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第一章 神の子孫
藤黄の衣 11
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俯いていたルーイが顔を上げたのと同時にノックの音が室内に響いた。会話はその合図で中断された。
「親父、いいか?」
ノックの音の後に声が掛けられる。許可を待たずに扉が開けられた。
「ザ・ザ、ダ・ダ、二人だけか?……ト・トは来なかったのか?」
アークはカークとは何度も会っているが、他の親族とは初めて会う。身長がアークの半分程の小柄な二人は落ち着きなく視線を小刻みに動かし、緊張しているのが見て分かる。
カークにはルーイを含めて、六人の子どもがいる。産まれた順に、長女シュ・シュ、長男ザ・ザ、次男ダ・ダ、三男ト・ト、次女ミ・ミ、そして四男ルーイである。目の前の二人は父親によく似ていて、頭の上部に三角の耳がある猫系獣人。細長い尻尾がふるりと揺れた。
「ト・トは後で来ます。」
二人はルーイとアークをチラリと見上げて、直ぐに下に視線を反らし、居心地悪そうに身体を動かした。
「ザ・ザ?……ダ・ダ?」
促すように声を掛けるカークに、お前言えよ、いやいやお前が言えよ、とぐずぐずと二人の間でやりとりをしている。
「初めてまして、マ・アーク・ジャジャと申します。父のお兄様方ですよね。」
アークが一歩前に踏み出し、空気を一変させ、話す切っ掛けを作るために名乗る。
「あっ…」
あー、先越されてやがる、とカークがクスッと笑い、慌てたように、初めて会う甥っ子に向き合う二人。
「よろしくお願いします。」
藤黄の衣に相応しい態度で、礼儀正しく右手を先にザ・ザに差し出した。紹介する前だったが、カークの視線と言葉により、二人の名前やどちらが年長であるかを読み取っていた。
「今日は出立前の挨拶に参りました。」
続けてダ・ダとも握手をする。
「アークは見ての通り、藤黄に昇進して、明日任地に出発するそうだ。そうそう、あちらの部屋に祝いの品を用意している。一緒に……」
カークはアークを連れて部屋を出てしまった。
後には、気まずい三人が残された。
「親父、いいか?」
ノックの音の後に声が掛けられる。許可を待たずに扉が開けられた。
「ザ・ザ、ダ・ダ、二人だけか?……ト・トは来なかったのか?」
アークはカークとは何度も会っているが、他の親族とは初めて会う。身長がアークの半分程の小柄な二人は落ち着きなく視線を小刻みに動かし、緊張しているのが見て分かる。
カークにはルーイを含めて、六人の子どもがいる。産まれた順に、長女シュ・シュ、長男ザ・ザ、次男ダ・ダ、三男ト・ト、次女ミ・ミ、そして四男ルーイである。目の前の二人は父親によく似ていて、頭の上部に三角の耳がある猫系獣人。細長い尻尾がふるりと揺れた。
「ト・トは後で来ます。」
二人はルーイとアークをチラリと見上げて、直ぐに下に視線を反らし、居心地悪そうに身体を動かした。
「ザ・ザ?……ダ・ダ?」
促すように声を掛けるカークに、お前言えよ、いやいやお前が言えよ、とぐずぐずと二人の間でやりとりをしている。
「初めてまして、マ・アーク・ジャジャと申します。父のお兄様方ですよね。」
アークが一歩前に踏み出し、空気を一変させ、話す切っ掛けを作るために名乗る。
「あっ…」
あー、先越されてやがる、とカークがクスッと笑い、慌てたように、初めて会う甥っ子に向き合う二人。
「よろしくお願いします。」
藤黄の衣に相応しい態度で、礼儀正しく右手を先にザ・ザに差し出した。紹介する前だったが、カークの視線と言葉により、二人の名前やどちらが年長であるかを読み取っていた。
「今日は出立前の挨拶に参りました。」
続けてダ・ダとも握手をする。
「アークは見ての通り、藤黄に昇進して、明日任地に出発するそうだ。そうそう、あちらの部屋に祝いの品を用意している。一緒に……」
カークはアークを連れて部屋を出てしまった。
後には、気まずい三人が残された。
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