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十三章
十七話 【お抱え冒険者】
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惣一郎の元にサヴォイとリヴォイが来たのは、夕方の事だった。
船の手配を済ませ、戻って来たふたりは、惣一郎が目隠しをしてる姿に驚く。
「惣一郎殿、これは?」
「ああ、ちょっと魔法の練習をね」
目隠しをした惣一郎の後ろで、汗をかき息を切らす弁慶が、手に棒を持って立っていた。
ブンブン棒を振り回し、惣一郎に殴りかかるが、器用に避ける惣一郎。
「塚原卜伝みたいでしょ!」
「つか? ぼく? なんですそれ?」
「あはは、何でも無い忘れて~」
大分慣れて来たのか惣一郎には、弁慶が攻撃する瞬間から何処を狙うかまで解る様になっていた。
「くっそ! 何で当たんないんだ!」
まさか、周りの状況を見るだけのサーチの魔法にここまで実用性があるとは惣一郎本人にも、これは嬉しい誤算であった。
「よし、今度こそ! こい! ベンゾウ!」
攻撃出来ないベンゾウは、惣一郎に触れるだけという条件であった。
「行くよ、ご主人様!」
トントンと軽く跳ねるベンゾウが、残像を残し消えると、棒を持った惣一郎が右に横殴りに振り抜く! が手応えは無い。
集中し、感覚を研ぎ澄まし右に左に体を向けるが、全て遅かった。
「ダメだ~! くそ、わかっててもベンゾウの速さに、ついていけない!」
「ケラケラケラ、ご主人様に5回も触ったよ!」
「だが、2回は避けたぞ!」
「フェイントです」
「嘘つけ!」
口を開けたまま、言葉が出ないサヴォイとリヴォイだった。
「惣一郎殿、いつもあの様な訓練を?」
外にテーブルを出し、夕食を弁慶と作る惣一郎が「たまたまだ」っと答える。
「そういえば、もう1人はどうしたんだ? えっと…… ほら魔法を使ってた」
「トーチですか? 彼は怪我で引退し実家の店を手伝ってます」
「そっか、残念だな」
「冒険者ですから」
惣一郎は、夕飯のハンバーグをサヴォイ達にも出し、みんなで夕食を食べる。
初めて食べる料理にふたりとセシルは、驚きながら美味い美味いと食べていた。
お腹をさすりながらリヴォイが、
「こんな美味いもの初めて食べましたよ。固い肉を細かく潰して焼くなんて発想、一体どこから」
「ああ、こりゃ王都でも絶対売れるぜ……ゲフ」
「惣一郎殿、俺らの故郷をどうか、よろしくお願いします! 道中何でもしますので、遠慮なく言ってくださいね!」
その後、お茶を飲みながらサヴォイ達の故郷ザザンドの街の事や、街までのルートなど、わかってる範囲で情報を聞くことになった。
だが、ふたりもまだ故郷が厄災に襲われてる話を聞いてまだ間もなく、その厄災に関する情報だけは無かった……
出発は二日後、港から船で向かうこととなり、惣一郎はそれまで、作り置きの料理を作り過ごす事になる。
そして、出発当日の朝。
ギルマスのサーズリが港まで見送りに来る。
「惣一郎殿、厄災討伐よろしくお願いします。我々ギルドも今後、厄災に関する情報が入り次第、惣一郎殿に連絡しますので、どうぞこちらを」
そう言うとサーズリが、割れた魔石のついたブローチの様なものを渡して来る。
「世界中のギルドが、今後ジビカガイライの皆様を全力で支援します。何かあればこれで連絡いただければ、私が全力で支援し手配いたしますので、何でも言ってください! また世界中の何処で厄災による被害が出ても、私に情報が集まる様に、今動いております。その時はご連絡しますので、どうかよろしくお願いします」
「はぁ~ スローライフが…… まぁ仕方ないか、サーズリ! 俺はあんたを信用し存分にギルドも利用させてもらうよ! だから、裏切るなよ」
「心得ております。決して立場を利用したり無理強いする様な事は致しません! あくまで情報を集め伝える事に徹しますよ! それに、ギルドお抱えの話が広まれば、各国も迂闊に手を出して来ません! 惣一郎殿が懸念する様な事にならない様に、ギルドがお守りするとお考え下さい」
先日サーズリが提案して来た話であった。
ギルドが厄災討伐を請け負い、俺に依頼する形だが、メリットも大きかった。
世界中のギルドを特別待遇で利用でき、宿の心配も無いし、秘密もある程度守ってくれる。
情報も集まりやすくなるし、国も手出し出来なくなる。
ギルドも世界中の国との交渉の場で、優位になるだろう。
俺は厄災を倒す依頼に専念して世界中をのんびり旅出来るし、サーズリはギルドでも大出世する事になるだろう……
まぁ、嫌なら辞めればいいだけだしと、サーズリの提案を受ける事にした。
「すっげ~っす! すげ~っすよ! 惣一郎さん! 世界中のギルドに指名依頼される様なもんじゃないっすか! 冒険者として、絶対の信頼を受けたって事っすよ!」
お前、キャラ変わってないか? サヴォイくん。
「事実、惣一郎殿はギルドが認めた冒険者の頂点みたいなもんですよ! かっけ~!」
お前もか? リヴォイくん……
「お前ら! その頂点とこれから冒険をするんだ、セルロイの冒険者代表として、多くの事を学んで来い! 迷惑かけんなよ」
「「「 うっす! 」」」
ベンゾウ、お前は違うだろ……
大所帯になった惣一郎達は船に乗り込み、コーライ大陸にあるサヴォイ達の故郷、ザザンドを目指す!
鳴り響くハンドベルの音の中、新たな目的の旅が始まる。
船の手配を済ませ、戻って来たふたりは、惣一郎が目隠しをしてる姿に驚く。
「惣一郎殿、これは?」
「ああ、ちょっと魔法の練習をね」
目隠しをした惣一郎の後ろで、汗をかき息を切らす弁慶が、手に棒を持って立っていた。
ブンブン棒を振り回し、惣一郎に殴りかかるが、器用に避ける惣一郎。
「塚原卜伝みたいでしょ!」
「つか? ぼく? なんですそれ?」
「あはは、何でも無い忘れて~」
大分慣れて来たのか惣一郎には、弁慶が攻撃する瞬間から何処を狙うかまで解る様になっていた。
「くっそ! 何で当たんないんだ!」
まさか、周りの状況を見るだけのサーチの魔法にここまで実用性があるとは惣一郎本人にも、これは嬉しい誤算であった。
「よし、今度こそ! こい! ベンゾウ!」
攻撃出来ないベンゾウは、惣一郎に触れるだけという条件であった。
「行くよ、ご主人様!」
トントンと軽く跳ねるベンゾウが、残像を残し消えると、棒を持った惣一郎が右に横殴りに振り抜く! が手応えは無い。
集中し、感覚を研ぎ澄まし右に左に体を向けるが、全て遅かった。
「ダメだ~! くそ、わかっててもベンゾウの速さに、ついていけない!」
「ケラケラケラ、ご主人様に5回も触ったよ!」
「だが、2回は避けたぞ!」
「フェイントです」
「嘘つけ!」
口を開けたまま、言葉が出ないサヴォイとリヴォイだった。
「惣一郎殿、いつもあの様な訓練を?」
外にテーブルを出し、夕食を弁慶と作る惣一郎が「たまたまだ」っと答える。
「そういえば、もう1人はどうしたんだ? えっと…… ほら魔法を使ってた」
「トーチですか? 彼は怪我で引退し実家の店を手伝ってます」
「そっか、残念だな」
「冒険者ですから」
惣一郎は、夕飯のハンバーグをサヴォイ達にも出し、みんなで夕食を食べる。
初めて食べる料理にふたりとセシルは、驚きながら美味い美味いと食べていた。
お腹をさすりながらリヴォイが、
「こんな美味いもの初めて食べましたよ。固い肉を細かく潰して焼くなんて発想、一体どこから」
「ああ、こりゃ王都でも絶対売れるぜ……ゲフ」
「惣一郎殿、俺らの故郷をどうか、よろしくお願いします! 道中何でもしますので、遠慮なく言ってくださいね!」
その後、お茶を飲みながらサヴォイ達の故郷ザザンドの街の事や、街までのルートなど、わかってる範囲で情報を聞くことになった。
だが、ふたりもまだ故郷が厄災に襲われてる話を聞いてまだ間もなく、その厄災に関する情報だけは無かった……
出発は二日後、港から船で向かうこととなり、惣一郎はそれまで、作り置きの料理を作り過ごす事になる。
そして、出発当日の朝。
ギルマスのサーズリが港まで見送りに来る。
「惣一郎殿、厄災討伐よろしくお願いします。我々ギルドも今後、厄災に関する情報が入り次第、惣一郎殿に連絡しますので、どうぞこちらを」
そう言うとサーズリが、割れた魔石のついたブローチの様なものを渡して来る。
「世界中のギルドが、今後ジビカガイライの皆様を全力で支援します。何かあればこれで連絡いただければ、私が全力で支援し手配いたしますので、何でも言ってください! また世界中の何処で厄災による被害が出ても、私に情報が集まる様に、今動いております。その時はご連絡しますので、どうかよろしくお願いします」
「はぁ~ スローライフが…… まぁ仕方ないか、サーズリ! 俺はあんたを信用し存分にギルドも利用させてもらうよ! だから、裏切るなよ」
「心得ております。決して立場を利用したり無理強いする様な事は致しません! あくまで情報を集め伝える事に徹しますよ! それに、ギルドお抱えの話が広まれば、各国も迂闊に手を出して来ません! 惣一郎殿が懸念する様な事にならない様に、ギルドがお守りするとお考え下さい」
先日サーズリが提案して来た話であった。
ギルドが厄災討伐を請け負い、俺に依頼する形だが、メリットも大きかった。
世界中のギルドを特別待遇で利用でき、宿の心配も無いし、秘密もある程度守ってくれる。
情報も集まりやすくなるし、国も手出し出来なくなる。
ギルドも世界中の国との交渉の場で、優位になるだろう。
俺は厄災を倒す依頼に専念して世界中をのんびり旅出来るし、サーズリはギルドでも大出世する事になるだろう……
まぁ、嫌なら辞めればいいだけだしと、サーズリの提案を受ける事にした。
「すっげ~っす! すげ~っすよ! 惣一郎さん! 世界中のギルドに指名依頼される様なもんじゃないっすか! 冒険者として、絶対の信頼を受けたって事っすよ!」
お前、キャラ変わってないか? サヴォイくん。
「事実、惣一郎殿はギルドが認めた冒険者の頂点みたいなもんですよ! かっけ~!」
お前もか? リヴォイくん……
「お前ら! その頂点とこれから冒険をするんだ、セルロイの冒険者代表として、多くの事を学んで来い! 迷惑かけんなよ」
「「「 うっす! 」」」
ベンゾウ、お前は違うだろ……
大所帯になった惣一郎達は船に乗り込み、コーライ大陸にあるサヴォイ達の故郷、ザザンドを目指す!
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