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第一章出会い

9 楽しんでね

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  美しく飾られた山車に今年の王子と姫が乗り込んだ。街をゆっくりと進み笑顔で手を振る。
「お、王子様、わ、私、足が震えます。」
「急な代役ですまない。僕がついてるから、大丈夫だよ。笑って。」
  震えるファータを心配して、実は手を振る反対の二人の手は繋がれている。ドレスのひだに隠れて外からは見えないが。それによってさらにファータはドキドキ震えているのだが、繋ぐ手は緩まらない。マークスは嬉しくてたまらなくて、思わず顔がニヤケそうになるのだが、長年の王子業で培った…誰もがうっとりするような、上品な微笑みをたやさない。

  山車の側について歩く人の中にハルバートもいた。王子の警護は沢山ついているし、彼はここに控える必要はないのだが、こんな王子の面白い出来事を、顔を、見逃すわけがない。そもそも、こんな都合よく今年の姫の交代が成るわけがないのだ。今年の姫に選ばれた彼女には悪いが、王子のわがままに泣いてもらおう。後で王子がお見舞いに行って、手の一つでもにぎったら、感激してくれるだろう。
  ただ、今は、二人には再会の喜びに浸っててもらおう。

  まだまだ道は長いのだ。王子と一般市民のファータの結婚には沢山の越えねばならない壁があるのだから。
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