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第十八章
十三話 【ふたりの王】
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「いたぞ! やっぱ弱ってるな」
「倒していいの?」
「ああ」
森の奥でひっくり返り、脚を動かす巨大な赤茶色のカミキリムシ。
惣一郎達に気がつくと、残りの力を振り絞り起きあがろうとギシギシ暴れ出す。
図鑑によるとタイタンオオウスバカミキリに近いが、体からツノが生えており、そのおかげで起き上がれない様だ。
「図鑑のまんまって訳じゃない様だな」
「その本は正確なのか?」
「いや、ここまで来ると目安にしかならん」
ベンゾウが、裏返しで暴れる厄災の頭を切り落とす。
しばらく脚が動いていたが、やがて動かなくなった。
惣一郎が次に移動を始めようとすると、サーズリから連絡が入る。
『惣一郎殿、獣王と連絡がつきました!』
『ご苦労さん! それで使い方は?』
『魔獣の上に置き魔力を込めるだけだそうです。後は玉が教えてくれると』
『それだけか?』
『ええ、獣王も使った事がないそうで、そう伝わっていると言ってました』
『わかったやってみるよ』
『それと、一度に操れるのは1体だけで、操作中は魔力を相当使うそうですので、気をつける様にと! 以上』
『わかった、ありがとう! 以上』
まぁ、やってみるか。
異常な魔力を感じ取ったツナマヨが、刀に手を置き構える。
イグラシオ達も近付く魔力を感じ取ったのか、無言で武器を構え、近付く方角を見る。
霧を霧散させながら、降り立つ金色の厄災。
ツナマヨには見覚えがある。
「グラサーナ…… じゃ、無いよな……」
蜂の様な目は、その場にいたツナマヨ達を無視して、両断されたゴキブリを見ている。
棘の付いた細いが硬そうな腕が、そのゴキブリの半身を持ち上げると、
「ギギ、毒か……」
っと、声を発する。
それは人の言葉であった。
「何者だ!」
普段冷静なツナマヨが声を荒げる。
金色の厄災が現れてからも、武器を構えているのはツナマヨとイグラシオだけであった。
騎士達は異常な魔力に武器を下げ、立っているのがやっとな感じであった。
惣一郎達から聞いた話と違うが、その異常さからツナマヨは、コレがミルドラだと思っていた。
だが、駆け付けるトーマ達が、その姿に驚くと、エルが、
「なんじゃ此奴は! ミルドラじゃないのか!」
っと、声を上げる。
「ギギ、私は、ベリルの横に立つ者ネウロ」
ゴキブリを投げ捨て、振り返る厄災。
「私が、ギギ、王になる」
唯一、人っぽい口元から、黒い牙が左右から生えてくると、脇腹から生える第三第四の腕が広がる。
構えるツナマヨが腰を落とし、ネウロを名乗る厄災を見据える!
すると、ビクッ!っと南西の方角に顔を向ける厄災ネウロ。
額の触覚が動くと、キバを広げ、
「ギギ、王は私だぁぁ!」
っと、怒りを見せ飛び去っていく。
深く息を吐き、内心ほっとするツナマヨ。
「なんなのだ、アレは……」
惣一郎の前にはくすんだ金色の厄災が、崩れかかった今にも折れそうな脚で立っていた。
羽はぼろぼろで、飛ぶことは出来ないだろう。
「おお! 立ったねご主人様」
「ぼろぼろだぞ、コレで動けるのか?」
ベンゾウと弁慶が不安定に立つ王の近くで、マジマジと見ている。
「厄災の王から、惣一郎様の魔力も感じるぞ」
ビルゲンとバオの足は震えていた。
「いうほど魔力使わないな~ あってるのかなコレで」
「ご主人様、動かして!」
キラキラした目で見るベンゾウ。
惣一郎は左手の玉を向け、歩くイメージを送る。
目を閉じると意識が王と重なり、自分が王になった様な錯覚を起こす。
王はゆっくり歩き出すと、脚が折れ前のめりに倒れる。
「うわっ!」っと手を前に出す惣一郎。
「コレじゃ使えなくないか? 旦那様」
「まぁ、誘き寄せる餌になりゃ…… コレで良しとするしかないな」
そこに、セシルから慌てて連絡が入る。
「倒していいの?」
「ああ」
森の奥でひっくり返り、脚を動かす巨大な赤茶色のカミキリムシ。
惣一郎達に気がつくと、残りの力を振り絞り起きあがろうとギシギシ暴れ出す。
図鑑によるとタイタンオオウスバカミキリに近いが、体からツノが生えており、そのおかげで起き上がれない様だ。
「図鑑のまんまって訳じゃない様だな」
「その本は正確なのか?」
「いや、ここまで来ると目安にしかならん」
ベンゾウが、裏返しで暴れる厄災の頭を切り落とす。
しばらく脚が動いていたが、やがて動かなくなった。
惣一郎が次に移動を始めようとすると、サーズリから連絡が入る。
『惣一郎殿、獣王と連絡がつきました!』
『ご苦労さん! それで使い方は?』
『魔獣の上に置き魔力を込めるだけだそうです。後は玉が教えてくれると』
『それだけか?』
『ええ、獣王も使った事がないそうで、そう伝わっていると言ってました』
『わかったやってみるよ』
『それと、一度に操れるのは1体だけで、操作中は魔力を相当使うそうですので、気をつける様にと! 以上』
『わかった、ありがとう! 以上』
まぁ、やってみるか。
異常な魔力を感じ取ったツナマヨが、刀に手を置き構える。
イグラシオ達も近付く魔力を感じ取ったのか、無言で武器を構え、近付く方角を見る。
霧を霧散させながら、降り立つ金色の厄災。
ツナマヨには見覚えがある。
「グラサーナ…… じゃ、無いよな……」
蜂の様な目は、その場にいたツナマヨ達を無視して、両断されたゴキブリを見ている。
棘の付いた細いが硬そうな腕が、そのゴキブリの半身を持ち上げると、
「ギギ、毒か……」
っと、声を発する。
それは人の言葉であった。
「何者だ!」
普段冷静なツナマヨが声を荒げる。
金色の厄災が現れてからも、武器を構えているのはツナマヨとイグラシオだけであった。
騎士達は異常な魔力に武器を下げ、立っているのがやっとな感じであった。
惣一郎達から聞いた話と違うが、その異常さからツナマヨは、コレがミルドラだと思っていた。
だが、駆け付けるトーマ達が、その姿に驚くと、エルが、
「なんじゃ此奴は! ミルドラじゃないのか!」
っと、声を上げる。
「ギギ、私は、ベリルの横に立つ者ネウロ」
ゴキブリを投げ捨て、振り返る厄災。
「私が、ギギ、王になる」
唯一、人っぽい口元から、黒い牙が左右から生えてくると、脇腹から生える第三第四の腕が広がる。
構えるツナマヨが腰を落とし、ネウロを名乗る厄災を見据える!
すると、ビクッ!っと南西の方角に顔を向ける厄災ネウロ。
額の触覚が動くと、キバを広げ、
「ギギ、王は私だぁぁ!」
っと、怒りを見せ飛び去っていく。
深く息を吐き、内心ほっとするツナマヨ。
「なんなのだ、アレは……」
惣一郎の前にはくすんだ金色の厄災が、崩れかかった今にも折れそうな脚で立っていた。
羽はぼろぼろで、飛ぶことは出来ないだろう。
「おお! 立ったねご主人様」
「ぼろぼろだぞ、コレで動けるのか?」
ベンゾウと弁慶が不安定に立つ王の近くで、マジマジと見ている。
「厄災の王から、惣一郎様の魔力も感じるぞ」
ビルゲンとバオの足は震えていた。
「いうほど魔力使わないな~ あってるのかなコレで」
「ご主人様、動かして!」
キラキラした目で見るベンゾウ。
惣一郎は左手の玉を向け、歩くイメージを送る。
目を閉じると意識が王と重なり、自分が王になった様な錯覚を起こす。
王はゆっくり歩き出すと、脚が折れ前のめりに倒れる。
「うわっ!」っと手を前に出す惣一郎。
「コレじゃ使えなくないか? 旦那様」
「まぁ、誘き寄せる餌になりゃ…… コレで良しとするしかないな」
そこに、セシルから慌てて連絡が入る。
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