白の衣の神の子孫

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第一章 神の子孫

藤黄の衣 21

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  ト・トは南部は度々訪れるため、「またすぐ会えるよ、これは君が持っていて。」と言って、彼が神様の絵だと言った……その絵をアークの手に握らせた。アークは礼を言ってそれを上着の内ポケットに入れる。そして、カークとその家族に別れを告げ、屋敷を出た。

「少し、疲れたね。」
アークは歩きながらトラネク家で会った個性的な人々を思い出していた。
「ああ。俺は今まで通り……関わるつもりはないが、お前は気にすることないからな。」
父ルーイはそう言い、先にずんずん歩いて行った。いつもより少し胸を張ったその後ろ姿は、少し楽し気に見えた。
「一杯飲んで帰るか?」
ルーイが振り返り言う。
  明日は早いが、少しくらいなら良いだろう。
「いいね、行こうか。」
あまり酒に強くないルーイは、普段仕事仲間と飲みに出ることはない。だが、休暇で息子が帰ってくると、父親の義務とでも思っているのか、飲みに誘ってくるのだ。それは、早くに妻を亡くしたために、我が子の母のいない寂しさを埋めるためと、自らが知らぬ親子のふれあいを不器用ながら息子に与えたいと思っているためなのだろう。工房の同僚の子が幼い時は何をして遊んでやったか聞いてきては同じように遊びに誘い、恋の話しの相談を受けたと聞くと、アークに好きな娘はいないのかと聞いてアドバイスをしようとするが空回りし、息子が成人したら一緒に酒を飲むと聞くと、同じようにアークを酒場へ連れていって先に酔いつぶれた。アークは思春期のわずかな期間を除き、そんな父親の気持ちに付き合っている。
「そういえば、モーナとは連絡取り合っているのかい?」
何年か前に付き合っていた彼女の名前が出てきた。
「モーナとは、ずいぶん前に別れたよ。」
「そうか。やっぱり遠距離はダメだったか。」
「そうだね。近くにいて優しくしてくれる彼の方がいいとさ。」
アークはモテないわけではないのだ。学生の頃から、彼女の不在の期間の方が短いくらいだ。
「まあ、気を落とすな。南の美女になぐさめてもらえ。」
  
「あれ?アークじゃん?」
二人に声を掛けたのは、ルーイの同僚の息子。同性で歳が近いためよく一緒に遊んでいた幼馴染だ。
「仕事終わり?」
「ああ。帰ってたなら、連絡しろよ。お?上衣が変わってるじゃん。昇進か?やるなあ。」
「一緒に飲むか?」
「そうだな。少しだけ付き合おうか。」

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