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十五章

九話 【迷子?】

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話を聞いていたセシルの額に、汗が光る。

弁慶の口が開き、ベンゾウは惣一郎を凝視する。

その惣一郎の目は、泳いでいた。

「さ、さぁ! ゴマセの町へ向かおうか!」

「もう? 雨は小降りだが、急ぐ必要あるのか?」

「善は急げってね! あははは」



惣一郎達は、サンドイッチを口に詰め込むと、雨ガッパを配り、また歩き出した。



岩場の為、歩きで丘を越える惣一郎達。

ゴリラング・ログのみんなは小雨の中、岩場を馬を引くのに忙しそうであった。

先頭を歩く惣一郎にセシルが、

「惣一郎様、どうされるのですか?」

「どうするも何も、俺が魔王ですなんて、言えないだろ! 刀あげて居ない魔王を追いかけて行ってもらうしかないだろう」

「ですが、勇者と共にって事は、勇者も何処かにいて惣一郎様を狙ってるという事ですよね! 共闘される前に懐柔しておいた方がいいのではないでしょうか?」

あれ? セシルにベンゾウが勇者って、ちゃんと言ってなかったんだっけ?

解放するとか言ってたし、曖昧にしといた方がいいのかな~

「まぁ、その時はその時で!」

セシルには、やる気のない返事に思えたのだろう、不安そうな表情で黙り込む。

両手にサンドイッチを持った雨ガッパの勇者が、楽しそうにクロと追い越して行く。

まぁ~ ある意味、常にベンゾウに狙われてる惣一郎は、ふと、弁慶に聞く。

「まさか弁慶も夢に、おっさんが出て来てたりしないよな?」

「よく出るぞ! 昨夜も嫌がるアタイの胸を旦那様は……♡」

聞いた俺が馬鹿だった……





また雨脚が強くなる頃、ぬかるんだ道の先に町が見えて来る。

魔物避けの金属の柵が巡らされたゴマセの町は、人の気配がしないゴーストタウンとなっていた。

「惣一郎様、ギルドの許可は出ているので、またギルドの中庭をお借りしましょう」

「うん、そうだね! で、どこ?」

「えっ、さぁ?」

取り敢えず、中心地を目指す。

誰もいない大通りを進んで行くと、閉まった店の影に小さな人影が見えた。

「ご主人様~ 誰かいるよ!」

「ああ、俺も見た!」

影のいた場所を見ると、店の中から盗んだのか、食べ物が散乱していた。

「火事場泥棒か、けしからんな!」

「旦那様……いたぞ」

弁慶の向く方を見ると、小さな女の子の手を握る小さな男の子が、道の向こうからこちらを見ていた。

「逃げ遅れたのじゃろうか?」

あれ、エル、話し方戻った?

ベンゾウが潰れたサンドイッチを胸元から出し、犬を呼ぶ様に口笛を吹く。

ゴツン!

惣一郎のゲンコツが落ちると、セシルがココは任せてください!っと前に出る。

「何者ですか! 用があるならちゃんと……」

ゴツン!

「ははは、ここはアタイの出番だな! もっと子供の興味ある物で勝負しないとな!」

妙な自信の弁慶。

ゲンコツの用意は出来ていたが……

「……………」

マッスルポーズの弁慶。

「何してるの?」

「あれ? 子供は筋肉好きだろ!」




白い大きなクロに、目を輝かせる子供達は、徐々に近付き、綺麗な白い毛を撫で始める。

俺はこの時の、犬のドヤ顔を一生忘れないだろう。

「乗ってみるか?」

「「 うん! 」」

クロの背に2人の子供を乗せると、トコトコ歩き出すクロ。

歩きながら惣一郎は、

「親はどうしたんだ?」

っと、尋ねる。

返事は「いない」だけだった。

「なぁ~ せめてなんか言ってくれよ!」

落ち込む弁慶……




食べ物で口の周りを汚していたふたりに、クリーンをかけて質問を続ける。

「ふたりだけなのか?」

「町のみんなと避難しなかったのか?」

「親がいないって、はぐれたのか?」

答えは全て「わかんない」だった。

「孤児なのかも知れんな、避難すら知らされなかったのだろう」

着ている服を見ての予想は、当たっているだろう。

するとエルが、

「放っておく訳にはいきませんね。厄災が来るかも知れない町に、幼い子供を」

あれ、また戻った?

惣一郎はこの子達なら、ギルドの場所を知ってるかも知れないと、目線を合わせて話しかける。

「お兄さん達ギルドを探してるんだけど、何処にあるか知ってるかい?」

「「 クククッ クスクス ケラケラ 」」

「お兄さんって…… ぷっ」

「おーし! 全員かかってこい!」



雨の中、鉄球と悲鳴が町に響いていた。




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