異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

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十五章

六話 【信頼】

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次に惣一郎が気が付くと、テントの外は真っ暗であった。

どの位寝たのだろう?

ベッドで惣一郎は上半身裸の状態で、裸のベンゾウが抱きつき寝息を立てている。

サカリでも来たのかコイツ……

「ん……あっ! ご主人様起きたの、もう平気?」

「平気って何が? 俺が平気かどうか俺の方から聞きたいわ!」

「あれから、凄い熱でうなされてて! ずっと寝てたんだよ! 寒い寒いって震えて!」

ん?

「ずっとって? 俺はどの位寝てたんだ?」

「まる1日」

「へ? まる1日寝てた?」

「良かった~ もぅ心配したんだからね! ご主人様!」

体は…… 軽い?

全く記憶がないが……

「って! まる1日!! 弁慶達は?」

「ご主人様しか、連絡取れないでしょ!」

それもそうだ!

惣一郎は、慌ててコールを飛ばす。

『惣一郎様! やっとお声を!』

『済まない! なんか寝過ごしたらしくって』

『ホント心配しました! あれから全然連絡も取れなくて、朝には流石に、北へ探しに向かう所でした』

『ホント済まない! すぐにそっちへ向かうよ!』

『ええ、報告もいくつかあるのですが……』

『先に聞こう!』

『はい、昨日サーズリから連絡が入り、北東にある[ケアラの町]が厄災に襲われました。やはりまだ他にもいたようです。数十匹の厄災は町を襲う最中降り出した雨をいやがり、建物の中で休眠状態だそうです。コチラはすでに避難が済んでいたので、人的被害は無いそうです』

『キリが無いな…… 何か作戦を考えないと。他には?』

『それと、義勇軍と名乗る元ゼリアオールスの冒険者達による軍が、そのケアラの町に向かっているそうで、到着は3日後位になるかと』

『義勇軍か…… サーズリに止める様に言ってくれ』

『はい! それと最後に、まだ未確認の情報なのですが、どうやら厄災はバラバラに、同じ方角を目指していたかも知れないと』

『ただ食いもん探して移動してる訳じゃ無かったと? それが本当なら待ち伏せできるんだが』

『今、確認中との事ですが、連絡取れるギルドが少ない状況で、難航しているそうです』

『なるほど、了解した。兎に角今から戻る! 朝には着くので、待機しててくれ! 以上』

『わかりました、お気をつけて。以上』

コールを切ると、ベッドから出る惣一郎。

「ご主人様、連絡取れた?」

「ああ、心配してるそうだ! 早く戻ろう! それと…… ありがとうな、ベンゾウ」

「へへ♡ 旅を始めた頃みたいで、楽しかったよ! ご主人様とふたりっきりは」

「アハハ! 今じゃ大所帯だしな!」

テントの中で、ふたりの影が重なる。

雨はまだ降っていた。







「弁慶さん! 連絡が取れました!」

「旦那様は無事か!」

「はい! 朝には戻ると! 魔力消費が激しかったのでしょう、眠り続けてしまったそうです」

「そうか…… 良かった、無事で!」

馬車から天幕を広げ、雨宿りしている弁慶達は、惣一郎の無事に、ホッと胸を撫で下ろす。

「こんな物しか食べるものが無いが、食べておいた方がいい」

「勝手に村の物に手を出す訳にもいかんじゃろ」

「団長はまだ寝てるのか?」

「ああ、団長も魔力使い切ってたからな」

すると馬車の扉が開き、団長が降りてくる。

「いや、起きてるぞ! 私は十分寝た、見張りを代ろう」



焚き火を囲み、雨の音しかしない村の入り口で、夜の見張りをかって出たツナマヨ。

片時も離さず抱く日本刀を見て、呟く。

「もう手放せん…… これだけは……」

その呟きに反応する弁慶。

「相当気に入った様だな」

「ああ、正に探し求めていた剣だ」

「カタナって言うらしいぞ。まぁ、旦那様は欲の無いお方だ! 頼んでみる事だな」

「弁慶殿。見逃して貰えないだろうか……」

「行く気なのか?」

「我々には目的がある! その為に今までやって来たんだ…… コレさえあれば……」

「悪いな! 旦那様は貸すと言ったんだ。それを今持って行くと言うなら、全力で阻止する」

弁慶はマジックポーチから、侃護斧を出す。

「すまん、言ってみただけだ。其方らと構える気は毛頭無いよ」

「目的が何か知らんが、一ついい事を教えてやろう!」

「ほう、何かな?」

「そのカタナ…… もっと上があるぞ!」

「なっ! 本当なのか!!」

「旦那様に聞け! あの人と会えた事が、貴様にとっての一番の幸運だろう。ここで貴様がそれを持って逃げても、きっと旦那様は追いもしない。心は痛めるがな。だが、貴様が旦那様の信頼を得れば、そんなカタナ霞む程の恩恵があるだろう! その目的とやらもあるいは……」

「一体何者なのだ……」

「それは貴様が決めろ! アタイにとっては掛け替えのない、最高の旦那様だ!」

それからツナマヨは刀を見つめ、ずっと黙っていた。




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