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第十六章
十三話 【例の発作】
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泣き疲れ、惣一郎に抱き付きメガネを外し、惣一郎の服で涙を拭くベンゾウ。
「じゃ、オババ、俺らもう行くよ」
「ああ、またいつでも来るニャ、ベンゾウを頼んだよ!」
「……ああ!」
「オババ様、ベンゾウ行ってくるね!」
「あぁ~ その男にうんと甘えるといいニャ! 行っといで、ベンゾウ!」
リコでなく、ベンゾウと呼ぶ猫に見送られ、惣一郎達はシェンスーの街に向かう。
森を出て、クロの荷車に揺られるジビカガイライ。
ベンゾウは惣一郎の膝で爆睡中。
鼻を赤くした弁慶が、慣れた手付きでティッシュを要求する。
「いつまで泣いてんだよ」
「だっで…… グスン」
セシルも目を赤くしていた。
そう言えば、クロが大人しい……
「あれ? クロ、俺喋るなって言ったっけ?」
「なんじゃ、我が喋れば喋ったで怒る癖に、黙っていても、なんか言われるのか!」
『『『 可愛くない…… 』』』
「我にも悲しい別れがあった……」
なんか始まった!
「我が一族が、最初にトロールに襲われ……
薮を突いてしまった惣一郎は、その後、荷車に揺られながら、クロの黒歴史を聞かされるハメになった……
翌日、夜通し聞かされたクロの話がやっと大詰めに入る頃、シェンスーの街に着く。
昼間の街は賑わっており、露店も数多く並んでいた。
惣一郎は真っ直ぐギルドへ向かい、荷車を仕舞うと、中に入る。
「おお~ ジビカガイライだ!」
「ジビカガイライが来たぞ!」
何故か歓迎ムード……
あっという間に冒険者達に囲まれ、話しかけられる。
「今回の魔獣はどうでした!」
「強かったって聞いてたが、ジビカガイライにかかりゃ大した魔獣じゃないですよね!」
「どうやって倒したんですか?」
「一杯奢らせて下さい!」
ヒソヒソ話はどうした……
こっちの方が、うざいんだが。
「お前達! いい加減におし!」
現れた金髪ロン毛のナイスバディー!
片足義足の目元に小皺が見える、年配のお姉様!
露出少なめだが、ボディーラインがわかるタイトな、冒険者風のワイルドな出立ち。
どストライクです!
「済まないね~ こんな田舎じゃ有名人が来ただけでお祭り騒ぎさ!」
「そんな済まないなんて、朝まで踊り明かしましょう♡」
「はぁ? な、なんの話だい?」
するとまた弁慶が惣一郎の口を塞ぎ。
「な、なんでも無い、ただの発作だ!」
っと、話を遮る。
「えっ、あ、あぁ、そうかい、あたしは、ギルド長の[レイス]だ、よろしく頼むよ」
「ああ、ジビカガイライの弁慶だ! 済まんが金を下ろしに来た、入り用になりそうでな!」
「そうかい、わかった。カードを! 詳しくは上の部屋で話そう」
「モゴモゴ!」
「あはは、すまんが発作が酷くなるので、後で取りに来る。50,000ギーほど用意しておいてくれ!」
「モゴモゴモゴ!」
「カードは……あった! これだ」
「なっ! ブラック! し、失礼しました!」
「モゴモゴモゴモゴ!」
「ですが、そんな大金ですと、少し時間がかかるのですが……」
「じゃ、30,000ギーでいいぞ! 明日来るから」
「は、はい! なんとか揃えて見せます!」
「モゴモゴ……モ…」
「じゃ、じゃあ、よろしく頼むよ!」
弁慶に抱えられ、ギルドを出る惣一郎達。
ベンゾウはケラケラ笑うだけだった。
「旦那様! いい加減にしてくれ! アタイらがいるじゃないか…… あれ? やばい!」
意識をなくした惣一郎が、一命を取り留めたのは、弁慶の熱い人工呼吸のおかげであった。
「年末調整に必要なハガキが届いて……ってあれ? 何処だここ」
「極秘施設のある魔導書店だ! 良かった目が覚めて」
「弁慶…… あれ? 街に着いたのか?」
ケラケラケラ
「ああ、気分は?」
「ああ、着いた記憶が……」
「そ、そうか大変だったな! あはは」
ケラケラケラ
「惣一郎様、大丈夫ですか?」
「ケッ、女なぞにのぼせおって、だから
ゴン!
「ま、無事で何よりだ旦那様!」
状況がわからん……
そこに水を持って現れたトヌマ。
「あ、お目覚めですか? お疲れの様で、何も無い店ですが、二階を自由に使って下さいね!」
「そうだな、旦那様! 夜通し走って来たんだ今日はもう休もう!」
「まだ、朝じゃ……」
よくわからないうちに、休む事になった惣一郎。
二階で二部屋に分かれて休む。
「あ、ギルドで金下ろさないと」
「ああ、アタイがさっき頼んで来たから大丈夫だ! 明日もらって来るよ」
そうなんだ…… 疲れたのかな?
「じゃ、オババ、俺らもう行くよ」
「ああ、またいつでも来るニャ、ベンゾウを頼んだよ!」
「……ああ!」
「オババ様、ベンゾウ行ってくるね!」
「あぁ~ その男にうんと甘えるといいニャ! 行っといで、ベンゾウ!」
リコでなく、ベンゾウと呼ぶ猫に見送られ、惣一郎達はシェンスーの街に向かう。
森を出て、クロの荷車に揺られるジビカガイライ。
ベンゾウは惣一郎の膝で爆睡中。
鼻を赤くした弁慶が、慣れた手付きでティッシュを要求する。
「いつまで泣いてんだよ」
「だっで…… グスン」
セシルも目を赤くしていた。
そう言えば、クロが大人しい……
「あれ? クロ、俺喋るなって言ったっけ?」
「なんじゃ、我が喋れば喋ったで怒る癖に、黙っていても、なんか言われるのか!」
『『『 可愛くない…… 』』』
「我にも悲しい別れがあった……」
なんか始まった!
「我が一族が、最初にトロールに襲われ……
薮を突いてしまった惣一郎は、その後、荷車に揺られながら、クロの黒歴史を聞かされるハメになった……
翌日、夜通し聞かされたクロの話がやっと大詰めに入る頃、シェンスーの街に着く。
昼間の街は賑わっており、露店も数多く並んでいた。
惣一郎は真っ直ぐギルドへ向かい、荷車を仕舞うと、中に入る。
「おお~ ジビカガイライだ!」
「ジビカガイライが来たぞ!」
何故か歓迎ムード……
あっという間に冒険者達に囲まれ、話しかけられる。
「今回の魔獣はどうでした!」
「強かったって聞いてたが、ジビカガイライにかかりゃ大した魔獣じゃないですよね!」
「どうやって倒したんですか?」
「一杯奢らせて下さい!」
ヒソヒソ話はどうした……
こっちの方が、うざいんだが。
「お前達! いい加減におし!」
現れた金髪ロン毛のナイスバディー!
片足義足の目元に小皺が見える、年配のお姉様!
露出少なめだが、ボディーラインがわかるタイトな、冒険者風のワイルドな出立ち。
どストライクです!
「済まないね~ こんな田舎じゃ有名人が来ただけでお祭り騒ぎさ!」
「そんな済まないなんて、朝まで踊り明かしましょう♡」
「はぁ? な、なんの話だい?」
するとまた弁慶が惣一郎の口を塞ぎ。
「な、なんでも無い、ただの発作だ!」
っと、話を遮る。
「えっ、あ、あぁ、そうかい、あたしは、ギルド長の[レイス]だ、よろしく頼むよ」
「ああ、ジビカガイライの弁慶だ! 済まんが金を下ろしに来た、入り用になりそうでな!」
「そうかい、わかった。カードを! 詳しくは上の部屋で話そう」
「モゴモゴ!」
「あはは、すまんが発作が酷くなるので、後で取りに来る。50,000ギーほど用意しておいてくれ!」
「モゴモゴモゴ!」
「カードは……あった! これだ」
「なっ! ブラック! し、失礼しました!」
「モゴモゴモゴモゴ!」
「ですが、そんな大金ですと、少し時間がかかるのですが……」
「じゃ、30,000ギーでいいぞ! 明日来るから」
「は、はい! なんとか揃えて見せます!」
「モゴモゴ……モ…」
「じゃ、じゃあ、よろしく頼むよ!」
弁慶に抱えられ、ギルドを出る惣一郎達。
ベンゾウはケラケラ笑うだけだった。
「旦那様! いい加減にしてくれ! アタイらがいるじゃないか…… あれ? やばい!」
意識をなくした惣一郎が、一命を取り留めたのは、弁慶の熱い人工呼吸のおかげであった。
「年末調整に必要なハガキが届いて……ってあれ? 何処だここ」
「極秘施設のある魔導書店だ! 良かった目が覚めて」
「弁慶…… あれ? 街に着いたのか?」
ケラケラケラ
「ああ、気分は?」
「ああ、着いた記憶が……」
「そ、そうか大変だったな! あはは」
ケラケラケラ
「惣一郎様、大丈夫ですか?」
「ケッ、女なぞにのぼせおって、だから
ゴン!
「ま、無事で何よりだ旦那様!」
状況がわからん……
そこに水を持って現れたトヌマ。
「あ、お目覚めですか? お疲れの様で、何も無い店ですが、二階を自由に使って下さいね!」
「そうだな、旦那様! 夜通し走って来たんだ今日はもう休もう!」
「まだ、朝じゃ……」
よくわからないうちに、休む事になった惣一郎。
二階で二部屋に分かれて休む。
「あ、ギルドで金下ろさないと」
「ああ、アタイがさっき頼んで来たから大丈夫だ! 明日もらって来るよ」
そうなんだ…… 疲れたのかな?
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