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第35話 真意
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『こないだのメッセージ、ごめん。あんなこと、知りたくなかったよな。今度、四人で会わないか? 久しぶりにさ』
大人一人前の餃子をぺろりと食べたミツキちゃんは今、私のベッドでぐっすり眠っている。
時刻は夜の十一時。
私はベッドサイドに腰掛けて、ミツキちゃんの寝顔を見つめながら小さくため息を吐いた。
メッセージは、川上さんからだ。
先日、タケルが知らない女と二人で居酒屋から出てきたところを見た、というメッセージをくれた昔同じ職場で働いていた先輩だ。
『俺が一緒にいたのは、馴染客の一人だよ。浮気というのか……仕事での愚痴を聞いて欲しいみたいで、そうしてるだけなんだけど……』
浮気してるのか、と聞いた私に答えた、タケルの台詞。
正直、タケルが嘘をついているとは思わなかった。だって、私が嘘をつかれるのが嫌いなこと、よく知ってるはずだもの。
お客さんの、プライベートの愚痴を聞いているだけ。肉体関係は持っていない。
そのタケルの言葉が事実かどうかなんて、きっと川上さんだって知らないと思う。
「信じるのは難しい、なんて言ったけど……」
私はそっとミツキちゃんの前髪に触れた。
柔らかい。
「信じてるよ、ほんとうは」
いや、なんか違う気がする。
信じる、信じないの前に、私がタケルとこの先どうしていきたいかが大事なんだ。
※ ※ ※
今日の『もぐしよ』の映画を観て、私は正直退屈していた。
キャラの設定もタケルと違って私はよく知っていたし、ストーリーもさほど斬新じゃなかったし。
ああ、平和で仲良く、で終わったわ……餃子か春巻き食べたい。
そのくらいの感想だった。
でも、タケルは違った。
単に、あの『もぐしよ』のキャラ設定を知らなかったっていうのもあるんだろうけど。
「よほど面白かったんだろうな。あの押し殺したような笑い方……」
タケルのあの表情を見ている私のほうが、吹き出しそうだった。
ミツキちゃんと三人でご飯を食べている間も、映画の内容のことを楽しそうに話していたし。
可愛いとこあるじゃん、と思ったのと同時に、ちゃんとミツキちゃんへ思いがあるんだ、と安心した。
タケルにとっては、ミツキちゃんは単なる友達の妹さんの子どもだ。
だから、ミツキちゃんがタケルをパパと呼ぼうと、どうでもいいやって思ってるんじゃないか? と疑っていたのだ。
「ミツキちゃんが、ほんとに私たちの子どもだったらな……」
つい、そんなことを考えてしまう。
『俺は……無理だ』
タケルとこの先の人生を歩みたいと言った私に、タケルはそう言った。
「あれ、やっぱり本心なのかな……」
私は、三人で餃子を食べながら、やっぱり一緒にいたいって思ったんだけどな。
『今度、四人で会わないか? 久しぶりにさ』
もう一度、川上さんからのメッセージを見る。
どうして……あんなメッセージ送ってきたの、川上さん?
タケルが。知らない女と。だなんて。
あんな内容のメッセージを見たら、私がどう思うか……想像つくよね?
なんとなく、胸の奥がもやもやする。
私はメッセージを打ち込み、送信ボタンを押した。
送った相手は、川上さんじゃなくてその奥さんである、みさきだ。
だいたい三ヶ月おきくらいに、私にヘアカットを依頼してくれる馴染み客でもある。
『そろそろ髪伸びたんじゃない? 私、今お店を休んでるから、明日、久しぶりにランチでもどう?』
ミツキちゃんとのデートは、夕方からだ。昼間は時間が空いている。
メッセージの着信音が鳴った。
『いいよ。明日の朝十一時半に、駅の改札口で待ってるね』
みさきからだ。
私は小さくため息を吐いた。
それとなく、気になる川上さんのこと、聞いてみよう。だって、さすがに本人には聞きづらいもの。
「大人って、やっぱりちょっとめんどくさいわよね」
私は眠っているミツキちゃんに話しかけ、一人苦笑したのだった。
大人一人前の餃子をぺろりと食べたミツキちゃんは今、私のベッドでぐっすり眠っている。
時刻は夜の十一時。
私はベッドサイドに腰掛けて、ミツキちゃんの寝顔を見つめながら小さくため息を吐いた。
メッセージは、川上さんからだ。
先日、タケルが知らない女と二人で居酒屋から出てきたところを見た、というメッセージをくれた昔同じ職場で働いていた先輩だ。
『俺が一緒にいたのは、馴染客の一人だよ。浮気というのか……仕事での愚痴を聞いて欲しいみたいで、そうしてるだけなんだけど……』
浮気してるのか、と聞いた私に答えた、タケルの台詞。
正直、タケルが嘘をついているとは思わなかった。だって、私が嘘をつかれるのが嫌いなこと、よく知ってるはずだもの。
お客さんの、プライベートの愚痴を聞いているだけ。肉体関係は持っていない。
そのタケルの言葉が事実かどうかなんて、きっと川上さんだって知らないと思う。
「信じるのは難しい、なんて言ったけど……」
私はそっとミツキちゃんの前髪に触れた。
柔らかい。
「信じてるよ、ほんとうは」
いや、なんか違う気がする。
信じる、信じないの前に、私がタケルとこの先どうしていきたいかが大事なんだ。
※ ※ ※
今日の『もぐしよ』の映画を観て、私は正直退屈していた。
キャラの設定もタケルと違って私はよく知っていたし、ストーリーもさほど斬新じゃなかったし。
ああ、平和で仲良く、で終わったわ……餃子か春巻き食べたい。
そのくらいの感想だった。
でも、タケルは違った。
単に、あの『もぐしよ』のキャラ設定を知らなかったっていうのもあるんだろうけど。
「よほど面白かったんだろうな。あの押し殺したような笑い方……」
タケルのあの表情を見ている私のほうが、吹き出しそうだった。
ミツキちゃんと三人でご飯を食べている間も、映画の内容のことを楽しそうに話していたし。
可愛いとこあるじゃん、と思ったのと同時に、ちゃんとミツキちゃんへ思いがあるんだ、と安心した。
タケルにとっては、ミツキちゃんは単なる友達の妹さんの子どもだ。
だから、ミツキちゃんがタケルをパパと呼ぼうと、どうでもいいやって思ってるんじゃないか? と疑っていたのだ。
「ミツキちゃんが、ほんとに私たちの子どもだったらな……」
つい、そんなことを考えてしまう。
『俺は……無理だ』
タケルとこの先の人生を歩みたいと言った私に、タケルはそう言った。
「あれ、やっぱり本心なのかな……」
私は、三人で餃子を食べながら、やっぱり一緒にいたいって思ったんだけどな。
『今度、四人で会わないか? 久しぶりにさ』
もう一度、川上さんからのメッセージを見る。
どうして……あんなメッセージ送ってきたの、川上さん?
タケルが。知らない女と。だなんて。
あんな内容のメッセージを見たら、私がどう思うか……想像つくよね?
なんとなく、胸の奥がもやもやする。
私はメッセージを打ち込み、送信ボタンを押した。
送った相手は、川上さんじゃなくてその奥さんである、みさきだ。
だいたい三ヶ月おきくらいに、私にヘアカットを依頼してくれる馴染み客でもある。
『そろそろ髪伸びたんじゃない? 私、今お店を休んでるから、明日、久しぶりにランチでもどう?』
ミツキちゃんとのデートは、夕方からだ。昼間は時間が空いている。
メッセージの着信音が鳴った。
『いいよ。明日の朝十一時半に、駅の改札口で待ってるね』
みさきからだ。
私は小さくため息を吐いた。
それとなく、気になる川上さんのこと、聞いてみよう。だって、さすがに本人には聞きづらいもの。
「大人って、やっぱりちょっとめんどくさいわよね」
私は眠っているミツキちゃんに話しかけ、一人苦笑したのだった。
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