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第十六章

三十五話 【本当の王】

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「転移者なのだろ? 同じ転移者にこの世界で会ったのは初めてだが、前の世界でも珍しいは珍しいが、時折いたのでな」

…………

「まぁ、そう構えるな。少し俺の話をしよう」

固まる惣一郎に向かいに座るギドが、ゆっくり話し始める。

「俺がこの世界に転移してきたのは37年前、24の時だ。転移した時に目覚めた力で何とか冒険者として生きて来れたが、俺に出来たのは、この遅れた世界で生きる事だけだった」

「遅れた世界?」

「ああ、魔法も技術も遅れた、あの眼鏡も無い、この世界にな」

魔法はあったのか……

同じ地球から来た訳じゃ無さそうだ。

惣一郎は黙ってギドの話に耳を傾けていた。

若くして転移したギドは、転移の時に目覚めたスキル[瞬間移動]で、何とか冒険者としてやって来れたが、瞬間移動は見える範囲だけで魔力消費も大きく、冒険者として名が知れる程では無かったそうだ。

元の世界では魔法も進んでおり、科学技術もここよりはずっと進んでいたが、地球には遠く及ばない感じであった。

ギドは、やっと打ち明けられる者が現れた事が嬉しいのか、転移して来てからの苦労話を惣一郎に楽しそうに話していた。

「ギド、境遇は似てるが、どうやら同じ世界から来た訳じゃ無さそうだ」

「そ、そうか、故郷の話が聞けると思ったが…… そうか」


惣一郎も自分に起こった事をギドに、簡単に話す。


「なるほどな…… 魔法の無い世界か…… 想像もつかんな」

「ああ、それで厄災について研究している者がいると聞いてな、話を聞きに来たんだが、驚いたよ」

「前の世界でも、帰れない転移者の話は聞いていたからな、諦めてこの世界の事を知りたくて色々調べていたのだが…… 惣一郎、厄災が何故急に現れるか知っているか?」

「いや……」

「魔力だ! 我々が使う魔力が拡散した先に、行き場のない魔力が大気中に集まり、次元を開く事が稀にあるのだ」

なっ!

「だが、次元を開く自然現象をひき起こす程の魔力は膨大な量を必要とする。だからこの世界では数十年から数百年に起る現象だったのだが、ここ最近では、放出された魔力が桁違いに増えているのだろう、頻繁に次元が開いているのだ」

「まさか、俺のせいなのか!」

「いや、いくら魔力量が多いといっても、人ひとりの魔力がどうこう出来る量じゃ無い。きっと拡散された魔力が、急に増えた事で集まり一時的に頻発しているだけだろう、直に治まる」

「だが待て、次元が開くって、来るのは厄災だけなのか!」

「ああ、近い世界と繋がる。その世界では、厄災が住むのだろう」

「じゃ、俺らは!」

「世界の意思だ。世界が均衡を保つ為に呼ばれると言われて来た…… 俺がいた世界では。近い世界の者が、時折転移して次元の扉を通り…… それで均衡が崩れると、世界がそれを正す為に、他所から呼ぶのだ。渡りとされるスキルを与えて」

「渡り?」

「俺の場合が瞬間移動だが、逃げる事しか出来ない俺には、厄災を島に閉じ込める事しか出来ないのだ」

「あの島は、そう言う事なのか! じゃ、ギドは、ずっとひとりで厄災を?」

「ああ…… 触れた物も一緒に瞬間移動出来るこのスキルで、少しずつだが」

孤独にこの男は見返りもなく戦っていたのか……

「まぁ、俺じゃ埒が明かないとお前が呼ばれたのだろう」

すまん…… 俺は手違いで……

そして俺のせいで、被害も大きくなっていたのかも知れない。

「この世界が遅れている理由は、近い世界が厄災しか居ない世界だからなのだろう。過去に今の魔法を伝えた者もおそらく転移者だ。古代魔法が廃れた理由はわからんが…… 厄災のせいで国は長く保たず、発展もして来なかったのだろう」

なるほど……

「だが惣一郎! 俺は大きな間違いをして来たのかも知れない」

「間違い?」

「厄災について、何も知らなかったのだ」

えっ? 十分お詳しいかと……

「島へは行ったのだろ?」

「ああ、少しだが」

「奥へ行けばわかるが、厄災はお互いに争い餌にする。そして相手を喰らうと力を増すのだ」

……まさか。

「俺は長年、世界の為にと厄災を閉じ込めて来たのだが、それが間違いだった」

「蠱毒…… って奴か」

「ああ、同じ壺に毒虫を入れ、強い毒虫が生き残りより強い毒を持つ、蠱毒…… 今島には、王がいる。厄災の王が」

そう来たか……





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