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十三章

十二話 【生き方に迷う聖女】

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翌朝目を覚ますと、テントの入り口で、クロと向き合うセシル。

「おはよ、寝てないのか?」

「おはようございます。少し休ませて頂きました」

「何してんの?」

「外の空気を吸おうと思ったのですが……」

なるほど……


一緒に外に出て、朝日を浴びる惣一郎。

「ゴキコロリ様、昨夜は取り乱してしまい、申し訳ありませんでした」

「気にすんな」

「私はこれから、どうすればいいのでしょうか……」

「何処か行く当てはないのか?」

「ええ、幼い頃からずっと聖女として教会にいたもので」

「ガイロンから渡された荷物に、金も入ってるって言ってたぞ! 当面は生きていけるだろう。何かしたい事でも探すといい」

他の生き方を知らない少女に、いきなり一人で生きていけは正直可哀想だが、それでもガイロンは、生きていてほしいと願ったのだろう。

惣一郎はテントに戻り、朝食の準備を始める。



魚の焼ける匂いで目を覚ますふたり。

クリーンをかけると、準備を手伝い出す。

朝食は焼き魚と煮物、ご飯と豆腐の味噌汁。

ベンゾウは魚を骨ごとバリバリ食べ、弁慶は箸で器用に骨を取る。

セシルも夕飯を食べてなかったから、初めての和食を美味いと食べていた。

魔王と勇者と聖女が一緒に朝食を摂る、シュールな風景だった。



食事を終えるとテントを仕舞い、以前にも通った道で、港町セルロイを目指す。

前回は、トークンの村、ギゾの町、ルドの街を通り、セルロイへと巡ったが、今回は、追手が来るとは思えないが聖女を知る者もいるだろうしと、真っ直ぐセルロイを目指す。

なので惣一郎は、荷車ではなく舟を出し、みんなで乗り込む。

セシルは、意味が分からず戸惑っていたが、クロとベンゾウの間に乗り、言われるがまま理喪棍を握る。

高度をあげ東へ飛び立つ舟は、聖女の悲鳴を空へ響かせ、凄い速さで進んで行く。


しばらく飛ぶとベンゾウが、

「ご主人様!」

「ん? どうした」

「魔力が減らない」

そういえば……

聖女のセシルも理喪棍を握ってるし、魔力が多いのかな?

惣一郎は自分の異常にまだ、気付かないでいた。



その後も魔力が尽きる気配もなく、ルドの街を通り過ぎ、大きな森を過ぎると、遠くに海が見えて来る。

そろそろケツが痛い。

まだ昼にもなっていなかった。

高度を下げ、港町の手前で降りる。

ふらふらするセシルが地面に座り込み、

「な、なんなんですか…… 空を飛ぶなんて…… 聞いてません……よ」

いきなりの長距離飛行で、気を失うセシル。

「旦那様、アタイの魔力が全然減ってないんだが」

「ベンゾウも!」

「ん~ セシルがいたからかな~?」

そう言えば、マイズから王都を往復しても全然平気だった様な……

荷車を出して、セシルを乗せると、港町セルロイへ歩き出す。

俺の魔力、増えたのかな?



町の入り口に着くと門番が、荷車のセシルを見て、

「おいおい、堂々と誘拐か?」

「ちゃうわ! おい、起きろセシル! 身分証!」

起きたセシルが、混乱しながらポーチから身分証を出す。

教会発行の聖職者の身分証だった。

「教会の人間か! ちょ、ちょっと待ってて下さい!」

ん~ しまった。

考えが足らなかったようだ……

他の門番も来て警戒する中、一人が町へ走って行く。

荷車を仕舞い、立って待たされる4人と1匹。


走って戻って来た門番が連れて来たのは、ギルマスのサーズリだった。

「惣一郎殿? 惣一郎殿がなぜここに!」

「やあ、お久しぶりですね…… あははは」

「おい、この方は大丈夫だ! ささ、中でお話しを」

そのままギルドへ直行する事になった。





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