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第一章 神の子孫
藤黄の衣 20
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「はい……これ…です……」
息を切らして戻ってきたト・トが両手で差し出したのは、片方の手にすっぽり収まるほどの長方形の小さくて薄い石板。いや、石板の様なものである。その表面は凹凸がなく艶やかで、男性の上半身が描かれている。
「これはアーク君じゃないのか?」
カークは、アークの顔と手の中の姿を見比べ、驚きの声を上げる。
「いいえ、信じられないでしょうが、これを手にいれたのは、なんと!二十年も前なのです!」
「……何ですか……これは……この服装はどこのものでしょう。」
それの中央に描かれた男性は、見たこともない白い服と帽子で身を包み微笑んでいた。張りのある褐色の肌に白い髪。その前髪は額の真ん中で左右に分けられ、瑞々しい唇は微笑むようにゆるくカーブを描き、印象的な赤い瞳は、手を伸ばせば触れられそうな錯覚をおこさせる。まるでそこに生きて存在するかのような、本物そっくりの絵だ。
「似ているなんてものじゃない…そのものだよ。これは。」
「これが、南の降り立った神様の姿なのですか?」
「そう!そうなんだ!これこそ、神様の姿。名のある姿絵師でも、ここまで息づかいを感じるように表現された姿絵はないし、触ってもらえばわかるように、出回っている姿絵のような絵の具が使われていないんだよ!」
「確かに…」
軽く爪を立てても、爪に引っ掛かることはない。表面には絵の具がない。横から目を細めて、じっと表面を眺めるカークは、不思議だ、と繰り返すばかり。
「それに、これは何でできているのか?……石板なのか?」
「いや、ちがう。固いが…ほら、わずかに曲げることができ、しかも元に戻る。石ならこの薄さだ、割れてしまうんじゃないかな?だが、この薄さは……素晴らしい技術だ……どこで作られたのか………」
「南部の遺跡の発掘に行った時、近くの街の古道具屋で、見つけたんだ。ずいぶん汚れていて、誰も見向きもしなかったけれど、見た瞬間、ピンときたんだ。手に入れて、汚れを丁寧に落としたら……現れた姿が、まさに、神様!伝わっている条件に全て当てはまる!褐色の肌、白髪、朱色の瞳!そしてアーク君は同じくその全てを持っている!二十年前には気づかなかったが、成長し、今の君はこの絵とそっくりになったじゃないか。間違いない、神の子孫だ!いや、生まれ変わりなのかもしれない!」
「いや、たまたま、同じ配色だから、似ているように見えるだけですよ。飛躍しすぎです……」
アークはト・トの高くなっていくテンションに何だかうさんくささを感じて、逆に気持ちが冷えていくのを感じた。生まれ変わりとか、ありえない。
息を切らして戻ってきたト・トが両手で差し出したのは、片方の手にすっぽり収まるほどの長方形の小さくて薄い石板。いや、石板の様なものである。その表面は凹凸がなく艶やかで、男性の上半身が描かれている。
「これはアーク君じゃないのか?」
カークは、アークの顔と手の中の姿を見比べ、驚きの声を上げる。
「いいえ、信じられないでしょうが、これを手にいれたのは、なんと!二十年も前なのです!」
「……何ですか……これは……この服装はどこのものでしょう。」
それの中央に描かれた男性は、見たこともない白い服と帽子で身を包み微笑んでいた。張りのある褐色の肌に白い髪。その前髪は額の真ん中で左右に分けられ、瑞々しい唇は微笑むようにゆるくカーブを描き、印象的な赤い瞳は、手を伸ばせば触れられそうな錯覚をおこさせる。まるでそこに生きて存在するかのような、本物そっくりの絵だ。
「似ているなんてものじゃない…そのものだよ。これは。」
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「そう!そうなんだ!これこそ、神様の姿。名のある姿絵師でも、ここまで息づかいを感じるように表現された姿絵はないし、触ってもらえばわかるように、出回っている姿絵のような絵の具が使われていないんだよ!」
「確かに…」
軽く爪を立てても、爪に引っ掛かることはない。表面には絵の具がない。横から目を細めて、じっと表面を眺めるカークは、不思議だ、と繰り返すばかり。
「それに、これは何でできているのか?……石板なのか?」
「いや、ちがう。固いが…ほら、わずかに曲げることができ、しかも元に戻る。石ならこの薄さだ、割れてしまうんじゃないかな?だが、この薄さは……素晴らしい技術だ……どこで作られたのか………」
「南部の遺跡の発掘に行った時、近くの街の古道具屋で、見つけたんだ。ずいぶん汚れていて、誰も見向きもしなかったけれど、見た瞬間、ピンときたんだ。手に入れて、汚れを丁寧に落としたら……現れた姿が、まさに、神様!伝わっている条件に全て当てはまる!褐色の肌、白髪、朱色の瞳!そしてアーク君は同じくその全てを持っている!二十年前には気づかなかったが、成長し、今の君はこの絵とそっくりになったじゃないか。間違いない、神の子孫だ!いや、生まれ変わりなのかもしれない!」
「いや、たまたま、同じ配色だから、似ているように見えるだけですよ。飛躍しすぎです……」
アークはト・トの高くなっていくテンションに何だかうさんくささを感じて、逆に気持ちが冷えていくのを感じた。生まれ変わりとか、ありえない。
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