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第一章 神の子孫
藤黄の衣 10
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トラネクの屋敷を訪れ、アークは父と共に主人のカークと対面する。
「アーク。これを。」
ルーイは父から受け取った古いペンダントを手渡した。
深い赤の小さな宝石をとりつけた台座は時間の経過を感じさせる少し鈍い色合いだったが、首にかける鎖の方は新しい物と見え、曇りのない輝きで不釣り合いに見えた。
目の前の赤い宝石はアークでも知っている。『神の瞳』と呼ばれる高価な宝石。
「アークの瞳の色と同じだな。」
アークは親指と人差し指でつまみ上げて光にかざす。内部に入り込んだ光がキラキラとオレンジ色に輝く。
綺麗だ……アークの手に光る宝石も……それを見つめる赤い瞳も……
カークはほんの少しの間、目を細めて孫を見上げる。
「昔集落を出るときにもらった物でな。妻にプロポーズする時に贈った。まだ一人前じゃなかった私の持っていた唯一の財産だったから。」
「そんな大切な物を……」
カークの言葉に、会うことのなかった祖母はどんな人だったのだろうと、アークは思う。祖父と同じ猫系の獣人。姿絵を手渡され、優しく微笑む女性を見る。この華奢な女性から父が産まれたとは、信じられないが、もし自分に兄弟がいたなら、耳や尻尾を持って産まれたのだろうか…… 父は生まれにくい人型で、その息子アークも人型。これは一族の中では珍しいことなのだという。しかし、アークは、伝え聞く白髪に朱眼の神と同じ色を持つと言われ、神の子孫などと呼ばれても、他の人と比べて変わった所はなくて、自分が特別な存在だとは思えなかった。その神の神殿がどこにあるのかわからないのだから、その神が本当にその地に降り立ったなど疑わしいと思う。
「……いや、実は……ルーイが家を出る時に渡すつもりだったんだが……渡せないまま……今まで……」
カークの意外な言葉に、ずっと黙って俯いていたルーイが顔を上げた。
「アーク。これを。」
ルーイは父から受け取った古いペンダントを手渡した。
深い赤の小さな宝石をとりつけた台座は時間の経過を感じさせる少し鈍い色合いだったが、首にかける鎖の方は新しい物と見え、曇りのない輝きで不釣り合いに見えた。
目の前の赤い宝石はアークでも知っている。『神の瞳』と呼ばれる高価な宝石。
「アークの瞳の色と同じだな。」
アークは親指と人差し指でつまみ上げて光にかざす。内部に入り込んだ光がキラキラとオレンジ色に輝く。
綺麗だ……アークの手に光る宝石も……それを見つめる赤い瞳も……
カークはほんの少しの間、目を細めて孫を見上げる。
「昔集落を出るときにもらった物でな。妻にプロポーズする時に贈った。まだ一人前じゃなかった私の持っていた唯一の財産だったから。」
「そんな大切な物を……」
カークの言葉に、会うことのなかった祖母はどんな人だったのだろうと、アークは思う。祖父と同じ猫系の獣人。姿絵を手渡され、優しく微笑む女性を見る。この華奢な女性から父が産まれたとは、信じられないが、もし自分に兄弟がいたなら、耳や尻尾を持って産まれたのだろうか…… 父は生まれにくい人型で、その息子アークも人型。これは一族の中では珍しいことなのだという。しかし、アークは、伝え聞く白髪に朱眼の神と同じ色を持つと言われ、神の子孫などと呼ばれても、他の人と比べて変わった所はなくて、自分が特別な存在だとは思えなかった。その神の神殿がどこにあるのかわからないのだから、その神が本当にその地に降り立ったなど疑わしいと思う。
「……いや、実は……ルーイが家を出る時に渡すつもりだったんだが……渡せないまま……今まで……」
カークの意外な言葉に、ずっと黙って俯いていたルーイが顔を上げた。
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