白の衣の神の子孫

キュー

文字の大きさ
上 下
43 / 81
おまけの話

団長と俺 4

しおりを挟む
  森の中は暗く鬱蒼とした木々で頭上まで覆われていた。あれほど汗をかいていた体から、熱が奪われ、ゾクリと寒気がした。

  行けども行けども、先の見通せない長く続く森の中の道は、光も差し込まず暗く湿っぽい。彼らが通る道程は、広大な森全体からすればほんの一部で山に近い峠までの一応街道と呼ばれる……道なのだ。普段あまり人の行き来が無いのであろう荒れて苔生した起伏のあるその道は、たまに道端から延びてきた邪魔な枝を打ち落としたのであろうと思われ、切り口も新しい枝が路肩に転がっている。長く続く列。木々が途切れ、不意に視界が開けた。

  空を仰ぐと、森に入るまでとはうって変わった曇天。今にも雨粒が落ちてきそうだ。水の匂いの混じった暖かい風が頬を過ぎていく。
「団長、雨が降りそうですね……」
隣に並ぶ伝令が団長に声を掛ける。そんな事、言わなくてもわかるって。一々口にするなよ。うんざりだ。
「これから山道に入る。峠を越える前に雨が強くなるようなら、隊を止める。この先、雨をしのげる場所をチェックしながら進もう。……森まで戻ることもありえるな。」
  副団長に指示を伝えているのがここまで聞こえる。雨の中進むのは濡れるし、疲れるから嫌だよな……と、思った時……
「ぷっ」
ん?誰かが吹き出した声がした。反射的に辺りを見回したが、誰もそんな素振りをしていない。気のせいだったかな?

  同期のサティーは、いつも俺の事をチビ呼ばわりするが俺より少しだけ背が高いだけだ。だが、サティーは剣術も俺にかなわないし、持久力も俺の方が断然ある。サティーは俺は医療隊だからいいんだよと言うが、それは言い訳だよ。それに、訓練で一番にへばってしまうのは、俺が体力がない訳ではないのだ。毎年計っている基礎体力測定の点数は余裕で合格だし、周りの騎士達が体力バカなのだ。うん。
  ずっと馬を走らせている単調な作業だけなので、余計な事を色々考えてしまう。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

白の皇国物語

白沢戌亥
ファンタジー
一人の男が、異なる世界に生まれ落ちた。 それを待っていたかのように、彼を取り巻く世界はやがて激動の時代へと突入していく。 魔法と科学と愛と憎悪と、諦め男のラブコメ&ウォークロニクル。 ※漫画版「白の皇国物語」はアルファポリス様HP内のWeb漫画セレクションにて作毎月二〇日更新で連載中です。作画は不二まーゆ様です。

滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~

スサノワ
ファンタジー
「ここわぁ、地獄かぁ――!?」  悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、気がつきゃ金糸のような髪の小娘に!? 「えっ、ファンタジーかと思ったぁ? 残っ念っ、ハイ坊主ハラペコSFファンタジーでしたぁ――ウケケケッケッ♪」  やかましぃやぁ。  ※小説家になろうさんにも投稿しています。投稿時は初稿そのまま。順次整えます。よろしくお願いします。

老竜は死なず、ただ去る……こともなく人間の子を育てる

八神 凪
ファンタジー
世界には多種多様な種族が存在する。 人間、獣人、エルフにドワーフなどだ。 その中でも最強とされるドラゴンも輪の中に居る。 最強でも最弱でも、共通して言えることは歳を取れば老いるという点である。 この物語は老いたドラゴンが集落から追い出されるところから始まる。 そして辿り着いた先で、爺さんドラゴンは人間の赤子を拾うのだった。 それはとんでもないことの幕開けでも、あった――

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

処理中です...