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十五章

二十一話 【さよならを言わせて】

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テントの外ではセシルが、オロオロしていた。

「あっ、惣一郎様! 大変です、ゴリラング・ログの皆さんが!」

「ああ、行くってさ!」

「ご存じで? エルさんが騒いでましたが」

やっぱり……

「まぁ、また会えるさ!」

「ええ、ツナマヨさんも同じ様な事を」

遠くに馬車が消えていく。

「さよならが苦手なのだろう」

っと、ビルゲンが呟く。




グラサーナから魔石を取り出し、テントに戻る。

セシルの話では、義勇軍が着くのは明日だそうだ。

のんびりセシルと、作り置きの料理をしながら待つ事にする。

地球産の食材にも大分慣れたセシル。

勉強熱心であった。

弁慶とふたり、ハンバーグ位なら作れるほどに。

バオはニコニコと弓を磨く。

ビルゲンはテーブルで頬杖をつきながら、料理をする惣一郎を見ていた。

「なあ、惣一郎様。その腕は一体どうなってるんだい」

「あぁ、あのダンジョンを出た後、戦闘で失ってな! でもまだある気がして、使ってたら生えて来た」

「いや、そんな濃い魔力を、どうやって形成し続けていられるのか、杖も無しに…… 普通拡散すると思うんだが」

「さぁ~ やったら出来たって感じで理屈はわからんのよ」

すると弓を磨きながら、バオが、

「光矢も、矢を形成するのは魔力ですからね~ 似た様な理由なのかも知れませんね」

確かに……

「だが、魔法陣も詠唱もなく出しているのだぞ! 当たり前の様に」

「まぁ、確かに異常ではありますよね~」

無詠唱って事か?

「ご主人様~ クロ喋らなくなっちゃったよ」

テントの入り口で包帯を巻かれたクロの顔に、スナック菓子を押し付けるベンゾウが、急に話しかけて来た。

「あれ、魔力でも切れたか? クロ! 喋ってみろ」

「惣一郎、貴様が喋るなと言ったのだろう!」

「ありゃ、マジで?」

「喋った~!」

「主従関係にある、貴様の命令は絶対なのだ。今後くれぐれも気安く……」

「黙れ!」

「………」

「「「「 おおおお~ 」」」」

「よし!」

「なっ! だから気安く命令するなと言うておるだろうが!」

「「「「 おおおお~ 」」」」

芸を仕込もうと決める、惣一郎であった。



翌日、ガルドとイミーナが先に訪れて来た。

「凄いな…… この数を本当にやってのけるとは……」

「惣一郎殿、約束通り子供達を無事避難所へお連れしました。約束の品を!」

「えっ? ああ、あれ、ふたりだけ?」

「本隊は後だ、到着は夕刻になるであろう! 私は早く、愛しの妻の顔が見たくてな!」

「私は下着を……」

「誰が妻じゃ誰が! 僕にはもう惣一郎様が!」

「ビルゲン様、相手にしてはいけません!」

溜め息を吐く惣一郎は、ベンゾウと弁慶にテントで、みんなのサイズを測る様に頼む。

外のテーブルでガルドに、男性用の下着を数点見繕い並べる。

予想通り、ガルドは惣一郎のチョイスした下着に大喜びする。

ナルシストな感じするもんな~

詳細は…… 興味ない。



テントから測り終えたと声がするので、喜ぶガルドを無視して、中に入る。

サイズに合わせたお洒落な高級下着を大量に置き、「色の希望があれば、後で聞く」っとまたテントを出る。

セシルも一緒だった。

「セシルは良いのか?」

「私は前に頂いたのがありますので」

まだ4つに絞れないガルドに、

「全部やるよ、残っても俺にそんな趣味は無い」

喜び跳ねるガルド。

「さすが我がライバル! 私が王位を継いだ暁には、其方にこの国での商売特権を与えよう!」

あっそ…… なんのライバルだよ。

「惣一郎様、次はどちらに?」

「ん~ 決めてないが何処にせよ、オーミサの街に戻る必要があるだろうな~」

「そうですね、施設はあそこだけですからね」

「下着を選び終えたら、後はこの国のビルゲン達に任せて、戻ろう」

すると両腕に選んだ下着を持ったビルゲンが、後ろから声をかける。

「行ってしまうのか、こんな早く?」

「ああ、後はこの国の問題だ、俺たちは次の厄災にそ…」

下着を落とし、惣一郎の胸に飛び込むビルゲン。

「惣一郎様…… 僕も、僕も一緒に行きたい!」

止めようとするガルドを、バオが黙って止める。

「ビルゲン、お前にはまだ、やらなきゃいけない事があるだろ」

良いムードだが、ビルゲンの方が背が高い。

絵面的にしまらない惣一郎は、ビルゲンの肩を持ち、引き離す。

「ノイタジア家復興を待つ人々の為に、頑張って来たんだろ! こんな所で投げ出していい訳がないだろ」

「惣一郎様……」

………


「おい惣一郎! この娘なんとかせぬか!」

ムードをぶち壊したのは、女性下着を身につけたクロであった。

「ケラケラケラ、ご主人様、ク、クロが! ケラケラケラ」

溜め息を吐くバオ。

惣一郎とビルゲンは、笑っていた。








銀の舟に乗り、飛び立つ惣一郎達を見送るビルゲンとバオ。

「バオ、僕……女王になるよ、この国の女王に!」

「はい! 何処までもお供します、ビルゲン様」

元ゼリアオールスが、ノイタジア王国と名を変え惣一郎の耳に届くのは、そんな先の話ではなかった。




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