17 / 53
第一章 エリカと圭介
第17話 砂山
しおりを挟む
わあ、今日もリカちゃんと会えた!
嬉しいな!
へぇ、今日は絵本かぁ……
働く車に電車、あっ、恐竜!
この本じゃないけど、昔よく見てたなぁ……
宇宙の本も……
あ。この絵本……
昔リカちゃんが大好きだった絵本だ……
確か、小さなネズミが二匹でハイキングに行くお話だったよな……
そうそう、この本、リカちゃんが友達と取り合いになっちゃって、真っ二つに裂けちゃったんだよね……
先生にめちゃくちゃ怒られて、さすがに気の強いリカちゃんも涙ぐんでたっけ……
なんだか懐かしいなぁ……
僕はこの絵本のシリーズじゃなくて、白い猫の絵本が好きだったなぁ……
うーん、リカちゃんが持ってきてくれた本の中にはないや……
あとは……思い出すのもちょっと恥ずかしいけど……
多分、これは男の子より女の子の方が好きなジャンルだと思う。
いわゆる、お姫様と王子様のお話。
有名なのが、いくつかあるよね。
眠りから覚めないお姫様が、王子様のキスで目を覚まして、王子様と幸せにくらしました……めでたしめでたし、っていうストーリー。
最近はお姫様も強い時代になっちゃったけど、僕は昔のお姫様の方が好きかも……
なんだかひたすら可愛らしくて優しくて、一緒にいるだけで癒やされてさ……
力がなくて弱いから、僕が守ってあげなきゃ!
って思わせるお姫様……
いや、僕はあのお話に出てくる王子様みたいに強くもないしイケメンでもないから、王子様にはなれないんだけどね。
どんなに憧れてもさ。
うん、小さい頃はよく妄想してたよ。
もちろん、お姫様はリカちゃんだったんだけど、よく考えたらリカちゃんは黙って守られるようなタイプじゃないんだよなぁ……
今流行りの、ガンガン行くタイプのお姫様。
妄想してたあの頃だって、どっちかっていうと、強いリカちゃんに僕が守られてたような気がするもん。
あ、思い出した。
僕とリカちゃんが保育園の砂場で遊んでる時、二人で作った高い砂山をぐしゃあって踏み潰した子がいたんだ。
理由は、自分が友達と作った砂山より僕とリカちゃんが作った砂山の方が高かったから。
まあ、悔しかったんだろうね。
わかるけどね、今ならその気持ち。
でもその時の僕は、びっくりしたのとショックだったのとで、半べそをかくだけで何もできなかった。
だけど、リカちゃんは鬼のような表情をして、すぐにその子が作った砂山を踏み潰しに行ったんだ。
いやあ、あまりにリカちゃんの報復行動が早かったから、僕の涙は引っ込んで呆然としちゃったんだけど。
その子は僕みたいに半べそかいて、もう一人の子とリカちゃんは喧嘩になった。
先生がすぐに騒ぎに気がついて、二人の喧嘩を止めてくれたから、僕はほっとしたよ。
『リカちゃん、大丈夫?』
無事に和解が済んで僕のところに戻ってきたリカちゃんは、心配する僕ににっこり笑って言ったんだ。
『圭介、またはじめから作り直して、さっきのお山よりもっともーっと高いのつくろう!』
僕は思わず見とれちゃったよ。
元気良く叫ぶリカちゃんの、ぴかぴかに光る笑顔が眩しくてたまらなかった。
そんなリカちゃんと二人で砂山を作れるのが、なんだかくすぐったくて、すごく嬉しくて……夢中で砂山を作ったっけな……
あぁ、あの砂山みたいに、僕の人生もやり直せたら……
でも、もうあの頃みたいに、ぴかぴかに光ってるリカちゃんは僕の隣にいないんだ。
情けないけれど、僕はもう、一人でいるのがとても辛いし怖い。
高い砂山は、僕一人じゃ作れないんだ。
だから、もう諦める。
幸せだったあの頃の、ぴかぴかなリカちゃんとずっとここにいるんだ。
ずっとここで……
あぁ、あったかいな……
まるで陽だまりの中にいるみたいだよ……
僕は、僕だけのリカちゃんと、ずっとここにいるんだ。
あぁ、幸せだなぁ……
嬉しいな!
へぇ、今日は絵本かぁ……
働く車に電車、あっ、恐竜!
この本じゃないけど、昔よく見てたなぁ……
宇宙の本も……
あ。この絵本……
昔リカちゃんが大好きだった絵本だ……
確か、小さなネズミが二匹でハイキングに行くお話だったよな……
そうそう、この本、リカちゃんが友達と取り合いになっちゃって、真っ二つに裂けちゃったんだよね……
先生にめちゃくちゃ怒られて、さすがに気の強いリカちゃんも涙ぐんでたっけ……
なんだか懐かしいなぁ……
僕はこの絵本のシリーズじゃなくて、白い猫の絵本が好きだったなぁ……
うーん、リカちゃんが持ってきてくれた本の中にはないや……
あとは……思い出すのもちょっと恥ずかしいけど……
多分、これは男の子より女の子の方が好きなジャンルだと思う。
いわゆる、お姫様と王子様のお話。
有名なのが、いくつかあるよね。
眠りから覚めないお姫様が、王子様のキスで目を覚まして、王子様と幸せにくらしました……めでたしめでたし、っていうストーリー。
最近はお姫様も強い時代になっちゃったけど、僕は昔のお姫様の方が好きかも……
なんだかひたすら可愛らしくて優しくて、一緒にいるだけで癒やされてさ……
力がなくて弱いから、僕が守ってあげなきゃ!
って思わせるお姫様……
いや、僕はあのお話に出てくる王子様みたいに強くもないしイケメンでもないから、王子様にはなれないんだけどね。
どんなに憧れてもさ。
うん、小さい頃はよく妄想してたよ。
もちろん、お姫様はリカちゃんだったんだけど、よく考えたらリカちゃんは黙って守られるようなタイプじゃないんだよなぁ……
今流行りの、ガンガン行くタイプのお姫様。
妄想してたあの頃だって、どっちかっていうと、強いリカちゃんに僕が守られてたような気がするもん。
あ、思い出した。
僕とリカちゃんが保育園の砂場で遊んでる時、二人で作った高い砂山をぐしゃあって踏み潰した子がいたんだ。
理由は、自分が友達と作った砂山より僕とリカちゃんが作った砂山の方が高かったから。
まあ、悔しかったんだろうね。
わかるけどね、今ならその気持ち。
でもその時の僕は、びっくりしたのとショックだったのとで、半べそをかくだけで何もできなかった。
だけど、リカちゃんは鬼のような表情をして、すぐにその子が作った砂山を踏み潰しに行ったんだ。
いやあ、あまりにリカちゃんの報復行動が早かったから、僕の涙は引っ込んで呆然としちゃったんだけど。
その子は僕みたいに半べそかいて、もう一人の子とリカちゃんは喧嘩になった。
先生がすぐに騒ぎに気がついて、二人の喧嘩を止めてくれたから、僕はほっとしたよ。
『リカちゃん、大丈夫?』
無事に和解が済んで僕のところに戻ってきたリカちゃんは、心配する僕ににっこり笑って言ったんだ。
『圭介、またはじめから作り直して、さっきのお山よりもっともーっと高いのつくろう!』
僕は思わず見とれちゃったよ。
元気良く叫ぶリカちゃんの、ぴかぴかに光る笑顔が眩しくてたまらなかった。
そんなリカちゃんと二人で砂山を作れるのが、なんだかくすぐったくて、すごく嬉しくて……夢中で砂山を作ったっけな……
あぁ、あの砂山みたいに、僕の人生もやり直せたら……
でも、もうあの頃みたいに、ぴかぴかに光ってるリカちゃんは僕の隣にいないんだ。
情けないけれど、僕はもう、一人でいるのがとても辛いし怖い。
高い砂山は、僕一人じゃ作れないんだ。
だから、もう諦める。
幸せだったあの頃の、ぴかぴかなリカちゃんとずっとここにいるんだ。
ずっとここで……
あぁ、あったかいな……
まるで陽だまりの中にいるみたいだよ……
僕は、僕だけのリカちゃんと、ずっとここにいるんだ。
あぁ、幸せだなぁ……
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる