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十三章

九話 【クルルーシェ】

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数人の騎士が、片足を引きずり剣を構える。

ザビーは、得体の知れない相手に汗を流し、喋るのをやめ、構えたまま距離を詰める。

杖を構える騎士が、氷の槍を浮かせると鉄球が降り、槍も杖も騎士の腕も砕き、また空へ登っていく。

後方の悲鳴に、ザビーも動けなくなる。

「なぁ、教皇はもういないんだって! まだ続ける意味あるのか?」

惣一郎にはある。

スワロを殺した教会の人間、全てを本当は殺したかった。

だが、コイツらがこれ以上、続ける理由はないはずだ。

ロウガが、焚き火を見つめながら、

「まぁ、確認が取れない以上、任務は続行だろうな……」

っと、また呟く。

惣一郎が「そっか~」っと言うと、ザビーの両膝にも穴が開く。

悲鳴を上げ、倒れるザビーに惣一郎はさらに、

「もういいだろ」

っと、鉄球で全ての武器を叩き折る。

馬がその音に驚き逃げ出すと、草原に横たわる騎士達が、負けを理解し顔を伏せる。

ロウガは新たにお茶を惣一郎に淹れなおす。


騎士達を拘束し、ガイロンが追いかけて来る事を伝えると、その場をロウガに任せて、惣一郎はマイズへ向け飛び立つ。





陽が落ち、星が落ちそうな夜空を飛ぶ惣一郎。

一時間ほどの飛行でマイズに着くと、真っ直ぐテントへ向かう。

「ただいま」

ベンゾウが飛びつき、そのふたりを抱える様に持ち上げる弁慶。

「「 おかえり 」」

まるで何年も会ってない様な出迎えに、

「半日しか経ってないじゃん、大袈裟だな」

そう言う惣一郎の目には、涙が溢れていた。

「疲れたよ」

惣一郎はそれだけ言うとベッドで横になる。

何も言わず、何も聞かない。

心地よい沈黙の中、3人は身を寄せ合って、眠りについた。





翌朝、スワロの墓に持ち帰った頭部を納め、手を合わせる惣一郎に、イルマが、

「族長は惣一郎様に、凄く感謝してましたよ。故郷を取り返してくれた事だけじゃ無く、一緒に旅が出来た事も! いつも左腕のレーテウルを見つめておられ、色んな話をしてくれました。きっと今回の事も感謝してますよ」

「きっとそうだよ、ご主人様!」

「ああ……」

その後イルマに案内され、村の奥の畑にいく。

「これは……」

「族長が育てた、惣一郎様から貰った野菜です。族長は[クルルーシェ]と呼んでました。」

「クルルーシェ…… 意味は?」

「別所からの恵みって意味です」

ただのジャガイモに、スワロらしい大層なネーミング。

笑みが溢れる。

「もうすぐ収穫出来そうなんで、みんな初めて食べる食べ物に、期待しているんです。この村の財産になると、族長は嬉しそうに語ってましたから」

「そっか…… 食ってみるか?」

「もう採れるのですか?」

「いや、俺が持ってる!」

惣一郎は広場にテーブルを出し、コンロを並べる。

ジャガイモを蒸しバターを乗せたり、細切りにして油で揚げ塩を振ったりと、ベンゾウも弁慶も手伝い、村人が集まり出す。

「これは…… 美味い!」

悲しみ暗くなっていた村人に、笑顔が広がっていく。





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