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十五章
一話 【爪痕】
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眩しい光に慣れた頃、景色がぼんやりと見えだす。
石が重なる壁が見え、誰かが立っていた。
徐々に光が弱まり、暗くなっていく室内。
「ようこそ、お待ち申し上げておりました」
羊の様な曲がったツノを生やす女性が、惣一郎達に軽く会釈すると、
「ジビカガイライの皆様ですね! ここはゼリアオールス中心地から北に位置する[オーミサの街跡]にございます。私はギルド特別室オーミサ支部室長の[ネイ]」
「あっ、はじめまして、惣一郎です。よろしくお願いします…… 街跡?」
「ええ、ご案内します。どうぞこちらへ」
魔法陣が描かれた部屋を出て、洞窟の様な通路を進むと、広い空間に大勢の人が座り、暗い顔をしていた。
避難民だろうか?
その中を通り抜け、さらにいくつかの部屋を通ると長い階段が現れる。
木箱を弁慶と持ち、階段を登って行くと、物資を運ぶ人たちとすれ違う。
「ネイ様、食料はコレで最後かと……」
「そうですか…… 外の様子は?」
「ええ、奴らあらかた食い尽くしたのか、もう姿はありません。西に向かったとの報告も」
「わかりました。連絡が入るまで、なんとかそれで耐えるしかありませんね」
狭い階段をなんとかすれ違い、また登り始める。
転移陣のあった部屋は、随分と地下深い場所だったのだろう。
ようやく登り切ると、朝日が入口を照らし、警備の者が「ネイ様!」っと声をかける。
「ご苦労様です。少し街に出ますので、あとを頼みます」
っとネイが答え、惣一郎達を外へ案内する。
外は無惨にも、崩れ去った街が広がっていた。
建物はほぼ崩壊しており、瓦礫が道を塞ぎ、以前は立派な街だったであろう面影を、朝日が照らしていた。
「遅かったか……」
「少し…… ですが終わりではありません。犠牲は少なくないですが、それでも多くの者がいくつかの地下に逃れ、生き残っております」
逞しい言葉であった。
二日前、突如大群で襲って来た厄災は、あらゆる物を食い散らかし、人を襲い、建物の木造部分まで齧り尽くすと、また突如として飛び去っていったそうだ。
惣一郎は、その場でテントを出し、木箱から出す5人をベッドへ寝かす様、弁慶とセシルに頼むと、理喪棍を掲げサーチを唱える。
「ベンゾウ、クロ! 南西に560m、生き埋めの生存者だ! 急いでくれ」
ワン!
「他にもまだ、ネイ! 人手を出してくれ! 弁慶! やっぱその5人も叩き起こせ!」
「は、はい!」
「わかった!」
寝ぼけた顔の頬を赤く腫らし、手で押さえながらテントから出てくる5人は、
「何事なんだ…… 何も殴らなくても……何処?」
「説明は後だ! 手伝ってくれ!」
理解が出来ない5人は惣一郎の指示で、取り敢えず動き出す。
「惣一郎様、私は」
「セシルと弁慶は、食糧を!」
以外にもテキパキと仕切り、指示を出す惣一郎。
惣一郎は以前、震災を経験した事を思い出していた。
何も出来なかったあの時とは違う。
サーチがあるし仲間もいる。
惣一郎は22名を救い、セシルが怪我人の手当てをし、弁慶とベンゾウが豚汁とおにぎりを配る。
「惣一郎殿、我々はいつの間に、ゼリアオールスへ来たのだ?」
「話すと長いので金取るぞ! それより落ち着いたら直ぐ西に向かうから、準備をしてくれ!」
「だが、馬車はあるが、馬がいないぞ!」
「馬は我々が、手配しましょう。惣一郎様! なんとお礼を言えば良いか」
「礼はいいんだが、厄災の移動が早すぎる! このままじゃ後手にしか回れないんだ、連絡は?」
「西にある[ナキの村]は連絡のしようがないのです! その先の[ゴマセの町]には避難を呼びかけてあります。今の所、まだ厄災は姿を見せないそうですが……」
「距離は?」
「ゴマセまでは、馬で4日!」
「セシル! サーズリに連絡して、ギルドからの情報を集めてもらってくれ! 奴らの進路を予測して先回りしたい」
「わかりました!」
「惣一郎様、大魔導士惣一郎様のサーチ、昨夜お聞かせくださいました、その杖の魔石に、ここにいるみんなの魔力を合わせても、届きませんか?」
「誰だお前は!」
いや待てよ……
「エル、天才じゃん!」
モジモジ…… ♡
石が重なる壁が見え、誰かが立っていた。
徐々に光が弱まり、暗くなっていく室内。
「ようこそ、お待ち申し上げておりました」
羊の様な曲がったツノを生やす女性が、惣一郎達に軽く会釈すると、
「ジビカガイライの皆様ですね! ここはゼリアオールス中心地から北に位置する[オーミサの街跡]にございます。私はギルド特別室オーミサ支部室長の[ネイ]」
「あっ、はじめまして、惣一郎です。よろしくお願いします…… 街跡?」
「ええ、ご案内します。どうぞこちらへ」
魔法陣が描かれた部屋を出て、洞窟の様な通路を進むと、広い空間に大勢の人が座り、暗い顔をしていた。
避難民だろうか?
その中を通り抜け、さらにいくつかの部屋を通ると長い階段が現れる。
木箱を弁慶と持ち、階段を登って行くと、物資を運ぶ人たちとすれ違う。
「ネイ様、食料はコレで最後かと……」
「そうですか…… 外の様子は?」
「ええ、奴らあらかた食い尽くしたのか、もう姿はありません。西に向かったとの報告も」
「わかりました。連絡が入るまで、なんとかそれで耐えるしかありませんね」
狭い階段をなんとかすれ違い、また登り始める。
転移陣のあった部屋は、随分と地下深い場所だったのだろう。
ようやく登り切ると、朝日が入口を照らし、警備の者が「ネイ様!」っと声をかける。
「ご苦労様です。少し街に出ますので、あとを頼みます」
っとネイが答え、惣一郎達を外へ案内する。
外は無惨にも、崩れ去った街が広がっていた。
建物はほぼ崩壊しており、瓦礫が道を塞ぎ、以前は立派な街だったであろう面影を、朝日が照らしていた。
「遅かったか……」
「少し…… ですが終わりではありません。犠牲は少なくないですが、それでも多くの者がいくつかの地下に逃れ、生き残っております」
逞しい言葉であった。
二日前、突如大群で襲って来た厄災は、あらゆる物を食い散らかし、人を襲い、建物の木造部分まで齧り尽くすと、また突如として飛び去っていったそうだ。
惣一郎は、その場でテントを出し、木箱から出す5人をベッドへ寝かす様、弁慶とセシルに頼むと、理喪棍を掲げサーチを唱える。
「ベンゾウ、クロ! 南西に560m、生き埋めの生存者だ! 急いでくれ」
ワン!
「他にもまだ、ネイ! 人手を出してくれ! 弁慶! やっぱその5人も叩き起こせ!」
「は、はい!」
「わかった!」
寝ぼけた顔の頬を赤く腫らし、手で押さえながらテントから出てくる5人は、
「何事なんだ…… 何も殴らなくても……何処?」
「説明は後だ! 手伝ってくれ!」
理解が出来ない5人は惣一郎の指示で、取り敢えず動き出す。
「惣一郎様、私は」
「セシルと弁慶は、食糧を!」
以外にもテキパキと仕切り、指示を出す惣一郎。
惣一郎は以前、震災を経験した事を思い出していた。
何も出来なかったあの時とは違う。
サーチがあるし仲間もいる。
惣一郎は22名を救い、セシルが怪我人の手当てをし、弁慶とベンゾウが豚汁とおにぎりを配る。
「惣一郎殿、我々はいつの間に、ゼリアオールスへ来たのだ?」
「話すと長いので金取るぞ! それより落ち着いたら直ぐ西に向かうから、準備をしてくれ!」
「だが、馬車はあるが、馬がいないぞ!」
「馬は我々が、手配しましょう。惣一郎様! なんとお礼を言えば良いか」
「礼はいいんだが、厄災の移動が早すぎる! このままじゃ後手にしか回れないんだ、連絡は?」
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「距離は?」
「ゴマセまでは、馬で4日!」
「セシル! サーズリに連絡して、ギルドからの情報を集めてもらってくれ! 奴らの進路を予測して先回りしたい」
「わかりました!」
「惣一郎様、大魔導士惣一郎様のサーチ、昨夜お聞かせくださいました、その杖の魔石に、ここにいるみんなの魔力を合わせても、届きませんか?」
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いや待てよ……
「エル、天才じゃん!」
モジモジ…… ♡
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