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第二章 見知らぬ土地へ
神殿への道 5
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少しずつ水を垂らし、乾燥し硬くこびりついた顔の泥をおとす。
「……うっ……ごっ……おぉ…おぅぅ……」
口元の泥を撫でて流すと、咳き込みえずく。それを見てジュジュは吐く?と手を止め眺めると、人は苦しそうな顔をしたがそのまま力を抜き、声にならないが口を何度か開閉する。
「の・む?み・ず、」
言葉が通じるのかわからないが、ゆっくり声をかけてみる。言葉は通じているのか、水を欲しがっているように見える。
「…」
口にめがけて水を細く落とすが、はくはくと口を動かすだけで、中に入っていないようで飲めないようだ。体を仰向けに出来たらいいのだが、重くて持ち上がらない。顔を横に向けた状態のままどうにかしなければならない。集落まで助けを呼びに行くにしても、その間に死んでしまいはしないか?
困ったなと、首を傾げ、小さい頃病気になった自分に母がよくしてくれた方法を使おうとジュジュは思った。
水の入った革袋を片手に持ったまま、片手で俯せの男の肩を持ち上げるように力を込める。僅かに浮かんだ隙間に膝をねじ込んだ。水を口に含み、僅かに自由になった男の顔の顎を掴んでみずからの顔を近付ける。
「…うっ………」
唇にざらりと砂の感触。水を流し込んだ瞬間男はゴホゴホと口の中の水を吐き出した。
「んっんんっ……もう、一度。」
何度か繰り返し、少しずつ呑み込む事が出来るようになった。
「……あ…あり…がとう……」
言葉は通じるようだ。
「よかった。言葉わかる?少し楽になった?」
少し頭を動かし、男は返事をする。
「あなたの名前、教えて?」
「…名前……」
ゆっくり瞼を上げる。ジュジュを見つめる瞳は赤い宝石の色。
……神様の色……
ジュジュは彼女の持つ宝石の色は神様の瞳の色と母から聞いている。この人は神様の子なのかもしれないと思った。
「動ける?」
「………少しなら…………」
起き上がろうとしたが、手足が思うように動かないようだ。ジュジュが手を貸し、痛みを堪えて森に移動をする。木の幹にもたれて座る。
「水を。」
動くと体に激痛が走るようで、苦しそうに呻く。ジュジュが革袋を傾けて口へ水を流す。ようやく喉を鳴らしてまとまった量の水を飲み終え、長く息を吐いた。
「助けを呼んでくる、あなたここで待つ。いい?」
男は頷き、目を閉じた。
ジュジュは集落の男衆を呼びに走り、ジュジュと同じくらいの身の丈で体は小さいが力はある。五人ほどで担ぎ上げ、川まで運んで体の泥を落とした。
「オレはギギ。…名前……聞いてなかったな、何て呼べばいいか?」
若い男衆のリーダーが聞いた。
「……思い出せない……」
泥を落とし、綺麗になった白い髪を指で梳っていたジュジュの手が止まる。
「覚えていない?」
「何も……名前も……覚えていない。」
ジュジュと周りの男衆は顔を見合わせた。
「村に連れて行こう。怪我の手当てをしなきゃな……」
「……うっ……ごっ……おぉ…おぅぅ……」
口元の泥を撫でて流すと、咳き込みえずく。それを見てジュジュは吐く?と手を止め眺めると、人は苦しそうな顔をしたがそのまま力を抜き、声にならないが口を何度か開閉する。
「の・む?み・ず、」
言葉が通じるのかわからないが、ゆっくり声をかけてみる。言葉は通じているのか、水を欲しがっているように見える。
「…」
口にめがけて水を細く落とすが、はくはくと口を動かすだけで、中に入っていないようで飲めないようだ。体を仰向けに出来たらいいのだが、重くて持ち上がらない。顔を横に向けた状態のままどうにかしなければならない。集落まで助けを呼びに行くにしても、その間に死んでしまいはしないか?
困ったなと、首を傾げ、小さい頃病気になった自分に母がよくしてくれた方法を使おうとジュジュは思った。
水の入った革袋を片手に持ったまま、片手で俯せの男の肩を持ち上げるように力を込める。僅かに浮かんだ隙間に膝をねじ込んだ。水を口に含み、僅かに自由になった男の顔の顎を掴んでみずからの顔を近付ける。
「…うっ………」
唇にざらりと砂の感触。水を流し込んだ瞬間男はゴホゴホと口の中の水を吐き出した。
「んっんんっ……もう、一度。」
何度か繰り返し、少しずつ呑み込む事が出来るようになった。
「……あ…あり…がとう……」
言葉は通じるようだ。
「よかった。言葉わかる?少し楽になった?」
少し頭を動かし、男は返事をする。
「あなたの名前、教えて?」
「…名前……」
ゆっくり瞼を上げる。ジュジュを見つめる瞳は赤い宝石の色。
……神様の色……
ジュジュは彼女の持つ宝石の色は神様の瞳の色と母から聞いている。この人は神様の子なのかもしれないと思った。
「動ける?」
「………少しなら…………」
起き上がろうとしたが、手足が思うように動かないようだ。ジュジュが手を貸し、痛みを堪えて森に移動をする。木の幹にもたれて座る。
「水を。」
動くと体に激痛が走るようで、苦しそうに呻く。ジュジュが革袋を傾けて口へ水を流す。ようやく喉を鳴らしてまとまった量の水を飲み終え、長く息を吐いた。
「助けを呼んでくる、あなたここで待つ。いい?」
男は頷き、目を閉じた。
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「……思い出せない……」
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「覚えていない?」
「何も……名前も……覚えていない。」
ジュジュと周りの男衆は顔を見合わせた。
「村に連れて行こう。怪我の手当てをしなきゃな……」
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