白の衣の神の子孫

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第一章 神の子孫

藤黄の衣 16

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「行き先は南部の街だよね。」
明日出発するのは、南の国境を守る辺境伯の領地。新たに配属される騎士を引き連れて目的の地に向かう。着任後引き継ぎを済ませると、王都に戻る騎士達は出発する。
「はい。南の国境はまだ行ったことがありません。大きな河があるそうですね。船に乗るのを楽しみにしているんですよ。」
地方勤務が多かったアークは主に北部中心に配属されていたので、南部の街はもちろん、大きな船に乗るのも初めてだ。
「南は果物が旨いぞ。それと、美人が多い。」
「それは、楽しみですね。」
「前任は高齢だと聞いている。アークのような若者が団長なら、モテモテだな?たわわに実る果実を美味しくいただいて……おおっと、恋人にバレたら大変だが、なあに、王都からはえらく遠いからバレはせんだろうがな。」
ガハハと笑うカークに対して、苦笑するアーク。
「今は、気にするような相手はおりませんから。」
残念ながら…と付け加える。いや残念ではない、気にする相手がいないのだから遠慮することなく秋波を送る美女達と付き合えば良いのだ。
「やや、そうだったのか?なら、知り合いのお嬢さんを……人族が好みか?たしかベクトんとこの嬢が年頃だったな……猫系もいいが兎系も可愛ぞ?気の強い美人寅系なんてのも……」
アークが顔の前ぶんぶん手を振って止めてくださいと訴えても、見かけによらず奥手か?と候補の女性を提案するカーク。
「ま、待ってください。今から辺境勤めなのに紹介なんかしたらダメですって。この先五年は、辺境暮らしで……いやもっとかも……帰って来ないと思うし………」
「だから、一緒に連れて行って、子どもでも作れば退屈しないだろう?」
額に手を当てて、アークは唸った。どうしてこんなにも見合い話を押してくるんだ。なんだかつい先日も似たような会話をした気がする。
「もっと早くに気がついていたらなぁ……出発迄に会う段取りできたのに。良さそうな娘の姿絵を送ろう。うん。任せておけ、気に入った娘を知らせてくれれば、縁談をまとめてやるからな。」
嬉しげな顔で一方的にしゃべり頷くカークに、止めてくださいと頼んでいる最中に予告無く扉が開いた。
「え?」
二人が同時に入ってきた人物を見る。
「俺も南に連れて行ってはもらえないだろうか!?」
「はあ?」
アークが初めて会うその人物は……

「ト・トいきなり、失礼だぞ?」



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