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十四章
十四話 【冒険者のプライド】
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急ぎ街を出た惣一郎達。
だが出てすぐにまた面倒な雰囲気が流れ出す。
ザザロウに入る前に出会った冒険者が、馬車と馬に乗り凄い形相で向かってくる。
「飛んで逃げるか……」
「あの顔、ずっと追いかけて来ますよ」
「だよな~」
「キサマーーー! よくも謀ったな!」
女冒険者が怒りまくって杖を振り回す。
馬を降り言い寄る女に、弓を背中に担いだエルフが「[エル]やめなさい!」っと、止めようとする。
「止めるなゴザ! 此奴、嘘をいいおって!」
血の気の多い女性だ。
その女の頭を掴み、持ち上げる弁慶。
「キサマ! 旦那様を嘘つき呼ばわりするとは!」
「痛い痛い痛い!」
遅れて馬車が止まり、中から歴戦の猛者を思わせる黒髪に前髪だけ白髪の女性が降りて来る。
「よさぬか! エル」
軽装の鎧にスカートから伸びる脚には、赤い金属の脛当てが目立つこの女性、40前後だろうか惣一郎のど真ん中を射抜いていた。
「でも団長!」
「うちの者が済まない! 私はチーム、ゴリラング・ログの団長を努める[ツナマヨ]と言う」
「素敵なお名前ですね♡ えっ? ツナマヨ?」
「流石に知れているか、ギルドでもそれなりに名が通っているからな」
いやいや、元の世界でよく聞く名前で……
「初めまして、美しいおねえ様! わたくしジビカガイライの惣一郎と申します! ここであったのも何かの縁、お茶でも飲みませんか?」
すぐさま荷車を降りてテーブルを出す惣一郎。
ベンゾウはおでこに手を置いて肩を落とす。
あちゃー
「何がお茶だ! 離せ! デカ女! イタタタタタタ!」
「弁慶さん、うるさいからそんなの捨ててきなさい! ささ、ツナマヨ様! こちらへ」
驚いた顔のセシルが「誰ですか、あの人は?」っと惣一郎を見る。
馬車から大男と長い剣を持った少年も降りて来て、異常な光景に固まる。
惣一郎はやかんに入った水出しの麦茶と人数分のコップをセシルに渡すと、自分のテーブルには豪華なティーセットで淹れた紅茶を注ぐ。
「いや~ こんな所で噂に名高いツナマヨ様にお会いできるなんて、これはもう運命ですかね~」
「えっ、いや、我々が追いかけて来たんだが……」
困惑する団長の顔がやや赤い。
「いだ!」
手から力が抜けローブの女を落とす弁慶。
「旦那様! また発作か!」
落ちたエルは尻を摩りながら、
「オイ! ジビカガイライ! よくも嘘を教えてくれおって! 行ったら既に厄災は解体されておったぞ!」
「ご主人様は場所を聞かれて教えただけだよ」
「そ、それならそれで普通言うじゃろ! もう倒した後だとか」
すると団長のツナマヨがため息を吐き、
「やはりエルの早とちりか。まずは故郷の礼を言わないとだな。我らの故郷ザザンドを救ってくれ感謝する」
「そんな、お礼だなんて結婚し「ご主人様! いい加減にするの!」モゴモゴ!」
ベンゾウに口を塞がれた惣一郎は、そのまま弁慶に抱き抑えられ浮き上がる。
「彼は大丈夫なのか?」
「なんでもないよ! ちょっと発作が!」
「プハ! 何が発作だ! 離せ弁慶!」
「話を続けても良いのか?」
するとまだ地面に尻を置くエルと言うローブの女が、
「団長! こんなふざけた奴、もうやっちゃいましょうよ!」
っと威嚇する。
「ほぉ~ 何をやっちゃうんだ?」
弁慶の惣一郎を抱く腕に力が入る。
ケフォ!っと息を漏らす惣一郎。
「よさんかエル! 済まない! 我々もこの国が厄災の被害にあると聞いて急ぎ帰国したのだが、ギルドが特例で厄災討伐を依頼した冒険者がいると聞いてな。しかもクランではなく、たった1チームに! 我らも長年冒険者としてやって来たが、故郷の危機にまさか我らではなく、新参者のチームに依頼するとはギルドもやきが回ったのだと追いかけて来たんだが…… まさか本当に厄災を倒してしまうとは」
「そうでしたか、僕を心配して追いかけて来てくれるなグフッ! く、くる…し……い」
「まぁ、我々のプライドが傷ついただけで、故郷は無事に済んだのだ、改めて礼を言うよ」
「ど…う……いたし…ま…して」
「団長! いいんですかこのままで!」
「ああ、誰が倒しても良いではないか、救われる者がいれば!」
「「「 団長~ 」」」
「騒がせて済まなかったな! 惣一郎。だが次は負けんぞ! 我らも厄災討伐を目標に行くのでな!」
するとセシルが、
「では、あなた方もゼリアオールスへ?」
「「 馬鹿! 」」
慌ててセシルの口を塞ぐベンゾウ。
だが遅かった。
「ほぉ~ 次は旧ゼリアオールスか!」
弁慶が慌てて惣一郎に助けを求めるが、腕の中で泡を吹いていた。
「旦那様!」
「決めた、決めたぞ! 惣一郎よ! 我らゴリラング・ログはジビカガイライに付いていくぞ!」
「「 旦那様~ ご主人様~! 」」
「えっ…… 団長?」
だが出てすぐにまた面倒な雰囲気が流れ出す。
ザザロウに入る前に出会った冒険者が、馬車と馬に乗り凄い形相で向かってくる。
「飛んで逃げるか……」
「あの顔、ずっと追いかけて来ますよ」
「だよな~」
「キサマーーー! よくも謀ったな!」
女冒険者が怒りまくって杖を振り回す。
馬を降り言い寄る女に、弓を背中に担いだエルフが「[エル]やめなさい!」っと、止めようとする。
「止めるなゴザ! 此奴、嘘をいいおって!」
血の気の多い女性だ。
その女の頭を掴み、持ち上げる弁慶。
「キサマ! 旦那様を嘘つき呼ばわりするとは!」
「痛い痛い痛い!」
遅れて馬車が止まり、中から歴戦の猛者を思わせる黒髪に前髪だけ白髪の女性が降りて来る。
「よさぬか! エル」
軽装の鎧にスカートから伸びる脚には、赤い金属の脛当てが目立つこの女性、40前後だろうか惣一郎のど真ん中を射抜いていた。
「でも団長!」
「うちの者が済まない! 私はチーム、ゴリラング・ログの団長を努める[ツナマヨ]と言う」
「素敵なお名前ですね♡ えっ? ツナマヨ?」
「流石に知れているか、ギルドでもそれなりに名が通っているからな」
いやいや、元の世界でよく聞く名前で……
「初めまして、美しいおねえ様! わたくしジビカガイライの惣一郎と申します! ここであったのも何かの縁、お茶でも飲みませんか?」
すぐさま荷車を降りてテーブルを出す惣一郎。
ベンゾウはおでこに手を置いて肩を落とす。
あちゃー
「何がお茶だ! 離せ! デカ女! イタタタタタタ!」
「弁慶さん、うるさいからそんなの捨ててきなさい! ささ、ツナマヨ様! こちらへ」
驚いた顔のセシルが「誰ですか、あの人は?」っと惣一郎を見る。
馬車から大男と長い剣を持った少年も降りて来て、異常な光景に固まる。
惣一郎はやかんに入った水出しの麦茶と人数分のコップをセシルに渡すと、自分のテーブルには豪華なティーセットで淹れた紅茶を注ぐ。
「いや~ こんな所で噂に名高いツナマヨ様にお会いできるなんて、これはもう運命ですかね~」
「えっ、いや、我々が追いかけて来たんだが……」
困惑する団長の顔がやや赤い。
「いだ!」
手から力が抜けローブの女を落とす弁慶。
「旦那様! また発作か!」
落ちたエルは尻を摩りながら、
「オイ! ジビカガイライ! よくも嘘を教えてくれおって! 行ったら既に厄災は解体されておったぞ!」
「ご主人様は場所を聞かれて教えただけだよ」
「そ、それならそれで普通言うじゃろ! もう倒した後だとか」
すると団長のツナマヨがため息を吐き、
「やはりエルの早とちりか。まずは故郷の礼を言わないとだな。我らの故郷ザザンドを救ってくれ感謝する」
「そんな、お礼だなんて結婚し「ご主人様! いい加減にするの!」モゴモゴ!」
ベンゾウに口を塞がれた惣一郎は、そのまま弁慶に抱き抑えられ浮き上がる。
「彼は大丈夫なのか?」
「なんでもないよ! ちょっと発作が!」
「プハ! 何が発作だ! 離せ弁慶!」
「話を続けても良いのか?」
するとまだ地面に尻を置くエルと言うローブの女が、
「団長! こんなふざけた奴、もうやっちゃいましょうよ!」
っと威嚇する。
「ほぉ~ 何をやっちゃうんだ?」
弁慶の惣一郎を抱く腕に力が入る。
ケフォ!っと息を漏らす惣一郎。
「よさんかエル! 済まない! 我々もこの国が厄災の被害にあると聞いて急ぎ帰国したのだが、ギルドが特例で厄災討伐を依頼した冒険者がいると聞いてな。しかもクランではなく、たった1チームに! 我らも長年冒険者としてやって来たが、故郷の危機にまさか我らではなく、新参者のチームに依頼するとはギルドもやきが回ったのだと追いかけて来たんだが…… まさか本当に厄災を倒してしまうとは」
「そうでしたか、僕を心配して追いかけて来てくれるなグフッ! く、くる…し……い」
「まぁ、我々のプライドが傷ついただけで、故郷は無事に済んだのだ、改めて礼を言うよ」
「ど…う……いたし…ま…して」
「団長! いいんですかこのままで!」
「ああ、誰が倒しても良いではないか、救われる者がいれば!」
「「「 団長~ 」」」
「騒がせて済まなかったな! 惣一郎。だが次は負けんぞ! 我らも厄災討伐を目標に行くのでな!」
するとセシルが、
「では、あなた方もゼリアオールスへ?」
「「 馬鹿! 」」
慌ててセシルの口を塞ぐベンゾウ。
だが遅かった。
「ほぉ~ 次は旧ゼリアオールスか!」
弁慶が慌てて惣一郎に助けを求めるが、腕の中で泡を吹いていた。
「旦那様!」
「決めた、決めたぞ! 惣一郎よ! 我らゴリラング・ログはジビカガイライに付いていくぞ!」
「「 旦那様~ ご主人様~! 」」
「えっ…… 団長?」
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