告白ー遅くなった男の告白の話ー

第二章求婚

８爆発

「革命の戦士諸君、決行の日がやってきた。」
一段高い台の上で演説するのは、革命の志のリーダー、トレスである。

  コノセルギア国は長く軍部が力を持ち、大将軍が実権を握っていた。貴族は力ある軍部にすりより、民衆に圧政を強いていた。国王はお飾りにすぎず、大将軍の言いなりである。
  今回のアスターネス国の第二王女の輿入れは長く続く両国の同盟をさらに強くする意味もあるのだが、アスターネスの強い軍事力を牽制するためである。

  貴族は贅沢な生活をしていたが、民衆は 高い税金に高い物価。余裕のない生活に学校に通えない子どもたちは働かざるをえない。身分制度による差別と非合法の奴隷は人を人として扱わないひどいものだった。治安が悪くなり、賄賂が横行し、警察にも頼れない。人々が国外に流出し始めると、出国が制限されるようになった。
  人々の不満は徐々に大きくなり、革命家と名乗る者達が現れた。

  和やかな車内で世間話をしていた一行に不幸が訪れる。
  激しい衝撃音とともに、人々の悲鳴があがった。
  運良く姫の乗った車は爆発に巻き込まれずにすんだ。
「!?」
急停止した車の中で、覆い被さり、身を呈して姫を衝撃から守った警護の者が辺りを伺いながら身体をおこす。
「何があったの？」
姫は頭を下げたまま、聞いた。
「襲撃されたようです。」
「移動します。」

  爆発？
  エミリアは外の様子が見えないか少しだけ顔を上げた。しかし直ぐに頭の上に上着のようなものをかけられて、何も見ることができなかった。運転手も怪我がないようで、車をターンさせて安全な場所へ移動を始めた。
  車が動き出してから、エミリアはガタガタ身体が震えはじめた。
「お兄様は…」
兄のマークスが乗っていた車の方から爆発音がしたような気がする。
「どうかご無事で。」

  神に祈りを捧げ、今は自身もけして安全ではないと、肝に命じる。彼女も、これから波瀾に満ちた人生を生きることになるのだが、彼女が再び登場するのは随分先のことであり、この物語では語ることはない。