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十四章
三話 【着港ザザンド】
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船長の薬が効いた様で、大分楽になった惣一郎は、天井から紐で吊るされたベッドから、数日ぶりに出る。
床に立つと、また違った揺れに平衡感覚が狂わされる。
「ご主人様、大丈夫? 薬効いた?」
「あぁ、だいぶ楽になったよ」
船長にもらった薬はよく効いた。
ネットショップスキルで購入した地球産の酔い止めを飲んではいたが、あまり効果はなかった。
やはり地球産が異世界で効果が上がる様に、異世界の物は惣一郎に、効果が大きいのだろうか?
そこへ弁慶が、部屋に戻って来る。
「旦那様! 平気か!」
「ああ、心配かけたな」
心配そうに見る弁慶の顔より、惣一郎はその弁慶が手に持つ物に興味があった。
「なんだそれ?」
「ああ、今さっき他の船と交船があってな、買い物が出来たので、旦那様に何か食べやすい物でもとな」
「交船?」
聞けば海では、たまに航路ですれ違う船と物資の交換などが海上でおこなわれる事があるらしい。
「へぇ~ まだいるのか?」
「残念だったな、今さっき航路に戻って行った所だ。買い物が間に合って良かった」
喋りながらも弁慶は、テーブルに買ったものを広げて、何やら切り出す。
「ベンゾウは、見に行かなかったのか?」
「ご主人様ひとりに出来ないでしょう」
あら? この子ったら。
弁慶が、果物らしい物を切り分け、皿に盛る手際は、やはり見た目からは想像出来ないほど小慣れていた。
「食べやすく栄養のある[ヲルト]の実だ。コレなら旦那様も食えるだろう」
見た目キウイに似ていたが、味は甘いスイカで、水分が多く、今の惣一郎には美味く感じた。
コンコン!
ドアをノックして、セシルが入って来る。
「惣一郎様、もう起きて大丈夫なのですか?」
「ああ、早く船を降りたいよ」
「回復なされて良かった! 予定では、あと二日ほどだそうです。それで、今しがたザザンドから来た船と交船があり、新たな情報が入ったので、起きていればと、報告に来たのですが」
「なんかわかったの?」
「ええ、厄災は西へ移動中との事で、また村が襲われたそうです」
「そうか、急がないとな……」
「船が向かう港に近付いて来ているそうで、緑の巨大な厄災は、今の所一匹しか目撃されてないそうです」
群れるタイプじゃないのかな?
「特徴とかは?」
「船員の話では、緑の巨大な厄災としか」
「そうか、ありがとう」
特徴が分かれば準備もできたんだが……
「そういえば、リヴォイ達は?」
「……それが」
「どうした?」
「襲われたと言う村が、お二人の故郷らしく」
「……そうか」
今はそっとしておこう。
惣一郎はまた、ぶら下がったベッドへ戻っていった。
慌ただしい気配に目が覚めると、ハンドベルが鳴り響く。
どうやら着いた様だ。
部屋を片付け、甲板に出る惣一郎。
久しぶりの陽の光に、目を細める。
「惣一郎殿! 薬は効いたかな?」
「船長、お陰様で助かったよ!」
「ははは、あまりいい船旅にはならなかった様だな!」
「ええ、正直もう懲り懲りです」
「ガハハハ! そのうち慣れるさ! 世話になったな、気をつけてな、惣一郎殿!」
「ええ、お世話になりました。船長もお元気で!」
港の沖から、小舟に乗りコーライ大陸のザザンドに入った。
船着場には、ギルド職員が出迎えに来ていた。
床に立つと、また違った揺れに平衡感覚が狂わされる。
「ご主人様、大丈夫? 薬効いた?」
「あぁ、だいぶ楽になったよ」
船長にもらった薬はよく効いた。
ネットショップスキルで購入した地球産の酔い止めを飲んではいたが、あまり効果はなかった。
やはり地球産が異世界で効果が上がる様に、異世界の物は惣一郎に、効果が大きいのだろうか?
そこへ弁慶が、部屋に戻って来る。
「旦那様! 平気か!」
「ああ、心配かけたな」
心配そうに見る弁慶の顔より、惣一郎はその弁慶が手に持つ物に興味があった。
「なんだそれ?」
「ああ、今さっき他の船と交船があってな、買い物が出来たので、旦那様に何か食べやすい物でもとな」
「交船?」
聞けば海では、たまに航路ですれ違う船と物資の交換などが海上でおこなわれる事があるらしい。
「へぇ~ まだいるのか?」
「残念だったな、今さっき航路に戻って行った所だ。買い物が間に合って良かった」
喋りながらも弁慶は、テーブルに買ったものを広げて、何やら切り出す。
「ベンゾウは、見に行かなかったのか?」
「ご主人様ひとりに出来ないでしょう」
あら? この子ったら。
弁慶が、果物らしい物を切り分け、皿に盛る手際は、やはり見た目からは想像出来ないほど小慣れていた。
「食べやすく栄養のある[ヲルト]の実だ。コレなら旦那様も食えるだろう」
見た目キウイに似ていたが、味は甘いスイカで、水分が多く、今の惣一郎には美味く感じた。
コンコン!
ドアをノックして、セシルが入って来る。
「惣一郎様、もう起きて大丈夫なのですか?」
「ああ、早く船を降りたいよ」
「回復なされて良かった! 予定では、あと二日ほどだそうです。それで、今しがたザザンドから来た船と交船があり、新たな情報が入ったので、起きていればと、報告に来たのですが」
「なんかわかったの?」
「ええ、厄災は西へ移動中との事で、また村が襲われたそうです」
「そうか、急がないとな……」
「船が向かう港に近付いて来ているそうで、緑の巨大な厄災は、今の所一匹しか目撃されてないそうです」
群れるタイプじゃないのかな?
「特徴とかは?」
「船員の話では、緑の巨大な厄災としか」
「そうか、ありがとう」
特徴が分かれば準備もできたんだが……
「そういえば、リヴォイ達は?」
「……それが」
「どうした?」
「襲われたと言う村が、お二人の故郷らしく」
「……そうか」
今はそっとしておこう。
惣一郎はまた、ぶら下がったベッドへ戻っていった。
慌ただしい気配に目が覚めると、ハンドベルが鳴り響く。
どうやら着いた様だ。
部屋を片付け、甲板に出る惣一郎。
久しぶりの陽の光に、目を細める。
「惣一郎殿! 薬は効いたかな?」
「船長、お陰様で助かったよ!」
「ははは、あまりいい船旅にはならなかった様だな!」
「ええ、正直もう懲り懲りです」
「ガハハハ! そのうち慣れるさ! 世話になったな、気をつけてな、惣一郎殿!」
「ええ、お世話になりました。船長もお元気で!」
港の沖から、小舟に乗りコーライ大陸のザザンドに入った。
船着場には、ギルド職員が出迎えに来ていた。
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