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第十六章
十二話 【家族】
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コールを切った惣一郎は、テントを出てミコの所へ行く。
オババがミコ達を正座させ、何やら話していた。
「そ、惣一郎! アタイを強くしてくれるって本当か! 姉弟子の様になれるのか!」
「えっ? 無理ですが…… ありゃ別格だ」
「オババ! 話が違うじゃないか!」
「ただ、近づく事は出来るぞ! 今以上に」
「本当か!」
「ああ、その話で来た」
クルセウスの3人は、オババを無視して惣一郎の方を向き正座する。
「ベンゾウに勝ちたいとか、強くなりたいって理由なら断るが、今回の様に、厄災から人々を守りたいと、今後ギルドと契約して厄災出現の際は優先して討伐に向かうという覚悟があるか」
「あったりまえだ! 厄災はアタイの、家族の仇だ!」
「ああ、俺もその為に冒険者を続けている。敵わぬとも、人々が逃げる時間が稼げる様にな!」
「ガウ!」
「コイツらが力を求める理由は厄災ニャ、ワシにゃその力までは教えてやれん! ワシからも頼むニャ、惣一郎よ! この子達を強くして欲しいニャ!」
家族の仇……
コイツらにも事情があるのだろう。
「三日後、シェンスーの街の魔導書店に来い。続きはそこで」
喜ぶ3人は、準備をしにオババと街へ戻って行った。
サーズリの話では、あの3人で以前のゴリラング・ログより上にいたチームらしい。
戦闘に関しては惣一郎より、もちろん上だろう……
まぁ、俺が用意出来るのは、武器と飯だがな!
訓練はベンゾウ達に任せよう。
こうして[惣一郎キャンプ]が静かに動き出した。
夕食後ベンゾウに、街に顔出さなくていいのか尋ねるが、昔いた街はこの瓦礫の街だという。
街には顔見知りもいるが、話す事も無いと、あっさりしていた。
ベンゾウも気持ちに踏ん切りが付いたのか、以前の明るいベンゾウに戻りつつある。
「ご主人様…… ひとつだけ行きたい場所が」
「いいよ、どこだ?」
「森の北にある、両親のお墓」
「わかった…… 明日帰りに寄ろう」
翌朝、朝食を食べてると、しれっと一緒に食べていたオババも、一緒に墓に行く事になる。
図々しさは、師匠譲りの様だ……
森を歩きながら、前を歩くオババが[キャッテル]と言う種族だと聞いた。
肉球が足音を消す為、神出鬼没で昔から暗殺者に多い種族らしい。
当のオババもその昔、有名な暗殺者だったそうだ。
引退後、故郷で隠居生活をおくっており、もう300年も生きているという、化け猫であった。
「呼んだかニャ?」
あはは……
ベンゾウはニコ時代、早くに両親を炭鉱の事故で亡くし、弟とふたり残された蓄えで生活していたそうだが、蓄え尽きる前にオババに弟子入りし、冒険者として幼い弟のチコを養って来たそうだ。
14歳で頭角を現し、16の頃には、銀の疾風と呼ばれる程になっていたそうだが、徐々に視力が弱まり、依頼をこなすのが大変になり、生活も苦しくなっていく。
そして舞い込んだ大きな遠征が、最後となる。
その遠征で仲間を誤認し傷付けてしまい、依頼も失敗。
損害も大きく囚われたベンゾウは、そのまま18歳で、奴隷まで身を落とす。
その後、戻らない姉を追い施設を抜け出すチコは、遠くベンゾウの向かった街に向かう。
幼い子供で旅は難しい。
獣人であったチコもまた、オババに多少の心得を教わっていたそうで、魔獣から逃げながらも姉の元へ歩き続ける。
だが、空腹虚しく倒れたチコを旅の冒険者が見つけた時には、すでに息は無かったそうだ。
身分を表す物は何も無かったが、最後に姉が参加した依頼書を持っていた事から、牢の中のベンゾウに知らせが届く。
遺体は発見された草原で、そのまま大地へと帰っていったそうだ……
そのチコが、家に置き忘れた花のブローチ。
昔、家族4人で森に行った時に摘んだ、思い出の白い名も無い花とベンゾウは気付く。
森の中を進むと、少し開けた丘に出る。
陽が射し込み、白い小さな花が咲き誇る。
丘の上でベンゾウは穴を掘り、チコの花のブローチと、紙に包まれた灰色の髪の束を入れる。
「それは誰の髪の毛ニャ?」
「 これはね…… ニコの……
ご主人様が奴隷から救ってくれた時……
最初に切った、ニコだった時の髪の毛。
これで…… やっと……
やっと家族が……
チゴが、だだいまっで……うっ
うわぁぁぁぁ~ 」
大声で泣く、ベンゾウ。
過去の自分を置いていくのだろう。
墓石も何も無い、花が咲く丘。
ベンゾウの泣き声が、悲しく響いていた。
オババがミコ達を正座させ、何やら話していた。
「そ、惣一郎! アタイを強くしてくれるって本当か! 姉弟子の様になれるのか!」
「えっ? 無理ですが…… ありゃ別格だ」
「オババ! 話が違うじゃないか!」
「ただ、近づく事は出来るぞ! 今以上に」
「本当か!」
「ああ、その話で来た」
クルセウスの3人は、オババを無視して惣一郎の方を向き正座する。
「ベンゾウに勝ちたいとか、強くなりたいって理由なら断るが、今回の様に、厄災から人々を守りたいと、今後ギルドと契約して厄災出現の際は優先して討伐に向かうという覚悟があるか」
「あったりまえだ! 厄災はアタイの、家族の仇だ!」
「ああ、俺もその為に冒険者を続けている。敵わぬとも、人々が逃げる時間が稼げる様にな!」
「ガウ!」
「コイツらが力を求める理由は厄災ニャ、ワシにゃその力までは教えてやれん! ワシからも頼むニャ、惣一郎よ! この子達を強くして欲しいニャ!」
家族の仇……
コイツらにも事情があるのだろう。
「三日後、シェンスーの街の魔導書店に来い。続きはそこで」
喜ぶ3人は、準備をしにオババと街へ戻って行った。
サーズリの話では、あの3人で以前のゴリラング・ログより上にいたチームらしい。
戦闘に関しては惣一郎より、もちろん上だろう……
まぁ、俺が用意出来るのは、武器と飯だがな!
訓練はベンゾウ達に任せよう。
こうして[惣一郎キャンプ]が静かに動き出した。
夕食後ベンゾウに、街に顔出さなくていいのか尋ねるが、昔いた街はこの瓦礫の街だという。
街には顔見知りもいるが、話す事も無いと、あっさりしていた。
ベンゾウも気持ちに踏ん切りが付いたのか、以前の明るいベンゾウに戻りつつある。
「ご主人様…… ひとつだけ行きたい場所が」
「いいよ、どこだ?」
「森の北にある、両親のお墓」
「わかった…… 明日帰りに寄ろう」
翌朝、朝食を食べてると、しれっと一緒に食べていたオババも、一緒に墓に行く事になる。
図々しさは、師匠譲りの様だ……
森を歩きながら、前を歩くオババが[キャッテル]と言う種族だと聞いた。
肉球が足音を消す為、神出鬼没で昔から暗殺者に多い種族らしい。
当のオババもその昔、有名な暗殺者だったそうだ。
引退後、故郷で隠居生活をおくっており、もう300年も生きているという、化け猫であった。
「呼んだかニャ?」
あはは……
ベンゾウはニコ時代、早くに両親を炭鉱の事故で亡くし、弟とふたり残された蓄えで生活していたそうだが、蓄え尽きる前にオババに弟子入りし、冒険者として幼い弟のチコを養って来たそうだ。
14歳で頭角を現し、16の頃には、銀の疾風と呼ばれる程になっていたそうだが、徐々に視力が弱まり、依頼をこなすのが大変になり、生活も苦しくなっていく。
そして舞い込んだ大きな遠征が、最後となる。
その遠征で仲間を誤認し傷付けてしまい、依頼も失敗。
損害も大きく囚われたベンゾウは、そのまま18歳で、奴隷まで身を落とす。
その後、戻らない姉を追い施設を抜け出すチコは、遠くベンゾウの向かった街に向かう。
幼い子供で旅は難しい。
獣人であったチコもまた、オババに多少の心得を教わっていたそうで、魔獣から逃げながらも姉の元へ歩き続ける。
だが、空腹虚しく倒れたチコを旅の冒険者が見つけた時には、すでに息は無かったそうだ。
身分を表す物は何も無かったが、最後に姉が参加した依頼書を持っていた事から、牢の中のベンゾウに知らせが届く。
遺体は発見された草原で、そのまま大地へと帰っていったそうだ……
そのチコが、家に置き忘れた花のブローチ。
昔、家族4人で森に行った時に摘んだ、思い出の白い名も無い花とベンゾウは気付く。
森の中を進むと、少し開けた丘に出る。
陽が射し込み、白い小さな花が咲き誇る。
丘の上でベンゾウは穴を掘り、チコの花のブローチと、紙に包まれた灰色の髪の束を入れる。
「それは誰の髪の毛ニャ?」
「 これはね…… ニコの……
ご主人様が奴隷から救ってくれた時……
最初に切った、ニコだった時の髪の毛。
これで…… やっと……
やっと家族が……
チゴが、だだいまっで……うっ
うわぁぁぁぁ~ 」
大声で泣く、ベンゾウ。
過去の自分を置いていくのだろう。
墓石も何も無い、花が咲く丘。
ベンゾウの泣き声が、悲しく響いていた。
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