異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

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十五章

七話 【浅い考え】

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明け方、雨ガッパを着たふたりが北の空から帰って来た。

「旦那様!!」

熱烈歓迎のベアハッグ!

帰る早々、意識を飛ばしかける惣一郎だった。

「みんな、すまなかった! 寝過ごしちゃって」

弁慶に抱えられたままの締まらない挨拶。

惣一郎は雨の中、すぐにテントを出してみんなにクリーンをかけると、中のテーブルに食料を並べる。

冒険者として1日2日食べなくても問題ない彼らだが、惣一郎の食事が食えないのは耐えがたい物になっていた。

「食いながら聞いてくれ、厄災の数が不明なんだ、北で俺たちが倒したのは300近かったが、また北東に数十匹現れている。今捜査中だが、奴らは何処か一箇所を目指しているかも知れないらしい! そこで取り敢えず、俺たちも西へ目指してみよう! 奴らが移動していた方角へ。だがそれは……」

「待ち受けるという事は、相当数が予想されると言う事だな!」

「そう言う事だ! 降りるか?」

「冗談! 我々ゴリラング・ログ全員、惣一郎殿に付いて行くぞ!」

弁慶が笑みを浮かべる。

すると馬車の方から、声が聞こえて来る。

テントを出ると、数人の村人が馬車に向かって声をかけていた。

「どなたか居りませんか?」

「どうした?」

背後から声をかけ、驚かれる惣一郎。

「おお、貴方は! 先日は失礼を、本当だったのですね……」

入り口の厄災の死骸は、そのままだった。

「ああ、みんな避難してくれたおかげで、被害が出なくて良かったよ! だが、まだここを通る可能性がある! もう暫く避難していた方がいい」

「ええ、全て信じます。ありがとう…… それと、コレをお返ししたくて」

惣一郎が置いて行った麻袋だった。

「我々の為に知らせてくれた貴方を、あの時は信じる事が出来ず、本当申し訳ない……」

「それは気にしなくていい! こうして無事で何よりだ!」

「ありがとうございます。我々は南西の洞窟に身を隠しております! ですが急な避難で物資が少なく、様子見がてら残した食料などを取りに参りました」

「なるほど、厄災の大半は東の森で倒した。今なら雨だし、多少の時間なら大丈夫だろう! 運べるだけ運ぶといい!」

村人は惣一郎に麻袋を返すと感謝して、残った食糧や家畜などを、運び始めた。

惣一郎達も手伝い、村人を見送ると、西を目指し雨の中進み始める。

アイツら訛らなくても話せるじゃん!



セシルは、

『やはりこのお方は、私の知る魔王とかけ離れている…… 見知らぬ方々への慈愛に満ちた心。この国をも救おうと、なんの迷いも見せずに危険も厭わない勇気。これではまるで、まるで私がそれまで信仰して来たセルロス神そのものでは…… ですが、団長さんに時折見せるあの目は邪悪その物…… 見極めなければ……』




惣一郎が買った大型犬用の雨カッパが小さく、お尻丸出しのクロを先頭に、雨ガッパを着込んだゴザとギコルが、馬車の御者席で騒いでいた。

「なんで濡れないんだ!」

「魔法なのか?」

「この不思議な魔導具といい、力漲る飯といい、旅が快適過ぎるぞ! 俺、ジビカガイライに入ろうかな……」

「バカ! 目的があるだろう! ゴリラング・ログへ惣一郎殿に入ってもらうんだ!」

「あはは、なるほどな! でも……」

「まぁ、そうなんだがな……」

『『 団長が身売りでもしないとな~ 』』




西へ進むにつれ次第に雨は弱まって行くが、雨で濡れた泥道は徐々に悪くなって行き、車輪が埋まり出す。

「これ以上、荷車では進めないな……」

荷車を降りる惣一郎の足は、くるぶしまで泥に埋まる。

惣一郎は荷車を、アイテムボックスに仕舞い、歩くしかないと、馬車のみんなに伝える。

馬車も収納し、エルとツナマヨ、セシルとベンゾウが、二頭の馬に乗り、他はぬかるんだ泥道を歩き出す。

だが少し歩いた所で惣一郎がキレる!

「だぁ~! 歩きづら!」

考えた惣一郎は馬なら問題無く進めるならばと、大きな鉄板を出し前を曲げると、ソリの様に馬に繋ぐ!

「これなら滑って行けるだろう!」

トーマが惣一郎の浅知恵に不安を覚える。

「そんな上手くいきますかね~」

「まぁ、やってみるさ!」

惣一郎の思惑は上手くいき、滑る様に進む。

歩くよりは全然早い!

だが……



馬に乗る、ツナマヨが振り返り、

「先に岩場が見える! あそこで休まない……か……」

ツナマヨが見た物は、馬に蹴り上げられた泥を被り、泥の塊と化した弁慶と男達であった。

「そんな気は…っぺ、してました……」

「歩くよりは楽だろ…… ぺっ!」




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