白の衣の神の子孫

キュー

文字の大きさ
上 下
12 / 81
第一章 神の子孫

藤黄の衣 11

しおりを挟む
  俯いていたルーイが顔を上げたのと同時にノックの音が室内に響いた。会話はその合図で中断された。
「親父、いいか?」
ノックの音の後に声が掛けられる。許可を待たずに扉が開けられた。
「ザ・ザ、ダ・ダ、二人だけか?……ト・トは来なかったのか?」
アークはカークとは何度も会っているが、他の親族とは初めて会う。身長がアークの半分程の小柄な二人は落ち着きなく視線を小刻みに動かし、緊張しているのが見て分かる。

  カークにはルーイを含めて、六人の子どもがいる。産まれた順に、長女シュ・シュ、長男ザ・ザ、次男ダ・ダ、三男ト・ト、次女ミ・ミ、そして四男ルーイである。目の前の二人は父親によく似ていて、頭の上部に三角の耳がある猫系獣人。細長い尻尾がふるりと揺れた。

「ト・トは後で来ます。」
二人はルーイとアークをチラリと見上げて、直ぐに下に視線を反らし、居心地悪そうに身体を動かした。
「ザ・ザ?……ダ・ダ?」
促すように声を掛けるカークに、お前言えよ、いやいやお前が言えよ、とぐずぐずと二人の間でやりとりをしている。
「初めてまして、マ・アーク・ジャジャと申します。父のお兄様方ですよね。」
アークが一歩前に踏み出し、空気を一変させ、話す切っ掛けを作るために名乗る。
「あっ…」
あー、先越されてやがる、とカークがクスッと笑い、慌てたように、初めて会う甥っ子に向き合う二人。
「よろしくお願いします。」
藤黄の衣に相応しい態度で、礼儀正しく右手を先にザ・ザに差し出した。紹介する前だったが、カークの視線と言葉により、二人の名前やどちらが年長であるかを読み取っていた。
「今日は出立前の挨拶に参りました。」
続けてダ・ダとも握手をする。
「アークは見ての通り、藤黄に昇進して、明日任地に出発するそうだ。そうそう、あちらの部屋に祝いの品を用意している。一緒に……」
カークはアークを連れて部屋を出てしまった。

後には、気まずい三人が残された。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

伯爵夫人のお気に入り

つくも茄子
ファンタジー
プライド伯爵令嬢、ユースティティアは僅か二歳で大病を患い入院を余儀なくされた。悲しみにくれる伯爵夫人は、遠縁の少女を娘代わりに可愛がっていた。 数年後、全快した娘が屋敷に戻ってきた時。 喜ぶ伯爵夫人。 伯爵夫人を慕う少女。 静観する伯爵。 三者三様の想いが交差する。 歪な家族の形。 「この家族ごっこはいつまで続けるおつもりですか?お父様」 「お人形遊びはいい加減卒業なさってください、お母様」 「家族?いいえ、貴方は他所の子です」 ユースティティアは、そんな家族の形に呆れていた。 「可愛いあの子は、伯爵夫人のお気に入り」から「伯爵夫人のお気に入り」にタイトルを変更します。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

ヤクザと捨て子

幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子 ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。 ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。

竜帝と番ではない妃

ひとみん
恋愛
水野江里は異世界の二柱の神様に魂を創られた、神の愛し子だった。 別の世界に産まれ、死ぬはずだった江里は本来生まれる世界へ転移される。 そこで出会う獣人や竜人達との縁を結びながらも、スローライフを満喫する予定が・・・ ほのぼの日常系なお話です。設定ゆるゆるですので、許せる方のみどうぞ!

異世界楽々通販サバイバル

shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。 近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。 そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。 そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。 しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。 「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」

処理中です...