスだったようだ。太い管は産卵菅で、受精後に生きたエサに卵を産みつけようしたところ、邪魔をされて、瀕死の状態でも手近にあったオスの体に卵を産み付けようというのだ。
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「エサ玉……麻痺毒か……卵が孵るまで生かしておくのか…」
すぐ隣でジュジュがブルッと体を震わせた。
「胸糞悪いな……」
エサ玉から目をそらし、マラジャが奥へと視線を向ける。
森の中で見かける大型虫類ガゲロブラスは、獣人のジュジュと同じくらいの大きさがある。その二匹の黒い塊が重なり上下している姿を見ていると怖気立つ。今まさに交尾中でギチギチと気味の悪い音が響いてくる。覆い被さっている方がオスなのだろうか、薄く細長い羽を時折拡げ興奮しているようだ。行為に夢中で周りを警戒する様子はなく、マラジャ達に気付いてはいない。
「あそこ…横に…見て」
ジュジュが何か見つけて指差した。
先程連れてこられた女であろう、震えながら小さな声で助けを乞うている。既に麻痺毒を打たれたのだろう、懸命に這って逃げようとするが、上手く手足が動かないようで、前に進めずにいる。
「まだ、意識がある。助けなきゃ。」
ちょうどその時、交尾中の上に乗っかっていた虫が、相手の体に噛みついた様に見えた。
体を起こし、羽をばたつかせ、交尾相手から離れると、横に転がった連れてきたばかりの獣人に近付き足を伸ばそうとした。
「うわあああ!」
ジュジュが叫び、走り出した。虫が倒れている獣人を押さえると、下腹部から太い菅が現れた。そのおぞましい管が体に触れる直前に短刀を虫の頭に突き刺した。遅れてマラジャも杖を持ち直し、飛び出した。
頭を刺されても事切れず、長い足をジュジュに伸ばしてくる虫の頭めがけて、マラジャは振り上げた杖の握りの部分を思いっきり振り抜いた。記憶はなくとも、長年訓練した剣を振るう感覚は体が覚えていたようだ。鋭い振りに、頭は転がり、切り離された虫の体はもう一匹の体に当り重なるように倒れた。ビクビクと震えているが、そのまま起き上がる様子はない。もう襲いかかってはこないだろう。噛みつかれた虫の方もどうやら噛み千切られた場所が悪かったのだろう足がわずかに震えているが、すでに虫の息だ。
「危なかった。触れると毒を刺されて動けなくなるところだった。」
「大丈夫?聞こえる?」
ジュジュが助け出した女に呼び掛けるが、女からの返事はない。マラジャが毒消しを女の口に押し込み、ジュジュが水筒を口の中にに流し込む。顎をつかみ閉じさせて飲み込むよう促すと、なんとか飲み下したようだった。
女を介抱していた二人は虫から注意が逸れていた。
「うわっ、あれ、まだ生きてる……」
それに気付いたのはマラジャ。
頭のない虫は大きく張り出した腹の下の太いトゲを痙攣していた虫に突き刺した。
「ウッ……」
その光景にマラジャは背筋が寒くなり吐き気を堪えた。どうやら、頭を飛ばされた方がメスだったようだ。太い管は産卵菅で、受精後に生きたエサに卵を産みつけようしたところ、邪魔をされて、瀕死の状態でも手近にあったオスの体に卵を産み付けようというのだ。
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❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
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