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第十六章

二十七話 【カマキリの幼体】

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林を抜けた先で厄災を誘導するグラマラの煙が、遠くに見えて来る。

惣一郎達は近い事を知ると、作戦を立て始める。

「俺が上空に殺虫剤の詰まった袋をいくつか浮かせるので、ゼリオスは魔法で厄災のいる範囲に撒き散らしてくれ!」

「あまり広範囲ですとそれだけで魔力を使い果たしてしまいますが」

「問題ない、この杖を掴めば、俺の魔力を使える」

「惣一郎殿の魔力?」

よくわかってない様だが、大丈夫だろう。

「薬の散布が終わったら、生き残りを狩りまくるだけだ。一応マスクを渡しておく」

少し進むと冒険者達が、葉の付いた生木を燃やしていた。

立ち昇る煙は、穏やかな風に運ばれて行く。

「ギルドからの要請で来たジビカガイライだ! 厄災は?」

冒険者達が安堵の声を上げる。

「良かった~ こんな早く来てくれるとは!」

「我々は後続で応援に来た者だ、厄災はこの先で、先に出た冒険者達が足止めしている!」

「ああ、怪我人も出てるとの事だ! 急いでください」

「わかった!」

先に進む惣一郎達。

少し行った先に煙に囲まれ、一塊になる1m程のカマキリの群れがいた。

冒険者達の魔法だろう、煙は作られた風で、厄災の群れを取り囲み、動きを封じている。

草原の中、風に流されず壁を作る煙。

惣一郎達は、迂回して先に居る冒険者達の元へと向う。

先には冒険者より鎧を着た騎士が多く、盾で煙を作り出す冒険者達を守っていた。

「ギルドからの要請で来た、ジビカガイライだ!」

よく見ると騎士達はすでにぼろぼろで、怪我をしている者も、離れた場所で倒れている者もいた。

「助かった! 我々はグビノ国に仕える騎士団で、この先の町キキトへの進行を食い止めていた所だ」

そこに馬に乗り、急ぎ来る騎士。

「ジビカガイライか!」

「ああ、ギルドからの要請で来た」

「済まぬ! 冒険者と共に足止めするだけで、精一杯だった所だ! 私はこの騎士団の指揮を任された[ドノレイ]だ。先程やっと、ばらけていた厄災をひとまとめに出来た所だ」

「ジビカガイライの惣一郎です。この数をひとまとめにしてくれるだけでも大助かりですよ!」

惣一郎は荷車を仕舞い、クロとセシルを下がらせる。

「足止めしか出来ず、申し訳ない! 北東ではすでに二個小隊がやられ、ここももう持たないと、後退する所だったのだ」

ギルドに依頼が来た時点で被害はもう、出ているのだろう……

「後は任せてくれ! ゼリオス、杖を握れ」

惣一郎は無数の麻袋を上空へと浮かせると、幻腕を出し、ゼリオスが理喪棍を握る。

「なっ! なんて魔力だ……」

ゼリオスは、直径約200mにまとめられた厄災を囲む様に、大きな風の壁を作り上げると、風刃が上空の麻袋を切り刻み、粉を全体に撒き散らす。

キーキーと奇声が白い霧の中から聞こえて来る。

ベンゾウと弁慶を先頭に、キンブルとクトル、グリコが杖を構え、霧が晴れるのを待つ。

泡を吹きながら、数匹が霧の中から飛び出してくると、惣一郎が声を上げる。

「ベンゾウ!」

惣一郎の声に飛び出すベンゾウと弁慶。

ゼリオスはそのまま竜巻を起こし、範囲を小さくしていくと、霧が巻き上がり晴れて行く。

風刃で傷付き、薬で倒れた厄災が姿を現す。

約3/4程が泡を吹き倒れていたが、震えながら耐える個体も、全く効いてなさそうな個体見えた。

300近いカマキリの幼体のほとんどを、ゼリオスの初撃で倒せたのだ。

「凄い…… 私の魔力がほとんど減っていません……」

「まだ残ってるぞゼリオス」

「は、はい!」

ゼリオスはキンブル達に指示を飛ばし、スーサイド・キップスの4人は、生き残った厄災を倒しに向かう。

「ご主人様~ ベンゾウ達は?」

飛び出して来た厄災を倒し、戻って来たベンゾウと弁慶。

「残りは彼らに任せよう!」

騎士のドノレイが声をこぼす。

「凄まじいですな…… あの数を……」

幼体だからか、殺虫剤の効きも良かったのだろう。

「ご主人様~ ベンゾウも!」

コイツに待機は無理なのだろうか?

「ゼリオス達の邪魔をしない所でだけな」

「うん!」

小刀を抜き、走り去る少女。

「さすが、冒険者のトップは違いますな……」





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