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第45話 また会えたね
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のほほんとしている内に、ここ、狭くなっちゃった。
昔は泳げるくらい広かったんだけど、体がどんどん大きくなっちゃって、今は無理なの。
う、狭い。そろそろ、ここから出発するかな。
今はまだ声だけしか知らない、ママとパパにも会いたいしね!
でも……お外に出るには、私、ちょっと頑張らなきゃいけないんだよね……なんか、苦しそうだな……
ううん! ママだって、すっごく痛いんだもん!
私だって、苦しくても頑張るよ!!
※ ※ ※
それは桜の花が満開に咲いた日の夜だった。
産院近くの河川敷は、桜並木で有名だ。
見頃の今の時期は夜九時までライトアップされているから、夜桜を楽しみながら夜の散歩をしている人がけっこういる。
俺は道の横の草むらで足を止めて、ライトの光で少し明るく見える夜空を見上げた。
幻想的にも見える、たくさんの淡いピンク色。
きらきらと瞬く、小さな白い星たち。
そして、煌々と光を放つ丸い月。
ん? あれ?
「なんでだろ……あの女の子のイメージが湧いてこないぞ」
俺はしばらく月を見続けたけれど、結果は変わらなかった。
「おかしいな……」
一昨年の十二月頃から、俺たち夫婦が月を見る度に頭に思い描いていた女の子。まひろにそっくりな……
「もしかして、もう必要なくなったから……なのかな?」
俺はスマートフォンを取り出して、画像を眺める。
ついさっき、産院にいるまひろから送られてきた画像だ。
そこには、生まれてすぐの赤い肌をした赤ちゃんと、その横で顔をくしゃくしゃにしている妻、まひろがいる。
なによりも、なによりも、大切な存在。
ああ、顔が自然に緩んでしまうのがわかる。
じわじわと腹のそこから湧き上がる、くすぐったいような幸福感。
娘の名前は、この子を授かる前からまひろが既に決めていた。
俺も、その名前がいいと思う。
「うん……予想通り、まひろに似てるなぁ……美月、ママと三人でいっぱい遊ぼうな」
俺はそっと、スマートフォンに映る二人を抱きしめた。
昔は泳げるくらい広かったんだけど、体がどんどん大きくなっちゃって、今は無理なの。
う、狭い。そろそろ、ここから出発するかな。
今はまだ声だけしか知らない、ママとパパにも会いたいしね!
でも……お外に出るには、私、ちょっと頑張らなきゃいけないんだよね……なんか、苦しそうだな……
ううん! ママだって、すっごく痛いんだもん!
私だって、苦しくても頑張るよ!!
※ ※ ※
それは桜の花が満開に咲いた日の夜だった。
産院近くの河川敷は、桜並木で有名だ。
見頃の今の時期は夜九時までライトアップされているから、夜桜を楽しみながら夜の散歩をしている人がけっこういる。
俺は道の横の草むらで足を止めて、ライトの光で少し明るく見える夜空を見上げた。
幻想的にも見える、たくさんの淡いピンク色。
きらきらと瞬く、小さな白い星たち。
そして、煌々と光を放つ丸い月。
ん? あれ?
「なんでだろ……あの女の子のイメージが湧いてこないぞ」
俺はしばらく月を見続けたけれど、結果は変わらなかった。
「おかしいな……」
一昨年の十二月頃から、俺たち夫婦が月を見る度に頭に思い描いていた女の子。まひろにそっくりな……
「もしかして、もう必要なくなったから……なのかな?」
俺はスマートフォンを取り出して、画像を眺める。
ついさっき、産院にいるまひろから送られてきた画像だ。
そこには、生まれてすぐの赤い肌をした赤ちゃんと、その横で顔をくしゃくしゃにしている妻、まひろがいる。
なによりも、なによりも、大切な存在。
ああ、顔が自然に緩んでしまうのがわかる。
じわじわと腹のそこから湧き上がる、くすぐったいような幸福感。
娘の名前は、この子を授かる前からまひろが既に決めていた。
俺も、その名前がいいと思う。
「うん……予想通り、まひろに似てるなぁ……美月、ママと三人でいっぱい遊ぼうな」
俺はそっと、スマートフォンに映る二人を抱きしめた。
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