白の衣の神の子孫

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第一章 神の子孫

藤黄の衣 3

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「少しはゆっくりできるのか?出発はいつだ?」
「ソ・ルーシェ辺境伯の領地は遠いからな、準備に三日で出発する。」
「そうか、明日は休みにしたから、一緒に買い物に出よう。」
「ありがとう。父さん。…明後日は祖父に挨拶に行こうと思うが、どうする?」
手に持った杯を食卓に置き、ルーイは静かに首を振った。生家を飛び出してもう何年たつだろう。同じ街に住むというのに、未だ近付こうともしない。それだけ蟠りが大きいのだろう。
「じゃあ、俺だけ挨拶して……」
「いや、やっぱり俺も行くよ。」
少し悲しそうな顔をする父に、無理はしなくていいよ……とアークは声を掛け、空になった杯を突き出した。

  アークの祖父カークは伝え聞いた王都に憧れていた。一族が住む地を独り離れ街に出て職を探している時に、知り合った娘の実家が偶然にも商家で、頼み込んで雇ってもらった。
  カークは見た目は猫系獣人で商家の主が猫の系統の獣人であったこともあり、住み込みで必死に働く姿を認められ、気に入られたという。祖父は商家の娘と結婚し、子沢山の獣人の例に漏れず、何人も子どもを授かった。商売繁盛、家庭円満だったがルーイを身ごもったことで、一変する。
  小柄な獣人の母の腹は日に日に、大きくなる。カークはそれを見て確信した。この子は人族の姿をしているに違いないと。
  見かけは猫系の獣人族であるため、同族と思われ、確認されなかったからつい、話していなかった。純血でない混ざりの一族のであることを。まれに人族型の子が生まれることを。結婚する前に、伝えておくべきだったのに。

  カークは子どもの頃、集落で人族型の出産があった。聞いていた通りに難産で、大人が総出で手伝いに行った。子ども達は総長の家に集められ、年長の子に世話されながら、その緊張の夜を不安で震えながら丸まって塊になって過ごした。
  赤子とはいえ、獣人よりもはるかに大きい人の子だ。母体の負担は大きい。

  産まれた子を見てショックを受けてはいけないと、カークは妻に話す前に義理の父に告白した。義理の父はカークをひどくなじり、もしもの事があれば只では済まさないと、激昂した。
  さんざん悩んだが、妻に祖先に人族がおり、お腹の子は多分人型の子であろうと告げた。
  驚いていたようだったが、意外にも取り乱したりせず、腹を撫でながら、無事に生まれる事を祈っているようだった。腹を蹴るその元気な子には何の罪もないと、もしも自分が命を落としても、夫は悪くないと言い、子どもを育てて欲しいと父とカークに頼む。

   産み月を待たずに出産した。命を落とすことはなかったが、床から起き上がることが出来なくなった。乳を含ませ、元気に育つように子守唄を歌って寝かしつける。

  兄や姉は形の違う子どもをどうしても弟として、認められなかった。母の体を壊した人の子に親しみを持てず、気に入らないといつもの兄弟がじゃれあう調子で突き飛ばすと簡単に怪我してしまう。いつまでも赤ちゃんで成長が遅く母を独占してしまうので、誰もルーイに近付かなくなった。
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