ヴァンパイア戦記

瞳の住人

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勇者

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俺は勇者のバリアに攻撃を防がれた後、迷わず敵前逃亡を図る。
牛鬼に続く2回連続2回目の逃亡である。
戦闘前にウィンディーネを召喚したためMPも少なく単独では勝ち目はほぼない。
俺がソロのときは、勝てない戦いをしないのだ。イフリートの置き土産をしたあと、すぐに撤退しよう。

「おい魔王!!逃げる気か!!」

「あぁ。逃げさせてもらうぜ!!勝てそうにないからな。魔王が命じる地獄の住人フリートよ。勇者一行を灰にしたまえ」


「GGGRRRRUUOOOOOOO
               Hellfire Flame!!(地獄の業火)」


脳内から機械音が流れる。
「経験値21,254獲得しました。」


何故経験値取得音が流れる?!仲間を守るため勇者のバリアで地獄の業火を防ぐんじゃないのか?!
まさか……


青い炎の中から、仲間の盗賊王を弾除けの(盾)に使い、無傷の勇者が出てくる。
「魔王死ねぇぇぇぇぇ!!オラァァァァァァ!!」

「ぐっ……」

勇者の剣で俺の右腕が切り落とされる…

「ふはっっ!!手ごたえありぃぃぃぃぃぃぃ!!」

クソ…こいつ、仲間を盾にして俺に攻撃してきやがった…。なんてクソ野郎だ。
盗賊王の息の根は止めたが、俺がかなりのダメージを負ってしまった…。

「魔王!!まだまだ終わらんぞ!邪悪なる魔王を消し去りたまえ【連続剣】」

やばっ…。
「インフェルノ!!」
すかさず勇者の顔面を狙いインフェルノを放ち連続剣を強制停止させた後、再度逃亡する。

「また逃げる気か?俺から逃げることはできない、地の果てまで追ってやる!!」

クソ‥‥‥こいつら、味方本陣へと逃げようとするも、上手く回り込まれて逃げれない。

それでも俺は戦わない。敵本陣の強行突破だ!!
俺は方向転換し、敵本陣へと向かう。

勇者の一行No.2の爺さんが眉をひそめ叫ぶ。
「魔王は、うつけか?!そっちは我らが本陣ぞ?気でも狂ったか」

俺は無視し、全速力で敵本陣へと高速移動する。

敵本陣への逃走のため、勇者一行もそこまで本気で追ってこない。
ドラゴン大帝国の主力部隊がいるため、まさに俺は袋の中のネズミ状態だ。

敵本陣の中で見つけられたらその瞬間終わりだ。
勿論、俺には秘策がある。
それは、【鑑定】を使ってAランクの敵がいる場所へは行かず、雑魚ばかりがいる地点を選んで
目にも止まらぬ速さで移動するというものだ。
Bランク級は微妙であるが、Cランク以下なら、高速移動中の俺を発見することはできないだろう。

 ☆

勇者一行を振り切り、敵本陣へと潜入する……。
【鑑定】を使い強者がいる場所を避け、大回りし、敵と敵の合間を通り抜けて高速移動を行う。

「‥‥…やっぱりだめか。」
ドラゴン大帝国の布陣は、絶妙な間隔で「強者」と「雑魚」が展開されており、何かあると直ちに強者が援護できる布陣となっている。
 雑魚の間を通り抜けて突破しようとしても、最後のところで「強者」に見つかる陣形であり、そこで戦闘となるであろう。そしてその戦闘中に加速度的に援護する敵が増え、Aランク級のドラゴン複数と戦闘となる見込みだ。

「……さすがに、甘くないな‥‥‥。突破もできないし少し休むか」

高速移動で疲れた体力を回復するため、発見した兵舎のような3階建の古い建物に潜伏する。
建物は、狭く地球で言う3F建てのコンビニくらいである。
監視の敵を瞬殺し、中に入ると、牢屋となっており、1体の赤い傷ついたドラゴンが檻の中に入っていた。

さて……叫ばれる前に殺すか……。俺は手に魔力を込める。

「待て。ワシに敵意はない」

「お?!そんなこと信じると思うか?!」

「牢屋に入っている時点で、ドラゴン大帝国の敵であると推定できよう……。そして貴様は強いようだが、監視の兵のように一撃ではワシは死なんぞ?!」

「まぁ……それもそうだな。」

「現在交戦中のジール共和国のスパイに頼むのは気が引けるが、1つ頼みがある」

「あ?!この檻から出せってか?」

「そうじゃない。この【卵】を持って逃げてくれ」

「?!」


卵からとてつもないオーラを感じるぞ……。

鑑定でもするか……鑑定!!


【ドラゴン王の卵】
成長したら最強のステータスを誇るドラゴンの卵
500年に一度の周期で産まれ、神に匹敵する強さを持つ。すべてのドラゴンを従属できるスキルを持つため、この存在を恐れる、既得権益を守りたいドラゴンから命を狙われるため、直近1500年はドラゴン王の卵は孵化する前に壊されている。


「なるほど……【ドラゴン王の卵】か。」

「鑑定持ちか!!話は早いな。【ドラゴン王の卵】の情報を持っているためドラゴン大帝国からワシは毎日拷問を受けている。まぁ情報だけでなく手元に持っているということは今はバレてないが時間の問題だ。頼むこの卵を持って逃げてくれ!!」

「……まぁ卵を持って逃げてやってもいいが、生憎、このドラゴン大帝国の布陣から突破できる策はない」

「そんなことか。ワシの背に乗って突破すればよい。途中戦闘になったらワシが引き受ける。この間に逃げよ。それでよいか?」

少し考えた後、俺は檻を刀で破壊しドラゴンに対し回答する。
「……いいだろう。交渉成立だ。少し休み俺のHPMPが回復次第出発する。俺の足手まといになるなよ?」

「ふっ、ぬかせ小僧。このドラゴンの命に懸けて突破してみせよう」



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