17 / 81
第一章 神の子孫
藤黄の衣 16
しおりを挟む
「行き先は南部の街だよね。」
明日出発するのは、南の国境を守る辺境伯の領地。新たに配属される騎士を引き連れて目的の地に向かう。着任後引き継ぎを済ませると、王都に戻る騎士達は出発する。
「はい。南の国境はまだ行ったことがありません。大きな河があるそうですね。船に乗るのを楽しみにしているんですよ。」
地方勤務が多かったアークは主に北部中心に配属されていたので、南部の街はもちろん、大きな船に乗るのも初めてだ。
「南は果物が旨いぞ。それと、美人が多い。」
「それは、楽しみですね。」
「前任は高齢だと聞いている。アークのような若者が団長なら、モテモテだな?たわわに実る果実を美味しくいただいて……おおっと、恋人にバレたら大変だが、なあに、王都からはえらく遠いからバレはせんだろうがな。」
ガハハと笑うカークに対して、苦笑するアーク。
「今は、気にするような相手はおりませんから。」
残念ながら…と付け加える。いや残念ではない、気にする相手がいないのだから遠慮することなく秋波を送る美女達と付き合えば良いのだ。
「やや、そうだったのか?なら、知り合いのお嬢さんを……人族が好みか?たしかベクトんとこの嬢が年頃だったな……猫系もいいが兎系も可愛ぞ?気の強い美人寅系なんてのも……」
アークが顔の前ぶんぶん手を振って止めてくださいと訴えても、見かけによらず奥手か?と候補の女性を提案するカーク。
「ま、待ってください。今から辺境勤めなのに紹介なんかしたらダメですって。この先五年は、辺境暮らしで……いやもっとかも……帰って来ないと思うし………」
「だから、一緒に連れて行って、子どもでも作れば退屈しないだろう?」
額に手を当てて、アークは唸った。どうしてこんなにも見合い話を押してくるんだ。なんだかつい先日も似たような会話をした気がする。
「もっと早くに気がついていたらなぁ……出発迄に会う段取りできたのに。良さそうな娘の姿絵を送ろう。うん。任せておけ、気に入った娘を知らせてくれれば、縁談をまとめてやるからな。」
嬉しげな顔で一方的にしゃべり頷くカークに、止めてくださいと頼んでいる最中に予告無く扉が開いた。
「え?」
二人が同時に入ってきた人物を見る。
「俺も南に連れて行ってはもらえないだろうか!?」
「はあ?」
アークが初めて会うその人物は……
「ト・トいきなり、失礼だぞ?」
明日出発するのは、南の国境を守る辺境伯の領地。新たに配属される騎士を引き連れて目的の地に向かう。着任後引き継ぎを済ませると、王都に戻る騎士達は出発する。
「はい。南の国境はまだ行ったことがありません。大きな河があるそうですね。船に乗るのを楽しみにしているんですよ。」
地方勤務が多かったアークは主に北部中心に配属されていたので、南部の街はもちろん、大きな船に乗るのも初めてだ。
「南は果物が旨いぞ。それと、美人が多い。」
「それは、楽しみですね。」
「前任は高齢だと聞いている。アークのような若者が団長なら、モテモテだな?たわわに実る果実を美味しくいただいて……おおっと、恋人にバレたら大変だが、なあに、王都からはえらく遠いからバレはせんだろうがな。」
ガハハと笑うカークに対して、苦笑するアーク。
「今は、気にするような相手はおりませんから。」
残念ながら…と付け加える。いや残念ではない、気にする相手がいないのだから遠慮することなく秋波を送る美女達と付き合えば良いのだ。
「やや、そうだったのか?なら、知り合いのお嬢さんを……人族が好みか?たしかベクトんとこの嬢が年頃だったな……猫系もいいが兎系も可愛ぞ?気の強い美人寅系なんてのも……」
アークが顔の前ぶんぶん手を振って止めてくださいと訴えても、見かけによらず奥手か?と候補の女性を提案するカーク。
「ま、待ってください。今から辺境勤めなのに紹介なんかしたらダメですって。この先五年は、辺境暮らしで……いやもっとかも……帰って来ないと思うし………」
「だから、一緒に連れて行って、子どもでも作れば退屈しないだろう?」
額に手を当てて、アークは唸った。どうしてこんなにも見合い話を押してくるんだ。なんだかつい先日も似たような会話をした気がする。
「もっと早くに気がついていたらなぁ……出発迄に会う段取りできたのに。良さそうな娘の姿絵を送ろう。うん。任せておけ、気に入った娘を知らせてくれれば、縁談をまとめてやるからな。」
嬉しげな顔で一方的にしゃべり頷くカークに、止めてくださいと頼んでいる最中に予告無く扉が開いた。
「え?」
二人が同時に入ってきた人物を見る。
「俺も南に連れて行ってはもらえないだろうか!?」
「はあ?」
アークが初めて会うその人物は……
「ト・トいきなり、失礼だぞ?」
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?
青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。
けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの?
中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~
eggy
ファンタジー
もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。
村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。
ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。
しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。
まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。
幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。
「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜
みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。
…しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた!
「元気に育ってねぇクロウ」
(…クロウ…ってまさか!?)
そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム
「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ
そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが
「クロウ•チューリア」だ
ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う
運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる
"バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う
「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と!
その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ
剣ぺろと言う「バグ技」は
"剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ
この物語は
剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語
(自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!)
しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

勇者がアレなので小悪党なおじさんが女に転生されられました
ぽとりひょん
ファンタジー
熱中症で死んだ俺は、勇者が召喚される16年前へ転生させられる。16年で宮廷魔法士になって、アレな勇者を導かなくてはならない。俺はチートスキルを隠して魔法士に成り上がって行く。勇者が召喚されたら、魔法士としてパーティーに入り彼を導き魔王を倒すのだ。
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる