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第十八章
十九話 【紡ぎ愛】
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どんよりと渦を巻く雲に、魔力が集まり出すと、雷鳴と共に黒い穴が空に現れる。
「おい、あっちにまた次元が開くぞ!」
「ギコル、急いで向かえ!」
背中に何本もの光矢を生やしたムカデの頭部を、盾で押さえ込むトーマが叫ぶ。
「ちぇ、結局俺たちは裏方かよ!」
「貴方、あんな化け物とやり合いたいの? サリーワイズさん、馬を!」
バオが、サリーワイズが乗る馬の後ろに飛び乗り、走り出す。
追いかける荷車でエルが呟く。
「あの渦からも、惣一郎様を感じる……」
「どっこいしょ!」
斧を叩きつけ、蟻を両断するガブガ。
「なんじゃい一匹だけか、張り合いないの」
「フン、こんなのでも見逃せば、増えて街を襲う。そんな事もわからないのかしら、フン!」
「なんじゃ、喋れるのか嬢ちゃん」
「ガオ殿、また向こうに渦が!」
「ガオ!」
「えっと…… 兄さんなんて言ったのかな?」
「知らん、急ぐぞクトル!」
「ガオ」
ポンポンっと、クトルの肩を叩くグリコ。
島の至る所で、次元が開き始める。
扉は小さく、強い厄災はまだ現れていない。
キャンプから移動用の馬を連れ、舟で向かうイグラシオ達。
施設を使い、ジゼルとサーズリが必要な物質を冒険者達に運ばせていた。
なりふり構ってる場合ではないのだろう。
島でのミルドラと惣一郎の戦いが、魔力を拡散させ、近くに次元の渦を作り出していた。
幸いここは、海に浮かぶ孤島。
「おばさん! 行ったぞ」
ツナマヨの一閃!
カマキリの脚を両断したツナマヨ。
「貴様! 次言ったら刀のサビにするぞ!」
欲しい刀は手に入れた。
次はダンジョンでエリクサーを手に入れ、若返ろうと誓うツナマヨであった。
ゼリオスの掲げる魔法陣から、ビルゲンの凍矢が、次々と巨大なカブトムシを凍らせていく。
「素晴らしいですねビルゲン殿! 早くも複合魔法を使いこなせています!」
「ええ、惣一郎様の為に全力です!」
何故か肩を落とし、がっかりするゼリオス。
「ギドよ、ここはもうええじゃろ。お前さんはあの渦へ、みんなの足になってあげなさい」
「そ、そうですね。ではギリアーク様、お気をつけて!」
「ったく、人を馬扱いしやがって、だから内緒にしたかったんだこのスキルは」
ぶつぶつと小声で愚痴るギドが姿を消す。
傷だらけのミルドラは、背後の火山を見ると焦り出す。
封印された記憶が蘇るのだろう。
羽の様な腰の両腕を自在に操り、鱗が作り出す風でジェット機の様な加速を生むミルドラ。
その素早い動きを惣一郎は、サーチをミルドラだけに集中し、弁慶と魔導具で共有している。
ベンゾウは素で反応出来ている。
だが、硬い外殻に國家と國千代の回復が追いつかないのか、切れ味が落ちていく。
片方割れた眼鏡の少女が、小刀に語りかける。
「頑張ってふたりとも!」
血を失い意識を飛ばしかける惣一郎には、自分に向けた言葉に聞こえた。
「ああ、まだだ……」
全身を捻り上げ、筋肉の弓を引く弁慶!
身体からは蒸気が湯気をあげ、グググッと筋肉が悲鳴を上げる。
「だっんな…さまぁ!」
とても遠く届かない距離で、侃護斧に全てを乗せフルスイングする弁慶!
その瞬間、背後に現れた惣一郎が弁慶ごと消えると、ミルドラの背後から侃護斧を横っ腹に叩き込む!
右の腕2本を巻き込み、くの字に折れ曲るミルドラが、地面を滑り膝を突く。
頬を膨らませ、息を吐く弁慶。
だが、惣一郎もその足元に膝を突く。
「ごめん耐えて!」
小刀に投げたベンゾウの言葉は、またしても惣一郎を奮い立たせる。
「あぁぁ!」
惣一郎の苦無が、ミルドラの腹部に突き刺さる!
閃光となり、残像を残して消えるベンゾウ。
悲鳴に似た声を上げるミルドラ!
ベンゾウのスピードは、瞬間移動と変わらないと思えた。
膝を突くミルドラの背後から、突き刺された2本の小刀。
切れ味が落ちた小刀を刺す事に賭けたベンゾウ。
小刀はミルドラを貫き、胸から見せる刀身は、力無く光り、ベンゾウの手元で折れていた。
ドス黒い物を吐き出すミルドラ。
その背後には、折れた小刀の柄を握るベンゾウが、悲しそうに立っている。
惣一郎はすぐさま別の短刀を取り出す。
予備にと取っておいた上物だ。
だが、次の瞬間。
惣一郎にはベンゾウの死角、ミルドラの腹部から伸びる針を見逃さなかった!
消える惣一郎。
弁慶の足元に落ちる小刀が2本。
突き飛ばされ尻餅をつくベンゾウには、目の前に立つ惣一郎が優しい笑顔を向け、その胸元からゆっくりと抜かれる針が見えた。
惣一郎の胸に開いた穴。
ベンゾウは、すぐ抱き寄せ、穴を塞ごうと慌てる。
「駄目、駄目、ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、ダメダメダメダメ、いやーーーーーーーーーーー!」
「旦那様ぁぁ!」
「おい、あっちにまた次元が開くぞ!」
「ギコル、急いで向かえ!」
背中に何本もの光矢を生やしたムカデの頭部を、盾で押さえ込むトーマが叫ぶ。
「ちぇ、結局俺たちは裏方かよ!」
「貴方、あんな化け物とやり合いたいの? サリーワイズさん、馬を!」
バオが、サリーワイズが乗る馬の後ろに飛び乗り、走り出す。
追いかける荷車でエルが呟く。
「あの渦からも、惣一郎様を感じる……」
「どっこいしょ!」
斧を叩きつけ、蟻を両断するガブガ。
「なんじゃい一匹だけか、張り合いないの」
「フン、こんなのでも見逃せば、増えて街を襲う。そんな事もわからないのかしら、フン!」
「なんじゃ、喋れるのか嬢ちゃん」
「ガオ殿、また向こうに渦が!」
「ガオ!」
「えっと…… 兄さんなんて言ったのかな?」
「知らん、急ぐぞクトル!」
「ガオ」
ポンポンっと、クトルの肩を叩くグリコ。
島の至る所で、次元が開き始める。
扉は小さく、強い厄災はまだ現れていない。
キャンプから移動用の馬を連れ、舟で向かうイグラシオ達。
施設を使い、ジゼルとサーズリが必要な物質を冒険者達に運ばせていた。
なりふり構ってる場合ではないのだろう。
島でのミルドラと惣一郎の戦いが、魔力を拡散させ、近くに次元の渦を作り出していた。
幸いここは、海に浮かぶ孤島。
「おばさん! 行ったぞ」
ツナマヨの一閃!
カマキリの脚を両断したツナマヨ。
「貴様! 次言ったら刀のサビにするぞ!」
欲しい刀は手に入れた。
次はダンジョンでエリクサーを手に入れ、若返ろうと誓うツナマヨであった。
ゼリオスの掲げる魔法陣から、ビルゲンの凍矢が、次々と巨大なカブトムシを凍らせていく。
「素晴らしいですねビルゲン殿! 早くも複合魔法を使いこなせています!」
「ええ、惣一郎様の為に全力です!」
何故か肩を落とし、がっかりするゼリオス。
「ギドよ、ここはもうええじゃろ。お前さんはあの渦へ、みんなの足になってあげなさい」
「そ、そうですね。ではギリアーク様、お気をつけて!」
「ったく、人を馬扱いしやがって、だから内緒にしたかったんだこのスキルは」
ぶつぶつと小声で愚痴るギドが姿を消す。
傷だらけのミルドラは、背後の火山を見ると焦り出す。
封印された記憶が蘇るのだろう。
羽の様な腰の両腕を自在に操り、鱗が作り出す風でジェット機の様な加速を生むミルドラ。
その素早い動きを惣一郎は、サーチをミルドラだけに集中し、弁慶と魔導具で共有している。
ベンゾウは素で反応出来ている。
だが、硬い外殻に國家と國千代の回復が追いつかないのか、切れ味が落ちていく。
片方割れた眼鏡の少女が、小刀に語りかける。
「頑張ってふたりとも!」
血を失い意識を飛ばしかける惣一郎には、自分に向けた言葉に聞こえた。
「ああ、まだだ……」
全身を捻り上げ、筋肉の弓を引く弁慶!
身体からは蒸気が湯気をあげ、グググッと筋肉が悲鳴を上げる。
「だっんな…さまぁ!」
とても遠く届かない距離で、侃護斧に全てを乗せフルスイングする弁慶!
その瞬間、背後に現れた惣一郎が弁慶ごと消えると、ミルドラの背後から侃護斧を横っ腹に叩き込む!
右の腕2本を巻き込み、くの字に折れ曲るミルドラが、地面を滑り膝を突く。
頬を膨らませ、息を吐く弁慶。
だが、惣一郎もその足元に膝を突く。
「ごめん耐えて!」
小刀に投げたベンゾウの言葉は、またしても惣一郎を奮い立たせる。
「あぁぁ!」
惣一郎の苦無が、ミルドラの腹部に突き刺さる!
閃光となり、残像を残して消えるベンゾウ。
悲鳴に似た声を上げるミルドラ!
ベンゾウのスピードは、瞬間移動と変わらないと思えた。
膝を突くミルドラの背後から、突き刺された2本の小刀。
切れ味が落ちた小刀を刺す事に賭けたベンゾウ。
小刀はミルドラを貫き、胸から見せる刀身は、力無く光り、ベンゾウの手元で折れていた。
ドス黒い物を吐き出すミルドラ。
その背後には、折れた小刀の柄を握るベンゾウが、悲しそうに立っている。
惣一郎はすぐさま別の短刀を取り出す。
予備にと取っておいた上物だ。
だが、次の瞬間。
惣一郎にはベンゾウの死角、ミルドラの腹部から伸びる針を見逃さなかった!
消える惣一郎。
弁慶の足元に落ちる小刀が2本。
突き飛ばされ尻餅をつくベンゾウには、目の前に立つ惣一郎が優しい笑顔を向け、その胸元からゆっくりと抜かれる針が見えた。
惣一郎の胸に開いた穴。
ベンゾウは、すぐ抱き寄せ、穴を塞ごうと慌てる。
「駄目、駄目、ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、ダメダメダメダメ、いやーーーーーーーーーーー!」
「旦那様ぁぁ!」
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