異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付

文字の大きさ
上 下
333 / 409
十五章

二十二話 【笑顔】

しおりを挟む
「惣一郎様! おかえりなさい」

涙ぐむネイが、惣一郎達を迎える。

「ただいま戻りました」

惣一郎達がオーミサの街に戻ったのは、ビルゲンと別れた次の日であった。

「ギルドから…… 連絡を受けております。ありがとう…… 本当にありがとうございます」

「まだ終わった訳じゃない、でしょ!」

「はい! そうですね… すいません私ったら…… グスン。 瓦礫の撤去はまだ終わりが見えません。ですが、近隣から避難して来た人も増え、支援物資も絶えず届いております。この街はコレからです!」

「ええ! 手伝いますよ」




惣一郎は大量の瓦礫を、アイテムボックスに仕舞い、飛んで街の外へ運ぶ。

だが、遺体も瓦礫と混ざり収納してしまう事も多かった。

ボックスの中では、遺体と瓦礫が区分けされる為、遺体は外に掘られた穴の前に並べると、行方不明者を探す者が、集まりだす。

家族の悲痛の叫びを聞き、やるせない気持ちでまた、回収に向かう惣一郎。

弁慶は、力仕事を請負い、ベンゾウも撤去が難しい瓦礫を細かく切り刻む。

セシルは大量の炊き出しを作り始め、クロの荷車で屋台を始める。

屋台の料理を食べた者は、力が湧くと、元気を取り戻す。




翌日には、ほぼ撤去を終えていた。

ささやかながら惣一郎達を感謝する宴が開かれる。

次々と感謝の言葉をかけられる惣一郎は、歯痒い思いで聞いていた。

別れを悲しむ者、再会を喜ぶ者、再出発に意欲を燃やす者、そして全てを失い絶望する者。

みんなが踊りで足並みを揃え、酒で悲しみを洗い流す。

ささやかではあったが、惣一郎は一生忘れないだろう。

厄災の被害から人々を守る事が、自分に出来るのなら、出来る限り協力しようと心に決める。

惣一郎の目の前には、焚き火を囲み、逞しく笑い踊る人々がいた。




『……惣一郎殿 ……惣一郎殿!』

真っ白な世界が広がる。

『惣一郎殿!』

白い世界で後ろから声がする。

聞き覚えのある声が。

慌てて振り返る惣一郎は、涙が溢れ出し声が震える。

『スワロ……』

『惣一郎殿、凄いではないか! みんなが笑顔だぞ! 見ろ、惣一郎殿が作った笑顔だ』

『すまなかった…… スワロ……俺のせいで』

『誰のせいでもないさ、みんな生きる事に精一杯なのさ……それより見ているか? 家族を故郷を厄災に奪われた悲しみを、惣一郎殿が変えたんだ! みんなを笑顔に!』

『すまない…スワロ…… お前の事も……』

『凄いな~ 惣一郎殿は! きっと惣一郎殿に憧れ、後を追う者も…… いつか厄災が脅威にならない、そんな世界になるだろう……』

『スワロ…… 待て、待ってくれスワロ!』

『ありがとう惣一郎殿! 故郷を守ってくれて』

『まだ話が! スワロ!』

『ありがとう……を救ってく……て………』

『待ってくれスワロ!』

『ありがとう………私を…くれ………て』

『スワロ!』

『あり…が……と……ぅ』

『スワローーーーー』



「惣一郎様」

「スワロ!」

「えっ! いえ、惣一郎様?」

セシルがサーズリからの連絡を知らせる。

音楽が聞こえ、宴が続いている。

惣一郎は頬を触るが、濡れてもいない。

「すまん、一瞬寝てた様だ…… で、なんだって?」

セシルの話では、どうやら一度ギルド本部に顔を出してほしいと言う、サーズリからの頼みであった。

夢だったのか……

「大丈夫ですか?」

「ああ、えっとギルド本部か……」

するとネイが、

「本部は、北西に遠くゼルダンと言う国にあります。もちろん施設から一瞬で行けますが、雪国で1年を通してとても寒い国ですので、どうか暖かい格好で」

「本部がそんな、不便そうな雪国に?」

「ええ、不便だからこそ、強く生きる人が多いのです」

「そんなもんですかね~」

「はい! そんなもんです…… ウフフ!」

小悪魔の様な笑みを浮かべるネイは、可愛かった。

「じゃ、まぁ、お呼ばれしますか!」

セシルに返事を頼み、明日にでも行くとベンゾウ達にも知らせてもらう。

そのベンゾウと弁慶は、街のみんなと焚き火を囲み、楽しそうに踊っていた。

「笑顔を作るか……」

惣一郎は就活で、病院の面接で言った自分のセリフを思い出していた。






しおりを挟む
感想 67

あなたにおすすめの小説

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

処理中です...