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十三章

八話 【自業自得】

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草原を凄い速さで飛ぶ惣一郎は、怒りと悦びが混ざり合う、奇妙な感覚を覚えていた。

明確な殺していい相手を得た事に、ゲームに似た感覚だった。

怒りをぶつける先を見つけた悦びは、餌を追いかける猫の様に、興奮しながらも冷静であった。

しばらく飛ぶと、もうロウガの馬車に追いつく。

行きに会ってから王都で暴れ、戻ると言う時間を、ロウガは馬車で、ただマイズを目指すだけに使っていたのだ。

馬車の前に降りる惣一郎。

それに気付き馬車を止め、声をかけるロウガ。

「惣一郎殿!」

王都へ向かった惣一郎が、また現れた事に理解できず、続く言葉をなくすロウガ。

「ロウガ、教皇の手の者が、お前も狙っているそうだ」

「その情報は何処から?」

すでに王都へ行き、教皇を倒したと言ってロウガは信じるだろうか?

「あの後すぐ、襲われたクロイツにあったんだ」

「領主が? 襲われた?」

「ああ、倒した教会の騎士の話では、ザビーって奴がロウガを狙っていると」

「なっ、ザビーだって! ゲリオゾン団のザビーか!」

この反応、手応えあるといいが……

惣一郎らしからぬ期待に、本人は気付いていない。

惣一郎は戦闘を望んでいた。

「多分追いかけて来るから、ここで待とう!」

「な、何を! 惣一郎殿、ザビーは教会の中でも武闘派だ! いくらなんで……も… いや、惣一郎殿なら問題ないのか……」

ロウガは、厄災を倒す惣一郎を思い出し、惣一郎の提案を素直に受ける。

このままマイズへ行き、関係ない者も巻き込むよりは、ここで迎え撃つ方がいい事に気づく。

馬車から荷物を下ろして、野営するふりをする。

どの道馬車でマイズへ着くまでに、野営は必要になる。

馬を休ませ、火をおこすロウガに惣一郎は、王都であった事を話す。

信じられ無い話だったが、ロウガは『この男なら』っと、素直に信じる。

「そうか…… スワロ殿の国葬をか……」

「ああ、教皇はもういない、残る教皇派もそのザビーって奴で終わりだ」

「教会も終わりだな……」

焚き火を囲み、お茶を啜る惣一郎達は、赤い空の下遠くの土煙に気付く。

「おっ、やっと来たかな?」

「嬉しそうだな惣一郎殿は」

まさか、何を言ってるんだ?っと、ニヤけていた自分にここで初めて気付く惣一郎だった。

嬉しい? まさかそんなはずは無い!

これはスワロの……

惣一郎は、ただ自分の感情に忠実だったのだ。

悲しみ、怒り、その矛先をぶつける相手を見つけ、悦ぶ。

「黒い感情のまま我儘に暴れる魔王か……」

土煙がどんどん近づいて来る。

惣一郎は残りのお茶を飲み干す。



ようやく到着した騎馬隊は、馬から降りてロウガに剣を向ける。

「カーマのギルドマスター、ロウガだな! 教皇様の命により、ご同行願おうか! 抵抗するなら容赦はしない」

鎧に身を包む騎士達の中、体格の良い男が前に出る。

「ロウガか、冒険者時代は良く聞いた名だったな! どうだ、自分の運命を自分で切り開く気は無いかね?」

ロウガはため息を吐き、見向きもしなかった。

「教皇なら死んだが、まだ聞いて無いのか?」

惣一郎が座ったまま話しかける。

「貴様は? 何処の馬の骨だか知らんが、教皇様の名を出すとは、それも死んだだと? 命がいらんのか?」

周りの騎士達もクスクス笑い出す。

「お前、ザビーって奴だろ? クロイツを狙ったトルなんとかってバカが死ぬと、仲間の騎士がペラペラ喋って教えてくれたぞ! ギルマスを狙ってるアホもいますって」

「トルソルイか? 貴様がなぜそれを!」

「オルソンってクソを殺したら、教皇の居場所を教えてくれて、教皇のボケを殺したら、聖女って言うセシルって女が教えてくれたんだ! ガイロンって大男だったかな?」

座ったまま惣一郎は、騎士を煽る様に話す。

ここまで話すと、笑う者はいなかった。

「貴様は……何者だ?」

「何者って、お前らが踏んだ尻尾の本体だから、トラ?」

そう言うと、その場にいたザビー以外の騎士、十数人の膝に穴が開く。

声を上げ倒れ込む騎士達に、驚くザビー。

「なっ、何をした!」

相変わらず座ったままの惣一郎は、

「何って、お前らが俺らにしようとした事?」

盾を構え、剣を抜くザビー。

ロウガも座ったまま「自業自得だな」っと呟く。





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