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第二章 見知らぬ土地へ
神殿への道 14
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「金の輪。」
マラジャが同じように口に出すと、何か温かいような、懐かしい気持ちがした。何か思い出しそうだけど、出てこない。もどかしい。
「マラジャ、元気になったら、一緒に黒の神殿に行きましょう。神様が降りられたと言われている所なのよ。」
「神様は白き衣を身にまとっていたと、聞いてます。神殿は黒……?」
「現れた神殿の色が黒だからじゃないかしら。」
「神殿って、形や色が違うものなの?」
「ええ。老は見たことありますよね?」
「わしが見たのはもう五十は前。大石の白い神殿。三十は前の葵のは黄色だったと聞いているぞ?」
「見てみたいですね。」
マラジャは、一夜にして現れるという神殿を一度見てみたいと思った。それは、とても美しいのだろうか。
体が動くようになると、マラジャは少しずつ集落の仕事を手伝い始めた。集落の生活は自給自足の生活で、罠を仕掛け、野生の獣や川の魚を捕らえ食べている。人族とは違い、肉を好む彼らは小さな畑で葉野菜を育てていて、体の中を整える薬のような感覚で食べている。
マラジャのために、レイラとトレクが数日おきに自分達が育てている幾つかの野菜を、大石の村から届けてくれる。大石の村では広い畑があり、一部の獣人も野菜を食する習慣があるのだという。
「マラジャ、今日のスープはどう?」
「美味しいよ。ジュジュ。ありがとう。」
もともと、人族の血が強く出ているジュジュは、山菜や野草を取ってきて調理していた。彼女の母から調理法を習う。幼なじみ達に変なの~と笑われながらも、肉ばかりの食生活では、自分は体の具合が悪くなるとわかっていたので、ひとりで採りに山へ入ったりしていたのだ。
マラジャが同じように口に出すと、何か温かいような、懐かしい気持ちがした。何か思い出しそうだけど、出てこない。もどかしい。
「マラジャ、元気になったら、一緒に黒の神殿に行きましょう。神様が降りられたと言われている所なのよ。」
「神様は白き衣を身にまとっていたと、聞いてます。神殿は黒……?」
「現れた神殿の色が黒だからじゃないかしら。」
「神殿って、形や色が違うものなの?」
「ええ。老は見たことありますよね?」
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「見てみたいですね。」
マラジャは、一夜にして現れるという神殿を一度見てみたいと思った。それは、とても美しいのだろうか。
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「マラジャ、今日のスープはどう?」
「美味しいよ。ジュジュ。ありがとう。」
もともと、人族の血が強く出ているジュジュは、山菜や野草を取ってきて調理していた。彼女の母から調理法を習う。幼なじみ達に変なの~と笑われながらも、肉ばかりの食生活では、自分は体の具合が悪くなるとわかっていたので、ひとりで採りに山へ入ったりしていたのだ。
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