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十五章
二十二話 【笑顔】
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「惣一郎様! おかえりなさい」
涙ぐむネイが、惣一郎達を迎える。
「ただいま戻りました」
惣一郎達がオーミサの街に戻ったのは、ビルゲンと別れた次の日であった。
「ギルドから…… 連絡を受けております。ありがとう…… 本当にありがとうございます」
「まだ終わった訳じゃない、でしょ!」
「はい! そうですね… すいません私ったら…… グスン。 瓦礫の撤去はまだ終わりが見えません。ですが、近隣から避難して来た人も増え、支援物資も絶えず届いております。この街はコレからです!」
「ええ! 手伝いますよ」
惣一郎は大量の瓦礫を、アイテムボックスに仕舞い、飛んで街の外へ運ぶ。
だが、遺体も瓦礫と混ざり収納してしまう事も多かった。
ボックスの中では、遺体と瓦礫が区分けされる為、遺体は外に掘られた穴の前に並べると、行方不明者を探す者が、集まりだす。
家族の悲痛の叫びを聞き、やるせない気持ちでまた、回収に向かう惣一郎。
弁慶は、力仕事を請負い、ベンゾウも撤去が難しい瓦礫を細かく切り刻む。
セシルは大量の炊き出しを作り始め、クロの荷車で屋台を始める。
屋台の料理を食べた者は、力が湧くと、元気を取り戻す。
翌日には、ほぼ撤去を終えていた。
ささやかながら惣一郎達を感謝する宴が開かれる。
次々と感謝の言葉をかけられる惣一郎は、歯痒い思いで聞いていた。
別れを悲しむ者、再会を喜ぶ者、再出発に意欲を燃やす者、そして全てを失い絶望する者。
みんなが踊りで足並みを揃え、酒で悲しみを洗い流す。
ささやかではあったが、惣一郎は一生忘れないだろう。
厄災の被害から人々を守る事が、自分に出来るのなら、出来る限り協力しようと心に決める。
惣一郎の目の前には、焚き火を囲み、逞しく笑い踊る人々がいた。
『……惣一郎殿 ……惣一郎殿!』
真っ白な世界が広がる。
『惣一郎殿!』
白い世界で後ろから声がする。
聞き覚えのある声が。
慌てて振り返る惣一郎は、涙が溢れ出し声が震える。
『スワロ……』
『惣一郎殿、凄いではないか! みんなが笑顔だぞ! 見ろ、惣一郎殿が作った笑顔だ』
『すまなかった…… スワロ……俺のせいで』
『誰のせいでもないさ、みんな生きる事に精一杯なのさ……それより見ているか? 家族を故郷を厄災に奪われた悲しみを、惣一郎殿が変えたんだ! みんなを笑顔に!』
『すまない…スワロ…… お前の事も……』
『凄いな~ 惣一郎殿は! きっと惣一郎殿に憧れ、後を追う者も…… いつか厄災が脅威にならない、そんな世界になるだろう……』
『スワロ…… 待て、待ってくれスワロ!』
『ありがとう惣一郎殿! 故郷を守ってくれて』
『まだ話が! スワロ!』
『ありがとう……を救ってく……て………』
『待ってくれスワロ!』
『ありがとう………私を…くれ………て』
『スワロ!』
『あり…が……と……ぅ』
『スワローーーーー』
「惣一郎様」
「スワロ!」
「えっ! いえ、惣一郎様?」
セシルがサーズリからの連絡を知らせる。
音楽が聞こえ、宴が続いている。
惣一郎は頬を触るが、濡れてもいない。
「すまん、一瞬寝てた様だ…… で、なんだって?」
セシルの話では、どうやら一度ギルド本部に顔を出してほしいと言う、サーズリからの頼みであった。
夢だったのか……
「大丈夫ですか?」
「ああ、えっとギルド本部か……」
するとネイが、
「本部は、北西に遠くゼルダンと言う国にあります。もちろん施設から一瞬で行けますが、雪国で1年を通してとても寒い国ですので、どうか暖かい格好で」
「本部がそんな、不便そうな雪国に?」
「ええ、不便だからこそ、強く生きる人が多いのです」
「そんなもんですかね~」
「はい! そんなもんです…… ウフフ!」
小悪魔の様な笑みを浮かべるネイは、可愛かった。
「じゃ、まぁ、お呼ばれしますか!」
セシルに返事を頼み、明日にでも行くとベンゾウ達にも知らせてもらう。
そのベンゾウと弁慶は、街のみんなと焚き火を囲み、楽しそうに踊っていた。
「笑顔を作るか……」
惣一郎は就活で、病院の面接で言った自分のセリフを思い出していた。
涙ぐむネイが、惣一郎達を迎える。
「ただいま戻りました」
惣一郎達がオーミサの街に戻ったのは、ビルゲンと別れた次の日であった。
「ギルドから…… 連絡を受けております。ありがとう…… 本当にありがとうございます」
「まだ終わった訳じゃない、でしょ!」
「はい! そうですね… すいません私ったら…… グスン。 瓦礫の撤去はまだ終わりが見えません。ですが、近隣から避難して来た人も増え、支援物資も絶えず届いております。この街はコレからです!」
「ええ! 手伝いますよ」
惣一郎は大量の瓦礫を、アイテムボックスに仕舞い、飛んで街の外へ運ぶ。
だが、遺体も瓦礫と混ざり収納してしまう事も多かった。
ボックスの中では、遺体と瓦礫が区分けされる為、遺体は外に掘られた穴の前に並べると、行方不明者を探す者が、集まりだす。
家族の悲痛の叫びを聞き、やるせない気持ちでまた、回収に向かう惣一郎。
弁慶は、力仕事を請負い、ベンゾウも撤去が難しい瓦礫を細かく切り刻む。
セシルは大量の炊き出しを作り始め、クロの荷車で屋台を始める。
屋台の料理を食べた者は、力が湧くと、元気を取り戻す。
翌日には、ほぼ撤去を終えていた。
ささやかながら惣一郎達を感謝する宴が開かれる。
次々と感謝の言葉をかけられる惣一郎は、歯痒い思いで聞いていた。
別れを悲しむ者、再会を喜ぶ者、再出発に意欲を燃やす者、そして全てを失い絶望する者。
みんなが踊りで足並みを揃え、酒で悲しみを洗い流す。
ささやかではあったが、惣一郎は一生忘れないだろう。
厄災の被害から人々を守る事が、自分に出来るのなら、出来る限り協力しようと心に決める。
惣一郎の目の前には、焚き火を囲み、逞しく笑い踊る人々がいた。
『……惣一郎殿 ……惣一郎殿!』
真っ白な世界が広がる。
『惣一郎殿!』
白い世界で後ろから声がする。
聞き覚えのある声が。
慌てて振り返る惣一郎は、涙が溢れ出し声が震える。
『スワロ……』
『惣一郎殿、凄いではないか! みんなが笑顔だぞ! 見ろ、惣一郎殿が作った笑顔だ』
『すまなかった…… スワロ……俺のせいで』
『誰のせいでもないさ、みんな生きる事に精一杯なのさ……それより見ているか? 家族を故郷を厄災に奪われた悲しみを、惣一郎殿が変えたんだ! みんなを笑顔に!』
『すまない…スワロ…… お前の事も……』
『凄いな~ 惣一郎殿は! きっと惣一郎殿に憧れ、後を追う者も…… いつか厄災が脅威にならない、そんな世界になるだろう……』
『スワロ…… 待て、待ってくれスワロ!』
『ありがとう惣一郎殿! 故郷を守ってくれて』
『まだ話が! スワロ!』
『ありがとう……を救ってく……て………』
『待ってくれスワロ!』
『ありがとう………私を…くれ………て』
『スワロ!』
『あり…が……と……ぅ』
『スワローーーーー』
「惣一郎様」
「スワロ!」
「えっ! いえ、惣一郎様?」
セシルがサーズリからの連絡を知らせる。
音楽が聞こえ、宴が続いている。
惣一郎は頬を触るが、濡れてもいない。
「すまん、一瞬寝てた様だ…… で、なんだって?」
セシルの話では、どうやら一度ギルド本部に顔を出してほしいと言う、サーズリからの頼みであった。
夢だったのか……
「大丈夫ですか?」
「ああ、えっとギルド本部か……」
するとネイが、
「本部は、北西に遠くゼルダンと言う国にあります。もちろん施設から一瞬で行けますが、雪国で1年を通してとても寒い国ですので、どうか暖かい格好で」
「本部がそんな、不便そうな雪国に?」
「ええ、不便だからこそ、強く生きる人が多いのです」
「そんなもんですかね~」
「はい! そんなもんです…… ウフフ!」
小悪魔の様な笑みを浮かべるネイは、可愛かった。
「じゃ、まぁ、お呼ばれしますか!」
セシルに返事を頼み、明日にでも行くとベンゾウ達にも知らせてもらう。
そのベンゾウと弁慶は、街のみんなと焚き火を囲み、楽しそうに踊っていた。
「笑顔を作るか……」
惣一郎は就活で、病院の面接で言った自分のセリフを思い出していた。
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