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十五章
十八話 【魔法契約】
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『惣一郎様! 北東よりまた別の群れです!』
『了解、ビルゲンに風刃を北東に向けて撃つ様に伝えてくれ』
惣一郎は結界を張りながら、また無数の袋を上空に飛ばす。
「ハァハァハァハァハァハァ…… 楽しい」
「アホ! いい加減休め!」
『セシル、クロにツナマヨの回収を頼んでくれ』
惣一郎は結界の中にツナマヨを入れる。
「ハァハァハァハァ、素晴らしい、ハァハァ素晴らしいぞ、惣一郎殿! この兼房虎徹、これだ、まさにこれが求めていた剣だ、ハァハァ」
取り憑かれたか?
「まだまだ来るぞ、一旦休め!」
嫌々荷車に乗せられるツナマヨが、休憩所へと戻って行く。
「ご主人様! さっきのチョコバー、もう一個ちょうだい!」
「お前、俺の結界にすんなり入って来るなよ! つか戦闘中だろ!」
そう言いながらも、チョコバーを渡す惣一郎。
緊張感が無い……
すると遠くで、大きな赤い影が動く。
「おい、弁慶でかくなってないか?」
「うん、楽しいって言ってた。モグモグ」
どうなってんだ?
「ベンゾウは、まだ行けるか?」
「うん! 全然余裕~ もう一個ちょうだい」
お前は……
最初に見せた厄災の勢いも徐々に弱まり、草原は、死骸で埋め尽くされていた。
クロの荷車が近付いてきて、トーマ達を運ぶ。
「惣一郎殿、代わりましょう! 十分休みました」
「俺らもまだ行ける、このまま畳み掛けよう!」
散開して、みんな生き生きと戦う。
あ、弁慶が萎んだ!
『セシル、弁慶回収!』
飛ぶ厄災がいなくなる頃には、陽は傾いていた。
バオ達も木から降りて、生き残りがいないかの確認作業に入る。
広い草原を埋め尽くす倒れた厄災。
この確認作業の方が時間がかかりそうだった。
「サーチ使ったら?」
それな!
作業を終え、無事怪我人も無く厄災討伐が終了した頃には、すっかり夜になっていた。
テントで全員にクリーンをかけて、武器を回収する…… が、やはり、みんな渋り出した。
「頼む! 幾らでも払う!」
「この身を捧げてもいい!」
「ダメだ、約束だろ! 武器は全て回収する」
「そこを曲げてお願いします!」
「悪いが、この世界には余る武器だ! 持ってちゃいけない物なんだよ。今回は非常事態という事で、特別に貸したんだ、諦めてくれ」
「ベンゾウさん達は、持ってるじゃないですか」
「ベンゾウ奴隷だもん、ご主人様の所有物!」
「では、私も奴隷契約を!」
「いい加減にしろ! やり合う気か! 強い武器を持てば狙われる事もある。お前達は武器を守る強さを持ってるのか!」
切れた惣一郎に皆、黙り込む。
昼間の戦闘を見ていたからだろう……
肩を落とし、この世の終わりといった表情でわかりやすく落ち込む。
だが、目の前のご馳走を味見させて、あげないってのも…… ん~
「………人々の為に使うか?」
その場の全員に、天から光が射す。
「私利私欲に溺れず、助けを求める人々の為に使うと誓えるか?」
「「「 もちろんだ! 」」」
「武器の出所を決して明かさず、誰にも譲ら無いと誓えるか?」
「「「 ああ! もちろんだ! 」」」
「もし破ったら、俺が天罰を下すぞ」
するとセシルが、
「惣一郎様、でしたらどうでしょう? 魔法契約をされては」
「魔法契約?」
「はい、ビルゲンさんもいる事ですし、命を賭けた契約ならご安心かと」
「ああ、それだ! 喜んで僕は契約を結ぼう!」
約束を違えると命を奪う魔法契約。
おまけに死んだ時も、結んだ相手には分かるという。
「わかった、武器は魔法契約を結んだものにだけ、貸し出そう! いいか貸すんだからな、無期限で貸すだけ! ここ大事!」
結局全員が契約を結んだ。
誰かが死んだら武器を回収し、届けるという条件も加えて。
ツナマヨには、兼房虎徹を。
トーマには、強化アクリル樹脂の盾と防具を。
ギコルには、千住院大和物を。
ビルゲンとエルには、惣一郎特製、超々ジュラルミンの杖を。
バオとゴザには、アルミカーボンの弓を。
正義の為に使って欲しいと……
その日は皆疲れただろうと、軽い食事で早く寝る事にした。
事件は翌朝起きた。
『了解、ビルゲンに風刃を北東に向けて撃つ様に伝えてくれ』
惣一郎は結界を張りながら、また無数の袋を上空に飛ばす。
「ハァハァハァハァハァハァ…… 楽しい」
「アホ! いい加減休め!」
『セシル、クロにツナマヨの回収を頼んでくれ』
惣一郎は結界の中にツナマヨを入れる。
「ハァハァハァハァ、素晴らしい、ハァハァ素晴らしいぞ、惣一郎殿! この兼房虎徹、これだ、まさにこれが求めていた剣だ、ハァハァ」
取り憑かれたか?
「まだまだ来るぞ、一旦休め!」
嫌々荷車に乗せられるツナマヨが、休憩所へと戻って行く。
「ご主人様! さっきのチョコバー、もう一個ちょうだい!」
「お前、俺の結界にすんなり入って来るなよ! つか戦闘中だろ!」
そう言いながらも、チョコバーを渡す惣一郎。
緊張感が無い……
すると遠くで、大きな赤い影が動く。
「おい、弁慶でかくなってないか?」
「うん、楽しいって言ってた。モグモグ」
どうなってんだ?
「ベンゾウは、まだ行けるか?」
「うん! 全然余裕~ もう一個ちょうだい」
お前は……
最初に見せた厄災の勢いも徐々に弱まり、草原は、死骸で埋め尽くされていた。
クロの荷車が近付いてきて、トーマ達を運ぶ。
「惣一郎殿、代わりましょう! 十分休みました」
「俺らもまだ行ける、このまま畳み掛けよう!」
散開して、みんな生き生きと戦う。
あ、弁慶が萎んだ!
『セシル、弁慶回収!』
飛ぶ厄災がいなくなる頃には、陽は傾いていた。
バオ達も木から降りて、生き残りがいないかの確認作業に入る。
広い草原を埋め尽くす倒れた厄災。
この確認作業の方が時間がかかりそうだった。
「サーチ使ったら?」
それな!
作業を終え、無事怪我人も無く厄災討伐が終了した頃には、すっかり夜になっていた。
テントで全員にクリーンをかけて、武器を回収する…… が、やはり、みんな渋り出した。
「頼む! 幾らでも払う!」
「この身を捧げてもいい!」
「ダメだ、約束だろ! 武器は全て回収する」
「そこを曲げてお願いします!」
「悪いが、この世界には余る武器だ! 持ってちゃいけない物なんだよ。今回は非常事態という事で、特別に貸したんだ、諦めてくれ」
「ベンゾウさん達は、持ってるじゃないですか」
「ベンゾウ奴隷だもん、ご主人様の所有物!」
「では、私も奴隷契約を!」
「いい加減にしろ! やり合う気か! 強い武器を持てば狙われる事もある。お前達は武器を守る強さを持ってるのか!」
切れた惣一郎に皆、黙り込む。
昼間の戦闘を見ていたからだろう……
肩を落とし、この世の終わりといった表情でわかりやすく落ち込む。
だが、目の前のご馳走を味見させて、あげないってのも…… ん~
「………人々の為に使うか?」
その場の全員に、天から光が射す。
「私利私欲に溺れず、助けを求める人々の為に使うと誓えるか?」
「「「 もちろんだ! 」」」
「武器の出所を決して明かさず、誰にも譲ら無いと誓えるか?」
「「「 ああ! もちろんだ! 」」」
「もし破ったら、俺が天罰を下すぞ」
するとセシルが、
「惣一郎様、でしたらどうでしょう? 魔法契約をされては」
「魔法契約?」
「はい、ビルゲンさんもいる事ですし、命を賭けた契約ならご安心かと」
「ああ、それだ! 喜んで僕は契約を結ぼう!」
約束を違えると命を奪う魔法契約。
おまけに死んだ時も、結んだ相手には分かるという。
「わかった、武器は魔法契約を結んだものにだけ、貸し出そう! いいか貸すんだからな、無期限で貸すだけ! ここ大事!」
結局全員が契約を結んだ。
誰かが死んだら武器を回収し、届けるという条件も加えて。
ツナマヨには、兼房虎徹を。
トーマには、強化アクリル樹脂の盾と防具を。
ギコルには、千住院大和物を。
ビルゲンとエルには、惣一郎特製、超々ジュラルミンの杖を。
バオとゴザには、アルミカーボンの弓を。
正義の為に使って欲しいと……
その日は皆疲れただろうと、軽い食事で早く寝る事にした。
事件は翌朝起きた。
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