33 / 81
第二章 見知らぬ土地へ
神殿への道 9
しおりを挟む
目が覚めた。
「目を開けたよ。誰か呼んで来る。」
「………」
俺の顔を、心配そうに覗き込んでいた若い男性は、目が合った途端立ち上がり離れて行った。代わりに女性が寝ている俺の側に座り、額に手を当てたり、話掛けて来る。
見たこともない場所に、俺は横たわっていた。体中が痛くて、起き上がれない。喉が乾いた。
「水……」
自分の口から出たのは小さな声。喉はからからで、声は掠れているので、聞き取れないかと思ったが、首を抱えて起こし、匙に水をすくって口に運んで流し込んでくれる。ゆっくり、少しずつ、水が染み込んでいく。
「私の言葉、わかりますか?」
女性の声に、軽く頷く。
「あなたは、怪我の熱で、ずっと眠っていたのです。」
「…こ…こ……ど…こ……」
彼女は小さな声を聞き取ろうと、俺の口の近くに顔を寄せた。
「ここは葵の神殿の集落です。」
葵の神殿……?神殿は一つじゃないのか?………ん?なぜ俺は今…一つって思った?
「あなたの名前…教えてもらえますか?」
名前……俺は……俺の名は………マ……
「……マ……」
出てきそうたのだが、思い出せない。…ジ?……ジャ?
「どこから……来ました?」
「………どこ…………?……」
どこ……どこから……?んんん?
俺の中にぽっかりと穴が空いているようだ。頭が痛い。考えても、考えても、思い出せない。
「これは、あなたの物ですね。ここに刻まれた、『マ・ラ・ジャ』とはあなたの名前ですか?」
「…わか…ら…ない…」
差し出された物に見覚えはない。刻まれた文字が自分の名前なのかわからないが、聞き覚えがある響きであるのは確かだ。
「マラジャ……」
呼び掛ける声に答えるように、繰り返してみた。
「マ……ジャ?…」
まだ、かすれてうまく声が出ない。
「マラジャ…」
もう一度彼女が呼び掛ける。
「マ……ラ……ジャ……」
俺は何度か繰り返す。口にする度に、それはしっくり馴染んで、自分の名前であると思われた。俺の名は『マラジャ』だ。
「目が覚めたって!?」
部屋に飛び込んできた女の子。彼女には見覚えがある。何だか嬉しくなってずっと彼女の顔を見ていると、みるみる真っ赤になった彼女の口が『よかった』と動くのが見えた。
「目を開けたよ。誰か呼んで来る。」
「………」
俺の顔を、心配そうに覗き込んでいた若い男性は、目が合った途端立ち上がり離れて行った。代わりに女性が寝ている俺の側に座り、額に手を当てたり、話掛けて来る。
見たこともない場所に、俺は横たわっていた。体中が痛くて、起き上がれない。喉が乾いた。
「水……」
自分の口から出たのは小さな声。喉はからからで、声は掠れているので、聞き取れないかと思ったが、首を抱えて起こし、匙に水をすくって口に運んで流し込んでくれる。ゆっくり、少しずつ、水が染み込んでいく。
「私の言葉、わかりますか?」
女性の声に、軽く頷く。
「あなたは、怪我の熱で、ずっと眠っていたのです。」
「…こ…こ……ど…こ……」
彼女は小さな声を聞き取ろうと、俺の口の近くに顔を寄せた。
「ここは葵の神殿の集落です。」
葵の神殿……?神殿は一つじゃないのか?………ん?なぜ俺は今…一つって思った?
「あなたの名前…教えてもらえますか?」
名前……俺は……俺の名は………マ……
「……マ……」
出てきそうたのだが、思い出せない。…ジ?……ジャ?
「どこから……来ました?」
「………どこ…………?……」
どこ……どこから……?んんん?
俺の中にぽっかりと穴が空いているようだ。頭が痛い。考えても、考えても、思い出せない。
「これは、あなたの物ですね。ここに刻まれた、『マ・ラ・ジャ』とはあなたの名前ですか?」
「…わか…ら…ない…」
差し出された物に見覚えはない。刻まれた文字が自分の名前なのかわからないが、聞き覚えがある響きであるのは確かだ。
「マラジャ……」
呼び掛ける声に答えるように、繰り返してみた。
「マ……ジャ?…」
まだ、かすれてうまく声が出ない。
「マラジャ…」
もう一度彼女が呼び掛ける。
「マ……ラ……ジャ……」
俺は何度か繰り返す。口にする度に、それはしっくり馴染んで、自分の名前であると思われた。俺の名は『マラジャ』だ。
「目が覚めたって!?」
部屋に飛び込んできた女の子。彼女には見覚えがある。何だか嬉しくなってずっと彼女の顔を見ていると、みるみる真っ赤になった彼女の口が『よかった』と動くのが見えた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
公爵家に生まれて初日に跡継ぎ失格の烙印を押されましたが今日も元気に生きてます!
小択出新都
ファンタジー
異世界に転生して公爵家の娘に生まれてきたエトワだが、魔力をほとんどもたずに生まれてきたため、生後0ヶ月で跡継ぎ失格の烙印を押されてしまう。
跡継ぎ失格といっても、すぐに家を追い出されたりはしないし、学校にも通わせてもらえるし、15歳までに家を出ればいいから、まあ恵まれてるよね、とのんきに暮らしていたエトワ。
だけど跡継ぎ問題を解決するために、分家から同い年の少年少女たちからその候補が選ばれることになり。
彼らには試練として、エトワ(ともたされた家宝、むしろこっちがメイン)が15歳になるまでの護衛役が命ぜられることになった。
仮の主人というか、実質、案山子みたいなものとして、彼らに護衛されることになったエトワだが、一癖ある男の子たちから、素直な女の子までいろんな子がいて、困惑しつつも彼らの成長を見守ることにするのだった。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜
みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。
…しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた!
「元気に育ってねぇクロウ」
(…クロウ…ってまさか!?)
そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム
「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ
そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが
「クロウ•チューリア」だ
ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う
運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる
"バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う
「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と!
その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ
剣ぺろと言う「バグ技」は
"剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ
この物語は
剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語
(自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!)
しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

異世界無知な私が転生~目指すはスローライフ~
丹葉 菟ニ
ファンタジー
倉山美穂 39歳10ヶ月
働けるうちにあったか猫をタップリ着込んで、働いて稼いで老後は ゆっくりスローライフだと夢見るおばさん。
いつもと変わらない日常、隣のブリっ子後輩を適当にあしらいながらも仕事しろと注意してたら突然地震!
悲鳴と逃げ惑う人達の中で咄嗟に 机の下で丸くなる。
対処としては間違って無かった筈なのにぜか飛ばされる感覚に襲われたら静かになってた。
・・・顔は綺麗だけど。なんかやだ、面倒臭い奴 出てきた。
もう少しマシな奴いませんかね?
あっ、出てきた。
男前ですね・・・落ち着いてください。
あっ、やっぱり神様なのね。
転生に当たって便利能力くれるならそれでお願いします。
ノベラを知らないおばさんが 異世界に行くお話です。
不定期更新
誤字脱字
理解不能
読みにくい 等あるかと思いますが、お付き合いして下さる方大歓迎です。

勇者がアレなので小悪党なおじさんが女に転生されられました
ぽとりひょん
ファンタジー
熱中症で死んだ俺は、勇者が召喚される16年前へ転生させられる。16年で宮廷魔法士になって、アレな勇者を導かなくてはならない。俺はチートスキルを隠して魔法士に成り上がって行く。勇者が召喚されたら、魔法士としてパーティーに入り彼を導き魔王を倒すのだ。

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜
言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。
しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。
それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。
「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」
破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。
気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。
「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。
「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」
学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス!
"悪役令嬢"、ここに爆誕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる