白の衣の神の子孫

キュー

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第二章 見知らぬ土地へ

神殿への道 9

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  目が覚めた。

「目を開けたよ。誰か呼んで来る。」
「………」

  俺の顔を、心配そうに覗き込んでいた若い男性は、目が合った途端立ち上がり離れて行った。代わりに女性が寝ている俺の側に座り、額に手を当てたり、話掛けて来る。

  見たこともない場所に、俺は横たわっていた。体中が痛くて、起き上がれない。喉が乾いた。

「水……」

  自分の口から出たのは小さな声。喉はからからで、声は掠れているので、聞き取れないかと思ったが、首を抱えて起こし、匙に水をすくって口に運んで流し込んでくれる。ゆっくり、少しずつ、水が染み込んでいく。

「私の言葉、わかりますか?」
女性の声に、軽く頷く。
「あなたは、怪我の熱で、ずっと眠っていたのです。」
「…こ…こ……ど…こ……」
彼女は小さな声を聞き取ろうと、俺の口の近くに顔を寄せた。
「ここは葵の神殿の集落です。」

  葵の神殿……?神殿は一つじゃないのか?………ん?なぜ俺は今…一つって思った?

「あなたの名前…教えてもらえますか?」

  名前……俺は……俺の名は………マ……
「……マ……」

  出てきそうたのだが、思い出せない。…ジ?……ジャ?

「どこから……来ました?」
「………どこ…………?……」

  どこ……どこから……?んんん?

  俺の中にぽっかりと穴が空いているようだ。頭が痛い。考えても、考えても、思い出せない。

「これは、あなたの物ですね。ここに刻まれた、『マ・ラ・ジャ』とはあなたの名前ですか?」
「…わか…ら…ない…」

  差し出された物に見覚えはない。刻まれた文字が自分の名前なのかわからないが、聞き覚えがある響きであるのは確かだ。

「マラジャ……」
呼び掛ける声に答えるように、繰り返してみた。
「マ……ジャ?…」
まだ、かすれてうまく声が出ない。
「マラジャ…」
もう一度彼女が呼び掛ける。
「マ……ラ……ジャ……」

俺は何度か繰り返す。口にする度に、それはしっくり馴染んで、自分の名前であると思われた。俺の名は『マラジャ』だ。

「目が覚めたって!?」

  部屋に飛び込んできた女の子。彼女には見覚えがある。何だか嬉しくなってずっと彼女の顔を見ていると、みるみる真っ赤になった彼女の口が『よかった』と動くのが見えた。
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